「痴漢はご乗車できません。作動中のカメラと係員をすべての路線に広げており、呼び出し装置は駅と地下鉄、トラムの各車両にございます」

フランス南西部にあるトゥールーズ市。同市の公共交通機関を運営するTisseo(「e」の文字は上にアクサン・テギュ)は、今年4月からセクハラおよび性的暴行に対するキャンペーンを始めた。注意喚起のアナウンスを流し、駅など各所に貼られたポスターには「痴漢は乗車するな」という文字とともに、迷惑行為をキャラクター化した醜いモンスターが描かれている。

日本と同様に、フランスでも痴漢などの迷惑行為は深刻な問題だ。トゥールーズ市のような地方都市に加え、首都パリ市でも、しばしば対策が行われている。

迷惑行為の発生を報告するアプリ


昨年末からパリ市は「ハラスメント、ストップ!」というキャンペーンを張り、「スカートはお誘いじゃない」というポスターで迷惑行為防止を訴える。


同キャンペーンでは迷惑行為防止の啓蒙だけでなく、被害が起きた場所や状況を共有できるスマホアプリ「HandsAway」などとも提携する。

同アプリは、迷惑行為が生じた場合に、現場の位置をアプリの地図上でピン留めし「被害を受けたのか目撃したのか」「身体的な被害か言葉によるものか」「路上か公共交通機関か」を順に選び、登録できる。そして、どのようなことが起きたのか文章または直接録音して状況を記す。するとその情報がユーザーに共有され、危険な場所であるという注意喚起や、ユーザーから助けのメッセージが来る仕組みだ。



パリの通勤ラッシュと迷惑行為


パリの通勤ラッシュは東京とは状況が少し異なる。朝でも車内が東京ほどの混雑になることはなく、安全対策のため混んでいるときは日本のように無理やり人を詰め込むことはしない。主要駅では、ラッシュ時には安全のため係員をプラットホームに配置し、駆け込み乗車や必要以上に人が電車に乗り込まないよう、監視している。

東京とは混み具合が異なるため、公共交通機関での迷惑行為がそれほど存在しないかのように思えるが、そうとは限らない。


フランス女男平等高等評議会が2015年に出した答申によれば、交通機関において今まで1度でもセクハラもしくは性的暴行を受けたことがある女性の割合は100%だった。そして、これらセクハラもしくは性的暴行の被害者の半数以上が未成年。女性の場合、被害は8時から20時という公共交通機関の利用頻度が高い時間帯に多い(男性の場合は21時以降)。

また仏研究所IAUが15歳以上を対象に、2015年にまとめたパリを中心としたイル・ド・フランス地域圏における被害と感情についての調査結果では、56.3%の女性が公共交通機関に不安を抱いていると回答した(男性は26.7%)。その中で女性がもっとも不安を抱く交通手段は、郊外とパリ中心部をつなぐ鉄道路線RERで48.2%。次いで地下鉄42.2%、バス25.1%、トラム18.8%という順だった。


フランスで迷惑行為を働いたらどうなるのか。侮辱または脅しの場合は6カ月未満の懲役と2万2500ユーロ(約280万円)の罰金、強制的に体を触るなどすると最低5年の懲役と7万5000ユーロ(約900万円)の罰金が科される。

自治体や鉄道会社は具体的な刑罰の数字を出しつつ、「迷惑行為は法により罰せられる」と訴える。しかし卑劣な行動はなかなか減らないのが現状だ。
(加藤亨延)