■「無理だろうけど、元の状態に戻してほしい。」

 「不正は全くやっていないから、その点は自信があった。勉強して結果が残せるように頑張りたい」


 27日に都内で開かれた会見で、三浦弘行九段はそう語った。


 事の発端は、7月に浮上した三浦九段への”不正疑惑”にさかのぼる。「対局中に離席が多く、将棋ソフトを使用しているのではないか」と他の棋士から指摘され、日本将棋連盟も調査を開始。三浦九段への聞き取りを行った上で、10月に年内の出場停止処分を下す。「疑念を持たれたままでは対局できない」と語っていた三浦九段だったが、結果として7大タイトルの一つ「竜王戦」を欠場せざるを得ない事態に追い込まれた。


 将棋連盟はさらに第三者による調査委員会を設置、将棋ソフト使用疑惑の再調査を行った。しかし、26日の会見で明かされた調査結果は”シロ”。 会見で委員会は「過去に何か不正なことがあったと指摘されている事項を一つ一つ検討していって、結局疑わせるような証拠・物証はない」とした。さらに、7月の三浦九段の対局を連盟側が監視したが、不審な点がなかったことも報告した。


 三浦九段の疑惑は晴れたものの、昨日の会見で「監視していたにも関わらず、不審な点はなかったと。それならそのまま私を竜王戦に出場させればいいのではないか。何の心配もないと思う。それなのに竜王戦に出場できなかったことは本当に残念だ」と、欠場の悔しさを強く滲ませた。


 将棋連盟に言いたいこと、求めたいことは何か問われた三浦九段。「無理だろうけど、元の状態に戻してほしい。叶わないだろうけど。竜王戦を…難しいんだろうけど」と訴えた。


 一方、将棋連盟の調査委員会は調査結果とともに将棋ソフトの影響を次のように報告した。


 「将棋ソフトの棋力の向上により、今や将棋連盟は未曾有の危機に直面している。対局者が将棋ソフトを使うのではないかという疑心暗鬼がプロ棋士の心の中に生じてきたことを見逃すことは出来ない。将棋という我が国の精神文化を内部から腐食させてしまう危険を感じざるを得ない」


■ 現状に戻すのも将棋連盟の仕事

 将棋をテーマに執筆を続けているルポライターの松本博文氏も、疑惑が出た当初は「これだけ断定して将棋連盟側が言っているのだから、それは決定的な証拠があるだろう」と思っていたという。


 「三浦さんは今回の件に関しては被害者という立場であるが、将棋界というのは割と家族的な面がある。運営も棋士が自主的に行っており、批判するというのはなかなか難しい」と話す。また、「三浦九段は優しい方のため、この状況に及んでも色々将棋連盟側のことを気遣っているように見えた」と心境を推し量った。


 また、「竜王戦」に出られなかったことでの三浦九段へのダメージについて松本氏は「大損失」と断言する。


 三浦九段は優勝の可能性が十分にあり、その場合、優勝賞金4320万円という損失だけでなく、「何より三浦さんの名誉が傷つけられたということが大きい」と指摘。さらに「本来であれば三浦九段のようなスタープレイヤーを守るべき立場であるのに、逆に追い込んでしまったというのは不手際と言って間違い無い」将棋連盟の一連の対応を批判した。


 一方、すでに将棋ソフトは人間よりも強いレベルに達しており、参考にすれば良い手も見つかるという。松本氏も「不正をやろうと思えばできるという現実があるため、将棋連盟の対応が遅かった、不手際だがあったというのは間違いない」とした。


 三浦九段の今後について松本氏は「まず現状に戻してほしい。失った信頼というのはすごく大きいが、それを戻すのも将棋連盟の仕事」と語った。そして三浦九段に対しては「本当に気の毒だが、頑張ってまた表舞台に出てほしい」と声援を送った。

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