関連画像

写真拡大

賃金不払いの一掃を目指すプロジェクト「NO MORE 賃金泥棒」のメンバーが6月13日、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで記者会見を開き、若者の仕事や生活実態の調査結果を発表した。「タイムカードを切ってから発注や事務作業をやる」など、多くの不満が寄せられている。

プロジェクトは、佐々木亮弁護士(ブラック企業被害対策弁護団代表)らの呼びかけで、2015年にスタート。名ばかり管理職や違法な固定残業制など、あらゆる賃金不払い問題に取り組んでいる。

調査は、2015年10月15日から2016年6月10日まで実施。インターネット経由80人、対面327人の合計407人に労働環境を聞いた。正社員(44.0%)とパート・アルバイト(38.1%)が8割以上。平均年齢は26.4歳で、男性が女性よりも40人ほど多かった。

働き方や生活の不満を尋ねたところ、「人手が足りない」(49.1%)、「賃金が安い」(42.8%)という回答が突出。3番目に多かった「休みが少ない・有給が取れない」(27.3%)以下を突き放した。

佐々木弁護士は、上位2つを指して「矛盾している。本来、人手が足りなければ、賃金を高くしてでも人を増やそうとするのに、そうなっていない。デフレ経済がちっともよくなっていない。日本の労働市場が歪んでいるということだと思います」と解説した。

一方で、新たな歪みも生じているようだ。同プロジェクトによると、既存バイトの時給が上がらないのに対し、近年、最低賃金の引き上げや人手不足から、募集時の時給については上昇傾向にあるそうだ。結果として、新人の方がベテランより時給が高い「逆転現象」が起こっているという。

●「アルバイトだから黙っているというのは損」

会見にはブラックバイトで働く学生も出席し、実態を打ち明けた。

千葉県の大学1年生の女性は、高校時代から地元のコンビニでアルバイトしている。仕事を始めてから半年以上もの間、時給は最低賃金を下回っていたという。ほかにも、休憩時間が実質ゼロといった問題があった。

これに対し、佐々木弁護士は、時給の逆転現象を念頭に「人手不足で『来て欲しい人』には、お金を出して、『来たい人』『すでにいる人』には出さない。闇が深い」。

一方、東京都の大学院生(修士課程2年)の女性は、都内のビアホールで働いている。店ではヨーロッパの民族衣装が制服で、着替えに10分ほどかかるにもかかわらず、更衣時間は労働時間外とされていた。過去の裁判例では、制服の着用が義務付けられており、着替え場所が指定されていれば、更衣時間も労働時間になるとされている。

また、賃金は15分単位でしか支払われておらず、業務後の研修会も労働時間に含まれていなかった。女性は2年半ほど働いているが、正社員の残業時間も長く、「この職場ってやっぱり問題なんだなと感じることが多くなった」という。

2人は首都圏青年ユニオンを通じて、団体交渉をおこない、待遇の改善につなげたそうだ。佐々木弁護士は「言えば変わる事例は結構ある。アルバイトだから黙っているというのは、損につながる」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)