前線の動き出しを見逃さずにパスを出せる選手がいれば違ったのかもしれないが、前述したように中盤にパサーは不在。ゴールに背を向けてボールを収めるのは彼の得意とする仕事ではない。
 
 むしろインパクトを残したのは、交代で入ったケヴィン・オリスだ。Kリーグでの実績を持つベルギー人FWは192センチの長身を生かして相手に競り勝ち、後方からのロングボールを味方につなげるなど前線の起点となっていた。岩崎のクロスを合わせた頭によるゴールも含めて、短時間ながらしっかりと仕事をこなしてみせた。
 
 この日のパフォーマンスから、単純に『大黒よりオリスがいい』というわけではない。サッカーはチームスポーツだ。大黒を起用するなら、最前線での動き出しを生かせるパスの供給役が必要となる。そのタイプが不在ならば、オリスのように前線で起点を作れるタイプを置くほうがチームとして機能しやすいのではないか。
 
 選手の組み合わせだけを語るのは机上の空論だし、開幕スタメンの11人でも攻撃で主導権を握ることを突き詰めて実行できればチャンスは作り出せるだろう。ただ、それが発展途上な現状では、選手起用がより重要となってくるのも確かだ。課題の出た最終ラインも含めて指揮官がどういった対応を見せるのか、次節以降に注目が集まる。
 
 闘莉王は試合後、「J2は作っていくよりも、潰していくことがメインになることを改めて感じた」と話した。相手の特長を消しにくるチームがしのぎを削るJ2で、パスをつなぎながら相手を崩すスタイルで勝ち抜いていくのは簡単ではないが、たった1試合でそれを捨てる必要もない。J1でも通用するチームを作り上げるという船旅は始まったばかりだ。

取材・文:雨堤俊祐(サッカーライター)