その要素とそれが合体するか。S・A・コスビーの邦訳第三作『すべての罪は血を流す』(加賀山卓朗訳/ハーパーBOOKS)を読んでいて、気持ちよく部品が嵌まった感じがした一行があった。カチリと音が聞こえたほどにそれは小気味よい感触だった。そうか、そういう小説か。コスビーは暴力と憎悪を描く作家として読者の前に登場した。暴力、は理性で制御しきれない感情の奔流と言い換えてもいい。社会的存在である人間は、感情