東出昌大:本作にでている俳優さんが皆さん真に迫った演技をしていて、韓国の映画業界では、俳優さんは何か共通のメソッドをどこかで訓練されて現場に臨んだりしているのですか? キム・コッピさんもお若いのにすばらしくて、どのようにキャスティングされたのですか?

ヤン監督:キム・コッピさんのことで思い出したのですが、当時本当にお金がなくて。シナリオを書いている時は実は別の女優さんを当て書きしていて、撮影に入る段階でその女優さんの事務所に依頼しギャラ交渉したら、向こうは「500万ウォン(約50万円)」と。でもこちらは用意できたのが300万ウォンで、予算オーバー。つまり200万ウォン(約20万円) の差のためにキム・コッピさんがキャスティングされました!(会場大爆笑) 実は私はこの映画を撮影する2年前にコッピさん出演の短編を見ていて、その映画でコッピさんには全くセリフがなかったのですが、強い印象を受けたんですね。そんなことを思い出してお願いすることにしました。私がキャスティングする時には、遠くにいる俳優さんではなく身近にいる俳優さんから探すことが多いんです。これまで無名時代を含め、仕事をする中で出会った人や一緒に作品をやった人の中からキャスティングをしました。私は演技をする時や演出をする時、現場でのリハーサルや台本の読み合わせをして練習をするのが好きではないんです。一番最初のテイクが好きで、初めて経験するという意味があると思って。自分自身演技をする時もリハーサルなしですぐに本番に入るタイプです。だから「息もできない」の撮影序盤数日は、俳優から「どういう風に撮影するのか説明してくれ! 話してくれないと困ります」と抗議がきました(笑)。映画の中でファンギュという役を演じていた俳優さんが、3回目くらいの撮影の時に(劇中にも出てくる韓国語で) チクショーと言う感じの悪い言葉なんですが、それを言いながら「どういう風に撮るかいってくれないとわからないじゃないか!」と声を荒げていました(笑)。

MC:東出さん、今のお話を聞いて、もしヤン監督のもとでお芝居をすることになったらどうですか?

東出昌大:そんな機会が与えられるなら、すごく嬉しいですし楽しみです! 日本にも(ヤン監督のようなスタイルの) 監督さんもいらっしゃいますし、役者としてはそういうスタイルも嬉しいっていう方も多いのでは。

MC:そして観客の皆さん、この二人が共演したら最高だと思いませんか?

東出昌大:(観客からの大きな拍手を受け) もしそんなお話があるのならばありがたいです。どんな役でもがんばります。

ヤン監督:もし共演が実現するのであれば、私が「ロード・オブ・ザ・リング」のようにCGで東出さんをホビットに、私をガンダルフにして、一緒に出演できたらうれしいです。(との話には東出さんも会場も大爆笑)

東出昌大:ヤン・イクチュン監督は、日本でもこれまで「かぞくのくに」やこれから公開の「あゝ、荒野」に出演されたり、韓国でのご活躍もさることながら日本と韓国の橋渡しをしてくださる方だと思います。韓国映画や台湾映画にはとても素晴らしいものが多くて、合作をすることに意義があるのではなくて、国境をまたいで、色々な(政治的な) 境界をまたいでお互い手をとりあい、芸術分野で互いに頑張れるというのは素晴らしいことだと思うし、僕らも映画やドラマを作る側の人間なので、尊敬しつつ、こちらもがんばって尊敬される役者、クリエーターになれればと思います。

最後に、ヤン監督が俳優として出演する最新作「あゝ、荒野」(前篇10/7、後篇10/21公開) について「昨年撮影しましたが、当時は今より10kg痩せていました(笑)。その際はボクシングも運動もがんばって、菅田(将暉) さんと熾烈な戦いを演じました。この作品が観客の皆さんにどう伝わるのか気になっています」と話すと、東出昌大も「絶対観ます、皆さんも観ましょう!」と即答するなど、東出昌大はヤン監督との初対面の機会を終始楽しんでいる様子が印象的だった。本作のファンを代表するかのように色々な質問を投げかけ、ヤン・イクチュン監督も当時を振り返りながらの興味深い話が続き、MCからトークの終わり時間が近づいていることが告げられると、「ウソだー。まだまだ聞きたい!」と東出昌大が思わず言ってしまう一幕も。