過激な企画が持ち味だった「電波少年」

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「SMAP香取 来年9月で引退」

去る11月6日。こんな見出しがネット上に踊りました。SMAP解散によって、香取慎吾が芸能界へのモチベーションを失っていることはほぼ確実。そんな矢先でのこの一報だったので、「とうとう、決断したか…」との思いで見出しをクリックした人は多かったはずです。
ところが、記事には「東スポWeb」の文字。なんだ、東スポかよ……。と思った方も多いはずです。

日付以外はすべて誤報!?


浅草キッドがかつて、「日付以外はすべて誤報」という名キャッチフレーズを残した東京スポーツこと東スポ。84年、ロス疑惑の三浦和義から名誉毀損で訴えられた際、「ウチの新聞の記事を信用する人間はいないから名誉毀損にはならない」と記者が証言したという伝説は、あまりにも有名です。
これまでも「人面魚重体脱す」「デーブスペクター埼玉生まれの日本人」「小倉キャスター生放送中カツラ落ちた」など、数々のトンデモな話題を世間に提供する同紙ですが、今から14年前の2002年10月23日にも、一つの“らしい”スクープがこの自称スポーツ新聞の一面を賑わせました。

スクープ記事によって蘇った、忘れかけられていた日本の伝説


「衝撃写真カッパ発見」

いかにも同紙らしい記事。なんでも、岩手県遠野市にある土淵小学校裏の川原で、同校の教員や生徒が河童を目撃したというのです。
遠野市は、明治時代の小説家・柳田國男が記し、日本民俗学の先駆的説話集となった『遠野物語』の舞台として知られ、古来より、天狗・座敷童子といった“人ならぬ物の怪”の民間伝承がさかんな地。JR遠野駅前には河童像まで立っています。

そんな河童の故郷とでもいうべき土地だからこそ、ソースが東スポとはいえ、妙な真実味があったのでしょう。報道直後からテレビ各社の取材陣がこの小さな街へ押し寄せ、ワイドショーで度々取り上げられたそうです。

『電波少年』が東スポに嘘写真を投稿。自作自演であることが発覚


しかしこの一連の騒動、当時日本テレビで放送されていた『電波少年』の後継番組『電波少年に毛が生えた 最後の聖戦』の仕業だったことが判明。
どういうことかというと、同番組では2002年8月より、モンモンという若手芸人に河童の変装をさせて山に潜伏させる企画をスタート。企画の意図としては「不幸な出来事が続く世の中にロマンを提供したい」というもの。つまり、河童伝説をでっち上げて、世間に話題を提供しようとした、というわけです。

河童に扮したモンモンは、子どもたちと先生に見つかりやすいような場所にわざと出現。その目撃情報は、早くから地元のケーブルテレビ局・遠野テレビでも紹介されたとのこと。これだけでもかなり悪質ないたずらなのですが、あろうことか電波少年のスタッフは目撃写真を東スポに投稿。この嘘情報に同新聞社がまんまと乗っかったおかげで、番組的には目的通りに「ロマンの提供」をできたかも知れません。
けれども、そのやり方・手法は明らかなモラル違反であり、当然、世間から激しいバッシングを受けることになります。

あわや訴訟問題に発展しかける


「実在しない生物なので、やらせの問題とは違う。ジョークとして理解してもらえたのでは」 と日本テレビの大泉克郎広報部長は、事実発覚後にコメントしたのですが、関係者の怒りは収まらず。あわや、訴訟問題にまで発展しかけ、妖怪小説で知られる小説家・京極夏彦も、自身のWEBサイトで日本テレビに対し抗議文とも取れる内容の文章を掲載するなど、大問題へと発展しました。

この一連の騒動が遠因の一つとなり、『電波少年に毛が生えた 最後の聖戦』は人気低下のため、放送開始から3ヶ月で終了。いくら誤報体質だからといって、自局の番組を盛り上げるPRの材料として利用されたとあっては、東スポ側としても腹立たしかったに違いありません。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより電波少年 BEST OF BEST 雷波もね! [レンタル落ち]