韓国大統領府で行われた、文在寅氏と二階俊博自民党幹事長との会談。その席上、文大統領は2015年に「最終かつ不可逆的に解決」されたはずの慰安婦問題について「解決には時間が必要」と述べるなど、国際的合意を反故にする姿勢を見せています。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家・黄さんはこの事態を「予想の範囲内」としながらも、国際秩序の維持という観点からも日本は韓国側の理不尽な要求を一蹴すべきと記しています。

韓国】慰安婦合意を完全に反故にした文在寅政権は自滅する

● 文在寅大統領、日韓合意に「時間が必要」…友好ムード演出も道険し 韓国与党代表、二階俊博氏に慰安婦問題で謝罪要求も

安倍晋三首相の特使として自民党の二階俊博幹事長が訪韓していますが二階氏と会談した文在寅大統領は、日韓合意については「解決に時間が必要だ」と語り、歴史問題の解決には「日本が韓国国民の心情をくみ取ろうとする努力が重要だ」などと述べました。

大統領選挙で日韓慰安婦合意の見直しを公言していた文在寅氏ですから、この発言は予想の範囲内でしょう。しかし、日韓慰安婦合意はアメリカをオブザーバーとして、国際的に成立し、内外に発表した合意です。いったい文在寅政権は、どのような理屈で日本に対して「見直し」を要求してくるつもりなのでしょうか。

記事によれば、文氏に先立ち二階氏と会談した韓国与党「共に民主党」の秋美愛(チュ・ミエ)代表は、自身のフェイスブックで慰安婦を「性奴隷」と表現し、日本の謝罪と日韓合意の再交渉を求めたと暴露したそうです。また「合意は守らなければならない」との二階氏の反論も紹介し、これに反論し返したとも記しているそうです。

どのような反論返しをしたかという内容については、朝鮮日報に記事がありました。

まず秋氏は二階氏に対して、「慰安婦(被害者)に対する日本の明白な謝罪と韓日の慰安婦(合意の)再交渉を求めた」うえで、元判事の秋氏は「判決が確定した後も重要な証拠が見つかった場合は再審できる」として、「真実追求に向けて努力と協力をしなかった日本がわずかな金を渡し、最終的かつ不可逆的(に解決した)とした合意に韓国の国民は同意できないとはっきり話した」と強調し、「二階幹事長は両国の約束であるだけに合意を守るべきだと主張したが、約束だから守らなければならないというのは契約法上の論理にすぎないと反論した」そうです。

つまり、韓国側は完全なちゃぶ台返しをしてきたということです。しかし、日韓合意後にどのような「重要な証拠」が見つかったというのでしょうか。反対派が韓国国民を煽り、「国民が気に入らないと言っている」と主張しているだけです。

いわゆる「韓国の国民感情」が最優先ということです。国民感情のような移ろいやすいものを理由にするならば、永遠に約束などできません。現在の国民が納得しても、将来の国民が納得しない可能性があるからです。

しかも、秋氏によれば、日韓合意は日本が完全に悪いかのような言い回しです。日韓合意は両国政府の責任者が、国内でのリスクを承知の上で交わした合意であるはずです。日本でも日韓合意への反対の声は少なくありませんでした。「どうせ韓国はまたゴールポストを動かすはずだ」という懸念が拭えなかったからです。

そして韓国はやはりゴールポストを動かしました。そして今度は「謝罪と日韓慰安婦合意の再交渉」が日韓関係に不可欠だと言い出したわけです。いくら「最終的かつ不可逆的に解決した」という文言を入れても、韓国は絶対に解決する気はありません。

秋氏は「両国は正すべきことは正した上で信頼に基づいた未来志向の関係に改善していかなければならない時期だと思う」などと述べていますが、正すべきは韓国側だけです。両国が取り決めたことを誠実に履行している日本が、何を正さなくてはならないのか、意味不明です。

