問題の乗車券(写真はYTNの電子版記事より)

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日本のバス会社の窓口係員が、韓国人男性に発券した乗車券に差別的表現を記載した――こんな訴えを韓国テレビ局が取り上げ、ネット版記事などで報じた。

J-CASTニュースがバス会社に確認したところ、発券の事実は認めたうえで、「従業員は差別をしたという認識はなかったようだ」と説明した。おりしも、大阪・難波の寿司店が外国人客へ出す握り寿司に大量のわさびを盛った問題が表面化したばかりで、今回の騒動も、外国人への差別ではないのか、とツイッターの国内ユーザーの関心を集めている。

韓国テレビ局も報道

韓国のテレビ局「YTN」の電子版は2016年10月5日、「大阪のバス会社が韓国人客を卑下する名前をバスチケットに表記して問題になっている」などと報道。購入者の兄を名乗る人物が、弟が乗車券を購入した時の状況について、同局に説明している。

弟がSNSにアップしたという、問題の阪急バス(大阪府豊中市)の乗車券写真も記事に載っており、氏名欄には「キム チョン」と書かれている。YTN記事によると、兄が、購入者本人である弟に、「チョンとは韓国人への蔑称表現である」と伝えると、弟はその事を知らなかったと話し、あらためて怒りをあらわにしていたそうだ。弟は、日本語は得意ではなく、窓口係員とは英語でやりとりした。

乗車券の購入は4月19日のことだが、兄は今回、大阪・難波の寿司店が大量のわさびを乗せた握り寿司を外国人客に提供していた騒動を知り怒りを覚え、同局に情報を提供したという。

YTNの報道があった10月5日には、日本国内のツイッターユーザーの間でも、この乗車券写真が広まり、

「日本人はいつの間にこんな礼儀知らずが増えたのだろう」
「公共交通を提供する会社にあるまじき行為」
「決して許容してはならない」

と批判の声が広がった。

「(窓口の従業員には)差別をしたという認識も、差別表現にあたるという知識もなかった」

こうした内容の発券は事実なのか。J-CASTニュースが10月6日、阪急バス経営企画室に話を聞くと、この乗車券は4月19日に梅田三番街の販売窓口で発券されたものと確認できたという。窓口の係員が、乗車区間とフルネームを購入者から口頭で聞いて入力した結果、氏名欄に、確かに「キム チョン」と印字していた。

しかし、

「(窓口の従業員には)差別をしたという認識も、『チョン』が韓国人への差別表現にあたるという知識もなく、当時の状況は記憶にないと話しています」

と説明する。

差別的対応では、という指摘は以前から出ており、5月にも国土交通省近畿運輸局から事実確認を求められたという。同社は、その際も同じ係員に聞き取り調査を行ったが、今回同様、「記憶にない」との答えだったという。

同室ではさらに、

「通常では考えられませんが、聞き間違いの可能性は否定できません。ただ、実名でもない限り、ご本人様がそうした言葉を係員に伝えるとは考えにくいですが...」

とも説明した。今後も調査を進めるという。