―生成AI市場急拡大でにわかに脚光、GPUとともに新たな成長のステージへ―

 東京株式市場では5月に入ってから日経平均株価が一進一退、3万8000円台での往来を繰り返している。方向感の定まらない地合いが続いているが、5日・25日・75日移動平均線がいずれも3万8000円台半ばで収れんする動きにあり、もみ合い圏離脱の機は熟しつつある。世界の株式市場に目を向ければ5月は総じて強気相場が繰り広げられており、欧州や米国では軒並み主要株価指数が史上最高値を更新するなどリスクオンを強く印象づける。相対的に出遅れる日本株のキャッチアップが期待されるところだ。

 3月決算企業の決算発表が概ね終了し、ここからは再びテーマ買いの動きが復活しそうだ。米国株市場ではNYダウに先立ってナスダック総合株価指数が最高値を更新したが、その原動力となったのはエヌビディア を筆頭とする半導体主力株の一角。生成AI市場の拡大はとどまることを知らず、それに付随してAI用半導体が爆需を発生させ関連銘柄の株価を強く刺激している。AI用半導体では超高速の特殊メモリーである「HBM」が存在感を高め、ここにきてがぜん輝きを増してきた。新たな成長シナリオ創出への期待を背景に、東京市場でも同関連株に投資マネーの本格攻勢が近い。

●超高速DRAM技術を代表するHBM

 HBMとは「High Bandwidth Memory」の頭文字をとったもので超高速DRAM技術を代表するデバイスとしてマーケットの視線を集めている。今から10年ほど前に 半導体市場で注目され始め、これまでに第1世代(HBM)、第2世代(HBM2)、第3世代(HBM2E)と進化の過程をたどり、現在の主戦場となっている「HBM3」は第4世代である。更に次の第5世代である「HBM3E」では世界の大手半導体メーカーが主導権を握るべく鎬(しのぎ)を削っている状況だ。

 HBM市場で首位を走るのが韓国のSKハイニックスで、これを猛追しているのが同じく韓国のサムスン電子。この2社が双璧であり、このほかではSKとサムスンの後塵を拝しているものの、米半導体メモリー大手マイクロン・テクノロジー が3番手として同分野での展開を強めている。HBMの市場規模は一部調査機関によると2024年時点では25億ドル(約3880億円)と推定されるが、29年までに80億ドル(約1兆2400億円)弱に達するとも予測されており、周辺企業も含めると半導体産業全体への経済効果は非常に大きなものとなる。

●生成AI市場拡大で強烈なニーズ発現

 では、HBMが今なぜ耳目を集めているのか。それは 生成AIの爆発的な普及が影響している。まず、生成AI市場の拡大によってデータセンター増設需要が喚起されているが、これは正確には生成AI利用に際してデータセンター内のAIサーバーを経由する必要がある、ということである。我々が目にする生成AIは、サーバー上で質問に対する回答を導き出すためにデータ(質問内容)に含有される特徴やパターンをディープラーニングして、そこで得たデータを基点に新たな情報コンテンツを生成するという手順を踏んでいる。

 ディープラーニングではいうまでもなく大量のデータを高速処理する必要があり、その際に複数の計算を高速かつ並列で行うことができる画像処理半導体(GPU)が脚光を浴びた。GPUで圧倒的商品シェアを有するエヌビディアが業績を変貌させ、一躍株式市場でもスターダムにのし上がる背景となった。このGPUがディープラーニングを実行している最中、それを一時的に記憶するデバイスが必須となり、その役割を担うのがHBMである。いわばGPUとHBMはセットでニーズが発生し、実際にも並列隣接させる形で一緒にパッケージングされる。「GPUの需要が伸びれば、そのままHBMの需要にも連動する仕組み」(中堅証券アナリスト)である。