イタリア人監督の年俸でみるセリエAのクラブ経営難…指揮官解雇は大きな痛手に
 先週はセリエAのクラブ経営問題についてお伝えした。今週は引き続き、イタリア人の監督の年俸から問題を探ってみたい。

 イタリア人の監督で現在、最も注目を浴びているのがプレミアリーグ、レスターのクラウディオ・ラニエリ監督だ。イタリアではローマ、インテルなどで目立った成績を残せなかった同監督。しかしレスターではプレミア制覇まであと一歩というところまで来ている。11日付のイタリア主要スポーツ紙も、一面でサンダーランド戦での勝利と涙する同監督を取り上げ、特集を組んだのだった。

 そのラニエリ監督の年俸は150万ユーロ(約1億8000万円)と言われている。これはナポリのマウリツィオ・サッリ監督の来シーズンからのそれと同じ。サッリ監督はナポリ一年目の今シーズンは80万ユーロ(約9800万円)だったが、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長が倍増を決めた。

 首位ユヴェントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は500万ユーロ(約6億1000万円)で、インテルのロベルト・マンチーニ監督は400万ユーロ(約4億9000万円)。すでにヨーロッパでトップクラスになったカルロ・アンチェロッティ氏は来シーズン、バイエルンから750万ユーロ(約9億2000万円)を受け、チェルシーのアントニオ・コンテ新監督は670万ユーロ(約8億2000万円)を手にするという。

 セリエA最高年俸獲得の選手、監督の年俸がマックスに達したのは2008年から2010年だった。ズラタン・イブラヒモヴィッチ(現パリ・サンジェルマン)は1100万ユーロ(約13億5000万円)、サミュエル・エトオ(現アンタルヤスポル)は1050万ユーロ(約12億9000万円)を稼いでいた。インテルの黄金時代の中心人物だったジョゼ・モウリーニョ氏も900万ユーロ(約11億円)という破格の金額だった。

 この時代を機に、監督、選手ともケタ外れの年俸からトーンダウンするものの、2013−14シーズンから今年まで、セリエA全監督のトータルの年俸は各年3シーズンとも約2400万ユーロ(約29億5000万円)という統計が出ていて、それまでの年度から約1.3倍に跳ね上がっている。

 またセリエAで解雇された監督にそれらのクラブが支払っている合計額は2121万ユーロ(約26億円)だという。中でも元インテルのヴァルテル・マッツァーリは、この6月末まで契約が残っていたため年俸700万ユーロ(8億6000万円)を“稼いで”いる。これではクラブの経営が大幅赤字になるのも無理はない。またミランも同じ理由でクラレンス・セードルフ氏に480万ユーロ(約5億9000万円)、フィリッポ・インザーギ氏に300万ユーロ(約3億7000万円)を支払っている。クラブが土壇場で新スタジアム建設構想を断念したのも納得がいく。クラブは選手だけでなく監督の力量をしっかり見極めないと、破産という悪夢が待っているのだ。

※年俸は全て推定価格。

文=赤星敬子