日本銀行がマイナス金利の導入を発表した。世界経済への大きなインパクトも期待されるところだが、今後、特に注目したいのが不動産業界だ。欧州ではマイナス金利導入に伴って国債の長期金利も低下する動きがみられた。日本でも導入後すでに過去最低水準を更新している。

 長期金利は住宅ローン金利の指標とされるため、ローンの金利も同様に下がることが予想される。すでに新生銀行は住宅ローン金利の一部を最大で年0.10%引き下げると発表し、メガバンクなども引き下げを検討しているという。カブ知恵代表の藤井英敏氏が今後の不動産市場を予測する。

「住宅ローン金利の引き下げで消費者の購買や投資意欲が湧き、不動産市場はこれから“バブル”を迎えるかもしれません。金利が下がることで資材調達などのコストが下がり、供給側にもメリットが大きい。マイナス金利により需給両サイドの相乗効果が見込まれる」

 今後の活況が見込まれる不動産市場。榊マンション市場研究所の榊淳司氏は不動産の「買い時が訪れている」と指摘する。

「もともと2017年4月の消費税の増税前のタイミングが不動産の買い時とされていました(※注)。額の大きい不動産売買では、(消費税8%→10%の)2%の増税でも影響は大きい。そうした中での今回の住宅ローン金利の低下です。よりはっきり買い時となったわけですから、皆がそう考えてすぐに価格の高騰が始まるでしょう。住む人も投機目的の人も早めに動いたほうが良い」

【※注/住宅の売買や新築などで消費税が課税されるタイミングは、住宅の引き渡し時点。そのため契約締結は2017年3月31日以前であっても、2017年4月1日以降に引き渡しを受ける場合は新税率の消費税10%が適用される】

 不動産取引が活発になれば、関連する株価や地価が上昇し企業や家計の資産が増大する。「マイナス金利発・不動産市場経由」の好景気が見込まれているのだ。

 大きなインパクトを持つマイナス金利はこれまで日本経済に悲観的だった専門家にも衝撃を与えた。マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏が心境を明かす。

「日本は預金量が多いうえ、銀行への悪影響が大きいことから、マイナス金利導入は“禁じ手”とされていたが、それを覆したことに日銀の決意を感じる。今年の株式市場はアベノミクス相場の限界で下げると見ていたが、今回の日銀の決定を受けて株価見通しを修正する必要がある」

 今後はさらなる緩和策が採られる可能性もある。黒田総裁は2月3日の講演で「追加緩和の手段に限りはない。日銀は今後とも、金融政策のイノベーションに取り組んでいく」と宣言しているのだ。ケイ・アセット代表の平野憲一氏がいう。

「黒田東彦・総裁はデフレ脱却まで何でもやる意気込みです。中央銀行が頑なな姿勢を貫くことで、疑心暗鬼だった市場心理が好転しそうです。マイナス金利で金利が下がれば、日本企業は今後、多額の資金調達が必要なM&Aを積極的に行なっていけるようになるでしょう。強烈な援軍を得て、日経平均株価は年内に2万5000円まで伸びると見ています」

※週刊ポスト2016年2月19日号