古い道路を中心に、路面に「40高中」などと、数字と漢字が書かれている場合があります。この標示は何を意味しているのでしょうか。

実は意味ナシ? 25年以上生き残ったレアモノ

 一部の道路に、「40高中」などと路面に標示されていることがあります。色はオレンジで、その地点における最高速度と思しき数字に「高中」と続くものです。


茨城県東部のとある道路で見られる「40高中」の標示(のがなあつし撮影)。

 どのような意味があるのでしょうか。警察庁に話を聞きました。

――「40高中」とは、どのような意味なのでしょうか?

「高速車および中速車は最高速度40km/h」という意味です。かつては車両の種類によって「高速車」「中速車」「低速車」の3区分が存在し、それぞれ法定速度が60km/h、50km/h、30km/hと異なっていました。「高速車」は大型乗用自動車、普通自動車、排気量250cc以上の自動二輪車など、「中速車」は大型貨物自動車、排気量250cc以下の自動二輪車など、そして「低速車」は原動機付自転車を指します。

――現在、一般道の法定速度は原付が30km/hで、それ以外は車両の種類にかかわらず一律60km/hですが、3つの速度区分はいつ変わったのでしょうか?

 1992(平成4)年11月、法定速度の改正により、現在のようになりました。これに伴い、「40高中」などの標示も廃止されています。

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 警察庁によると、現在、この標示に効力はないといいます。廃止から25年を経たいまも目にすることができるのは、たまたま残されていただけ、ということのようです。

各地に残る「40高中」は「道路標示のなかで最も美しい」?

 インターネット上では、各地に残る「40高中」などの標示や、それが削り取られた跡を紹介する人も見受けられます。これらの標示を各地で撮影している、カメラマンののがなあつしさんに話を聞きました。

――「40高中」などの標示はどのようなところに、どれほどあるのでしょうか。

 数としては、2017年8月までに全国でおよそ100前後確認しましたが、その状況は都道府県ごとに異なります。というのは、廃止された標示をどうするかは都道府県で方針が異なるからです。全都道府県を確認しているわけではありませんが、たとえば東京都や神奈川県では、廃止後に速度の数字を残して「高中」などの文字が削り取られた一方、埼玉県や茨城県などでは、道路を再舗装するまでは存置するという方針が採られ、そのような県に多く残存しているようです。

「高中」などの文字が削り取られた跡を含めれば、倍近い数が確認されています。一方、富山や秋田など、雪が多い地域では道路標示そのものが少ないという事情もあり、ほとんど残っていません。いずれにしても、いまある「40高中」などの標示も、やがて消えていく運命にあります。

――「40高中」以外で車両の制限速度区分に基づく標示は、どのようなものがありますか?

「50高」「30高中」「50高中」「60高中」「30高中低」があります。残存数は「40高中」が圧倒的、次に「50高」だと把握しています。

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 のがなさんは、「40高中」が「数ある道路標示のなかで最も美しいものだと思っています」といいます。

「『高中』という文字が左右対称であり、画数が多い『高』が真ん中にあるのでバランスが良いのです。背景とも調和し、とても写真映えする標示だと思います。また、パッと見たときの意味のわからなさがどこか印象に残り、そこに奥ゆかしさを感じます」(のがなさん)

 ちなみに、「40」などの最高速度を示す標識に、「高・中速車」などの補助標識がついたものも残存しているところがあるそうです。

【写真】もっとレア? 「50高」


大分県に残る「50高」の標示。多くの場合、塗装が劣化し見えづらくなっている(のがなあつし撮影)。