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病院にはいろいろな人が通院してくるが、ある病院スタッフは、ほぼ毎日通院してくる高齢の男性患者の迷惑行為に頭を悩ませている。「その患者さんを、通院禁止にすることはできないでしょうか?」と、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談が寄せられた。

その患者は、院内でも大きな声で他の患者に話しかけるなど騒がしく、女性看護師に対して「まだ結婚していないのか」「デブだと男がよってこないぞ」などのセクハラ発言を繰り返すそうだ。注意を受けても改める様子がないどころか、猛反発してくる。そのため、他の患者も萎縮している様子がみられる事態になっている。

このような場合、病院は患者を「出入り禁止」にしたり、「診療拒否」することはできるのだろうか。また、被害にあった女性看護師が、患者に対して慰謝料を請求できるのだろうか。医療問題にくわしい鈴木沙良夢弁護士に聞いた。

●通院を拒否できる「正当な理由」とは?

「医師は、診察治療を求められた場合、正当な理由があるときでなければ、拒むことができないとされています。このことは『応召(おうしょう)義務』と呼ばれ、医師法19条に規定があります」

歯科医師も同様で、歯科医師法19条に定められているそうだ。

「医師・歯科医師は、国の免許制度によって、その職務を独占しています。仮に、医師が、正当な理由もなく診療を断った場合は、患者側から損害賠償請求を求められたり、行政処分の対象になることがあります」

今回のケースは「正当な理由」があるといえるだろうか?

「患者に対して何度か警告をしても改善が見られず問題行動を繰り返す場合には、診療を拒否するだけの正当な理由があるといえるでしょう。ただ、その患者が急患で運ばれてきた、というような場合には、応招義務のほうが優先されると思います」

では「診療拒否」する際に、医師側が注意すべき点はあるだろうか。

「後日、診療の拒否に『正当な理由があった』と明らかにできるよう、患者本人に警告書を渡して、態度の改善を促しておくことを勧めます。また、患者の行為が目にあまる場合は、警察を呼ぶことも考えてください。

なお、女性看護師が、セクハラ行為をした人に対して、慰謝料の請求をすることは可能です。ただし、その場合は、男性患者の行為や故意を、自分で証明する必要があります」

鈴木弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
鈴木 沙良夢(すずき・さらむ)弁護士
早稲田大学法学部卒業後、大東文化大学法科大学院を経て2006年に司法試験合格。2012年、鈴木沙良夢法律事務所開設。病院・医療法人のための法律問題解決サイト【医療法人.net】を運営。
事務所名:鈴木沙良夢法律事務所
事務所URL:http://www.saramulaw.com/