そもそも1965年の日韓基本条約および請求権協定において、すべて解決済みであったはずでしたが、条約や協定の解釈や実施をめぐる「紛争」は外交的に解決するよう定められていたため、日本としても、慰安婦問題に対処せざるを得なかったわけです。だから日韓慰安婦合意に「永遠かつ不可逆的に解決」という文言を入れたのです。またいつ韓国が事実をでっち上げて、新たな謝罪と賠償を求めてくるかわからないからです。

ところが文在寅政権はさらに、日韓慰安婦合意では「被害者個人の請求権に影響を与えない」という立場を裁判所に伝えていたといいます。要するに韓国政府は日韓合意後も慰安婦の個人請求権があると主張しているのです。

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つまり文在寅政権は「最終的かつ不可逆の解決」を完全否定しようと躍起になっているわけですが、どのような屁理屈をつけても、すでに両国が合意している以上、小細工をしても無理です。これ以上の屁理屈は、いくらお人好しの日本であっても、嫌韓感情をさらに悪化させるだけの効果しかなく、また、日本のみならず、アメリカも絶対に飲めない話でしょう。

しかし、文在寅政権がこのような主張を改めて行ったということは、慰安婦問題のみならず、これから韓国はさまざまな歴史問題を新たにふっかけてくる可能性があります。「日帝36年の七奪」から「強制労働」など、次から次へと反日のお題目を持ち出してくることは、まず間違いないと思います。

文在寅大統領の誕生時、選挙期間中に主張していた日韓合意やTHAAD配備の見直しについて、「大統領選挙でそうは言っていても、大統領になれば現実路線に進む」といった希望的観測もありましたが、やはりそれは間違っていたようです。

THAADについては、「発射台6基のうち2基の搬入が公表されただけで、残りの4基が搬入されたことを国防部が大統領府に報告していなかった」などという理由で、文在寅政権は追加の4基の配備を一時停止し、環境への影響評価を実施すると発表しています。そしてこの環境影響評価が出るには1年程度かかるといわれています。

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しかし6基からなるTHAAD1砲台が搬入されていることは韓国メディア報道でも知られており、「未報告」というのはほとんどイチャモンに近いものがあります。結局、アメリカと中国の顔色を伺いながら、最初の2基だけ配備したという実績を作りつつ、残りは一時停止するという、中途半端な決定をしたということなのでしょう。

しかしアメリカ側はそんなに甘くはありません。大統領府で文大統領と先日会談した米民主党のディック・ダービン上院議員は、「『韓国がTHAADを望まないなら、予算9億2,300万ドル(約1,010億円)を別の所に使うことができる』と文大統領に言った」と暴露したそうです。つまり、「韓国がありがたいと思ってもいないのに、なぜ9億2,300万ドルにも達する米国人の税金を使わなければならないのか」という強い疑念と不満の表明が、アメリカの野党議員からも出ているわけです。

 

約束を履行している側がバカを見るようなことは、国際秩序の維持という観点からしても、あってはなりません。韓国側の要求など日本は一蹴すればいいのです。そのうえで、厳しく履行を迫っていく。履行に反した行為を続ければ、韓国の国際的信用力が毀損されていくだけです。

韓国は大統領が代わるたびに従来の合意や条約、協定などが否定されて再スタートを要求するため、大統領選挙は5年に1度の「易姓革命」とも言われます。外交や歴史の継続性などまったく無視です。何度も騙されてきた日本人も、今回のことではっきりとわかったはずです。

福沢諭吉は『脱亜論』にて、「隣国だからというだけで特別な感情を抱いてはいけない、西洋と同様に処分すべきだ」と説いています。「隣国だから」という考え自体が相手を甘やかせ、世界にとっても百害あって一利もない行為だということを日本人は銘じるべきです。

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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』

著者/黄文雄(記事一覧/メルマガ)

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

出典元:まぐまぐニュース!