中国で「項羽」の子孫を自称する男が「影の軍団」を結成し、政府を転覆させる計画を進めていたとして、21人が警察に身柄を拘束されていたことが分かった。警察は爆発物および爆発物の原料を合わせて50キログラム、押収したという。中国人民広播電台(中国人民ラジオ)、新華社などが報じた。(イメージ写真提供:123RF)

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 中国で「項羽」の子孫を自称する男が「影の軍団」を結成し、政府を転覆させる計画を進めていたとして、21人が警察に身柄を拘束されていたことが分かった。警察は爆発物および爆発物の原料を合わせて50キログラム、押収したという。中国人民広播電台(中国人民ラジオ)、新華社などが報じた。(イメージ写真提供:123RF)

 男の名は項逢選で41歳、広東省広州市内で洗濯店を経営していた。SNSを利用して「同志」を募っていた。警察は3月になり、ユーザーからの通報があったので気づいたという。

 項容疑者はSNSを通じて、「武装蜂起で現行体制を覆し、民主憲政の道をもたらす」などと宣言。“理念”に共鳴した者が具体的連絡方法を求めた。インターネットを利用していただけに、「共鳴者」の所在は中国のさまざまな場所で、受け入れられた者は広州まで行き、項容疑者の洗濯店で寝泊まりし、食事もあてがわれていた。

 項容疑者は自らのグループを「民選党」とも称し、自分は「司令官」や「総統」と称し、気に入った配下を「功臣」として、「官職」と「爵位」を与えていたという。

 項容疑者は爆発物および爆発物の原料を合わせて50キログラム集めていたが、一味には爆発技術に詳しい者や金属加工の技術に詳しいもの、法律関連の仕事の経験者もいた。警察関係者は、身柄を拘束した者はいずれも、社会おける地位が低く、仕事も結婚生活も順調ではなかったと説明。さらに犯罪歴のある者も多かったという。

 項容疑者らはまず、資産家を誘拐して多額の身代金を資金として、人の多く集まる場所を爆破して社会を混乱させようと計画していたという。爆破計画を担当していた者は警察に対して「彼(項容疑者)には思想があった。私はこのような状況では行動せねばならないと信じた」と供述したという。

 警察は8月、項容疑者の経営する洗濯店に踏み込み、項容疑者を含む幹部7人の身柄を拘束。9月30日には、その他の14人の身柄を拘束したという。

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◆解説◆
 「項羽の子孫」、「官職と爵位」、「政府転覆」など、いかにも「トンデモ事件」ではあるが、中国社会が抱える問題点を思えば、かなり深刻な事件とも言える。

 まず、中国には生活や仕事などの現状に強い不満を持つ人が多いことだ。改革開放政策における「負け組」になってしまった人と言える。しばらく前なら、経済の高度成長という背景があり「敗者復活」の夢も持ちやすかったが、現在は経済の成長が鈍化している。そうなれば、「自分の苦境は体制が悪い」、さらに「いかなる手段を使っても現体制を変えねばならない」との発想にもなりやすい。

 項容疑者はインターネットを利用した。同調者を集めやすかった代わりに「あまりにも語り過ぎた」ため、異常さを感じた一般ユーザーが警察に通報した。しかし、もっと巧妙な方法で、過激な考えをする者のグループが結成されている可能性は、完全に否定する方が難しいだろう。

 「おかしな思想に取りつかれた者らの犯した、特異な犯罪」とだけ理解したのでは、過激思想を持つグループが出現しやすい社会の状況という上記事件の本質を見誤る恐れもある。日本でもオウム真理教が一連のテロや殺害事件を起こした例がある。

 過激派組織「イスラム国(IS)」も当初は同じ傾向を持つグループのなかで特別に大きな組織ではなかったが、混乱するシリアで、勢力を急激に拡大させた。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)