新たな夢に向かって再出発を誓う――町田慎吾インタビュー「舞台に立てるって、こんな幸せなことはない」
2015年、舞台『AZUMI 幕末編』の出演で、役者人生の再スタートを切った町田慎吾。以後、とどまることなく走り続けている――。11月公演の『戦国御伽絵巻「ソロリ」〜妖刀村正の巻〜』では、持ち前の頭のよさとホラで天下人を目指す豊臣秀吉を演じる。殺戮や暴力に頼るのではなく、知恵を使って闘い、仲間を信じて戦乱を生き抜いていく男たちの物語だ。本作に対する意気込みや、再び演じることができる喜びなど、誠心誠意、心を込めて話してくれた。

撮影/宮坂浩見 取材・文/花村扶美 ヘアメイク/大坪真人

舞台の仕事ができることに感謝する日々



――きょうは舞台の話はもちろん、町田さんのこれまでの話もうかがっていきたいと思っています。

よろしくお願いします。

――町田さんは2015年3月に、13歳から在籍していた芸能事務所を退所されて、半年経った9月に舞台『AZUMI 幕末編』で活動を再開され……

そこから…、話を進めていく感じですね?

――はい。でも、町田さんが話したくなかったら、そう言ってくださって構いませんので。

ありがとうございます。あの、僕……前の事務所については何も話さないって心に決めているんです。ただ、こうしてまたお仕事をさせていただいていることが、とてもありがたいことだと思っています。

――では、話せる範囲でお願いします。町田さんは2015年9月から、新たな環境でスタートを切りました。今、どんな気持ちで日々過ごされていますか?

感謝の気持ちを持ってお仕事をさせていただいています。まわりの方々のおかげで、また人前に立つことができたので。

――ひとりの力では、ここまで来ることができなかった?

そうですね。“また町田と仕事をしたい”と思っていただかなければ、この世界ではやっていけないと思っているので。……そういう方々を裏切れないし、頑張らなきゃいけないと思って、お仕事ひとつひとつに責任を持ってやっています。

――この1年で、そういう気持ちが強くなったんですか?

仕事に対する考え方や取り組み方は、基本的に、若い頃から変わってないです。



――町田さんはよく、「人に感謝する気持ちを忘れずにいたい」とおっしゃっていますよね。

そうですね。ここまで来ることができたのは自分ひとりの力じゃない、ということをたくさんの経験を通じて感じることができたのが大きいと思います。仕事が続けられるって、当たり前のことじゃないんだと。舞台に立てるって、こんな幸せなことはないんだと。どんな仕事もそうですけど、自分がひとつひとつしっかり仕事をして結果を残さなければ次の仕事はないわけで……。

――たしかに、そうですね。

特に僕たちのような仕事は、声をかけてくださるスタッフの方々、そして応援してくださる方々がいなければ何もできない。そういうことを、若い頃から仕事をさせてもらっているなかで痛感しました。応援してくださっている方にはちゃんとこたえなきゃいけない、期待以上のものをやらなければいけない、とも思っています。あ、でも感謝の気持ちだけで僕も生きているわけではないです(笑)。自分の目標や夢があるので、それに向かって今、突き進んでいるところです!

――活動をお休みしている間、「舞台をやりたい!」という気持ちになったことも?

うーん…。舞台の魅力を忘れることはなかったです。あの頃の僕は、新しい道として自分のアクセサリーブランドと、文章を書くお仕事をやろうと動き始めていました。…そんなときに背中を押してくださる方々がいて、「また一緒にお仕事がしたい」と声をかけてくださる方々がいて、また役者の道を歩き出すことができました。本当に、周りの方々に感謝しかありません。

――町田さんと言えば、「俳優、ダンサー、タレント、アクセサリーデザイナー、ライター」など数々の肩書きがありますが、ご自身のなかでいちばんしっくりくるのはどの肩書きなんでしょうか?

……中途半端になるくらいならやらないほうがいいと自分では思っているので、これがいちばんっていうのはないんです。どの仕事も僕にとっては大切で、どれも精一杯やっています。



素の自分になったら恥ずかしくて何もできない



――町田さんにとって、舞台の魅力はどんなところですか?

……普段の自分とは違う人生を生きられるということ。あとは、お客さんの反応がダイレクトに返ってくるところですかね。

――舞台上で注目される喜びのようなものはないですか?

……この世界に入ったのも、人前に立ちたいとか、目立ちたいという理由ではないんです。

――と言うと?

ダンスが好きだったというのがいちばん大きくて。ダンスさえできれば、それだけで幸せでした。人前で何かするとかしゃべるとかって、本当に苦手で…。

――こうして話していてもわかるんですけど……かなりシャイな性格ですよね(笑)。

…あ、はい(笑)。でも、ダンスのほかにお芝居のお仕事をさせていただくようになって、自分はダンスが好きというより、“ダンスに感情を乗せて表現することが好きだ”ということに気づいて。そうしたら、お芝居もダンスと同じだってわかって、それからお芝居が好きになっていきました。

――自分じゃない役を演じているときは、恥ずかしいという気持ちがなくなる?

そうですね。もし、「カッコつけて踊ってください」って言われたら踊れないと思います。役になりきっていたら何でも平気なのに、素の町田慎吾になったら、恥ずかしくって……(笑)。




――8月に『ハロー,イエスタデイ』を見させていただいたんですけど、劇中ではテンション高く生き生きとされているのに、舞台挨拶になったら声が小さくなっているのを見て、本当に恥ずかしがり屋なんだなと思いました。

すみません(笑)。“なんだこいつは、しっかりしろ”って思いましたよね…?(笑)

――いえ、そんなことは思いませんでしたけど(笑)。ご自身では、自分の性格をどう分析していますか? 

んー…。どうだろう……?

――演出家のほさかようさんは「真面目で努力家。演じることへの情熱が高い」と、俳優で演出家の小野寺丈さんは「ストイック。攻めの姿勢で人生を歩んでいる」とおっしゃっていました。

わー、ありがたいです。人見知りだったりするんですけど、……こう見えて僕、頑固だし曲がったことが嫌いで、筋の通らないことは許せない人間です。イエスマンにはなりたくないというか、違うと思ったら「それは違うと思います!」って言っちゃうようなタイプで。プライベートはふわふわしているのに(笑)、仕事となるとどうしても……。

――人見知りということは、共演者の方と仲良くなるのに時間がかかるほうですか?

壁を作るわけではないんですけど、適度な緊張感というのは仕事をするうえで大切なことだと思っていて…。共演者の方もそうだし、年下のスタッフさんにも敬意を払って接するようにしています。

――慣れ合いの関係を、仕事に持ち込まないようにされている、ということですよね。

そうですね。……一緒に舞台を作っていく仲間なので、信頼感も生まれるし、絆も深まっていくけれど、常にいい距離感を保っていたいなと思っています。