シャープが「AQUOS R」で変えようとしているのは何か?生まれ変わりを目指す覚悟とは【Turning Point】

写真拡大 (全4枚)

シャープは4月18日、フラグシップスマートフォン「AQUOS R」を発表した。
今回のAQUOS Rは、キャリアの発表前に製品発表を行うというこれまでにない形での発表となる。

そこにはどんな意味が込められているのだろうか。

シャープは現在、
NTTドコモ(以下、ドコモ)向けには「AQUOS ZETA」、「AQUOS EVER」、
ソフトバンク向けには「AQUOS Xx」、「AQUOS Xx mini」、
au向けには「AQUOS Serie」、「AQUOS U」
と、それぞれキャリア別モデルをラインナップしている。
そのほかにも、ワイモバイルやUQモバイル向け、MVNO事業者が取り扱うSIMフリーモデルなど、数多くのAQUOSブランドのスマートフォンを提供している。

これらは、名前が異なるものの、世代ごとにベースモデルに共通性をもつ兄弟機だ。
例えば、ドコモのAQUOS ZETAとソフトバンクのAQUOS Xx3は共通点が多いモデルである一方で、auのAQUOS Serieは指紋センサーをなくしたカスタマイズモデルとなっている。

このようなメーカーの対応、戦略は、シャープだけではなく、国内・海外メーカーでもキャリアの要望に応えるモデル開発や、提供をすることはなかば慣例となっている。

これまでは、こうした施策により、キャリア間や同一キャリア内でのモデルが、機能や特徴の重複など回避し、各キャリアモデルの魅力となる部分のバランスを取ってきたという側面もある。

しかしながら、ユーザー視点で見れば、キャリアごとの商品名こそ違うものの、性能や特徴の似通ったモデルは、ほかのキャリアと比較してしまう。
結果として、時として比べたキャリアモデルの方が高性能に見えてしまうこともある。

これはシャープのスマートフォンが”AQUOS”を名乗っている以上、キャリア間の別モデルと比較されることは避けようがない。

これに対して、世界市場では、こうしたキャリア主導によるスマートフォンとは異なるラインナップ展開がされており、日本でも始まっている。

こうした流れは、3キャリアが取り扱うこととなったアップルの「iPhone」に始まり、ソニーの「Xperia Z3」、そしてサムスン電子の「Galaxy S6 edge」といったフラグシップモデルを中心に広がっており、キャリアのカラーに染めすに、モデルの性能や特徴をメーカーブランドで統一したモデルとして発売されている。

これらのスマートフォンは、キャリア向けのサービスや機能追加により、SIMロックがかかったモデルとなっているため、端末購入はキャリアとの契約が必須となるが、どのキャリアで購入しても同じ性能・特徴を持つモデルが購入できる。

つまり、キャリアの人気や好みとは別に、人気のあるスマートフォンの商機を逃さない商戦を競う格好となっているわけだ。

もちろん、このようなラインナップ展開や商戦は、それぞれのスマートフォンに、国内だけでなくグローバルモデルとして海外展開しているブランド力があってのことだ。




さて、シャープが今回発表した「AQUOS R」にいついて話しを戻そう。
シャープは、これまでキャリアごとにバラバラだったフラグシップモデルの名称を今夏から「AQUOS R」に統一する。

シャープが行った新製品発表会では、成熟したスマートフォン市場においてブランドで選ぶ客層が増えていることに触れ、AQUOS Rで世界感をわかりやすく伝えていく構えなのだ。

これまでは、名称だけではなく、製品の形状もキャリアごとにバラバラで異なっていたが、AQUOS Rの名称の元で、形状も統一する。このことでアクセサリーも適合するモデルを探すことなく、共通のAQUOS R用を買い求めれば良いことになる。
これは、ユーザーにとっても、周辺機器メーカーにとってもメリットは大きい。

フラグシップモデルということで、プロセッサにはQualcomm「Snapdragon 835」、リアカメラには2260万画素、フロントカメラには1630万画素、そして液晶はHDR(High Dynamic Range)規格HDR10に対応し、動画配信サービスが提供するHDR対応コンテンツを美しく再現する。




ただし、こうした最新技術を惜しみなく投入するのはフラグシップモデルではもはや当たり前だ。

そこでシャープは、AQUOS Rの「R」に3つの思いを込めた。

・新開発のIGZO液晶による「Reality」、
・120Hzの滑らかな表示とそれを支えるハイスペックなハードウェアによる「Response」、
・そして2年間のOSアップデート保証を公言する「Reliability」
の3つだ。

さらに、「Robotics」のRの文字も含まれる。
これは、内蔵する人工知能アシスタント「エモパー」が、自ら回転し人を見つけて話し掛けてくるアクセサリー「ROBOQUL(ロボクル)」を提供することで未来を創り出すという。

つまり、成熟したスマートフォン市場において、競争力となるのは最新技術ではない。
そこで、Reality・Response・Reliabilityによる満足度の高いユーザー体験の提供にシフトする。

この意味は、XperiaやGalaxyのような尖った性能でアピールする戦略ではない。
どちらかと言えば、iPhoneのような使い勝手をハイスペックなモデルで実現する戦略に近い。
ユーザーに、こうした実際に使って満足した体験から得た価値によって、AQUOS Rの世界感を認識して貰おうということなのだ。




スマートフォン市場において、AQUOS RがiPhoneやXperia、Galaxyと並ぶブランド力を付けるのは、一朝一夕では難しい。
・Rにこめた思いを変えずに続けていくこと、
・進化し続けること、
・ユーザーに愛され育てられること、

シャープのAQUOSブランドには、こうした目先に状況に左右されない強いアプローチが一番欠けていたとも言える。

それが、今まさに始められようとしていると言ってよいだろう。

AQUOS Rのこれからに期待したい。


執筆 mi2_303