出光ブランドの威信は保てるか

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 石油元売り2位の出光興産で起きている激しい「お家騒動」は、収束に向かうどころか、ますますドロ沼にはまっている──。

 昨年7月、昭和シェル石油との経営統合を発表した出光の経営陣だったが、今年6月の株主総会で突如、創業家の代理人弁護士を務める浜田卓二郎氏が合併に反対の意を唱えたために、月岡隆社長をはじめとする現経営陣と創業者・出光佐三氏の長男である昭介名誉会長とのバトルが表面化。合併協議が暗礁に乗り上げているのは周知の通りだ。

 社風の違いなどを理由に、はじめから昭和シェル株の取得も合併にも反対だったと主張する創業家側と、昨年7月に昭介氏への事前説明を終え了解を得ていたとする経営側。両者の意見は真っ向から食い違い、平行線のまま。

〈創業家との信頼をベースに話し合いを進めたかったので、“言った言わない”という議論は避けたかった〉

 8月15日に開かれた記者会見でこう述べた関大輔副社長は、〈創業家の真意を測りかねている〉と困惑の表情を浮かべ、創業家との話し合いが7月11日以降ストップしていることを明かした。

 一体なぜ、ここまで話がこじれてしまったのか。経済ジャーナリストの松崎隆司氏はこう推測する。

「昨年7月の段階では、どういう形の経営統合になるか見えなかったので、出光家も口を出しにくかったのでしょう。昭和シェルを買収する策もあった中で、最終的に経営陣が出した結論が『対等合併』。

 昭介氏にとっては、対等合併になれば34%を握る出光株が希薄化して、影響力を維持できなくなってしまう。そうした危機感から、反旗を翻したと見るのが妥当でしょう」

 前述した8月15日の会見でも、昨年12月に昭介氏が月岡社長に手渡した手紙の内容が公表され、合併によって創業家の影響力が低下することへの懸念が示されていたという。

 雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏は、こうした創業家の意志や立場に疑問を投げかける。

「出光は少し前まで日本型経営の象徴で、社員は解雇しない、労働組合は作らせない、定年も設けないという“家族経営”を貫きながら会社を発展させてきました。それは紛れもなく出光家の大きな功績です。

 しかし、上場してパブリックカンパニーとなった今は、創業家以外の株主も圧倒的に多いわけですし、石油市場がどんどん縮小していく中にあっては合従連衡も避けられない問題といえます。そんな時に経営の第一線から離れている創業家が自らの意志や立場だけで合併に反対しているのだとしたら、あまりに近視眼的だと思います」

 その一方で、「規模を追求するだけの合併は、多少の延命措置に過ぎない」と指摘するのは、前出の松崎氏だ。

「もはや石油の元売り単体でやっていくのは難しい時代。オイルに付加価値をつけて売れるような関連事業を多角的に展開できなければジリ貧になるだけです。そんな構造不況に陥っているうえに同業他社と一緒になって、どのくらい相乗効果が見込めるかは疑問です。早晩、人員やサービスステーションのリストラも避けられなくなるでしょう」

 現在、創業家は昭介氏が昭和シェル株の約0.1%を取得し、経営側の同社株取得を阻止しようと対抗策を講じている。もし、このまま合併話が破談になれば、出光は独力で生き残る道を模索するしかないが、創業家とのわだかまりが解けぬままでは、再び大きな転機を逃すことにもなろう。

「出光にとって創業家は精神的支柱であることに変わりはなく、今後も出光家を無視して何かを決めようとは現経営陣も思っていないはず。2006年に上場した際も、当時の天坊昭彦社長が反対する創業家を粘り強く説得して会社を立て直しましたからね」(松崎氏)

 言った言わない──の醜い「お家騒動」がこれ以上長引けば、出光ブランドの威信が失墜するばかりか、企業全体の屋台骨を揺るがすことにもなりかねない。