イスラム国の宣伝し過ぎている? テレ朝「報ステ」に疑問の声も
テレビ朝日系「報道ステーション」がイスラム国の紹介をし過ぎて、宣伝のようになっていると、ネット上で疑問の声も相次いでいる。番組では、残虐な行為は許されないと強調してはいるが、イスラム国側に立ち過ぎているのではないかというのだ。
特にやり玉に挙がったのが、2015年1月27日夜の放送だった。
「一過激組織というふうにはくくれない」
「『イスラム国』の隠れた野望 領土拡大で国家建設の戦略」
こんなタイトルが付いた特集は、古舘伊知郎キャスターが「いわゆる一過激組織というふうにはくくれない」と宣言して始まった。
古舘氏はまず、イスラム国の急拡大について、2つの原因を挙げた。
1つは、アメリカがイラクやシリアで失敗したということだと指摘した。イラクには戦争を起こして多くの犠牲者を出し、シリアでは悲惨な内戦に見て見ぬふりをしたことを指している。もう1つは、イギリスやフランスが100年前に国境を勝手に決めた線引きの不自然さにあるとした。アラブの人たちは、それに対し、複雑な思いを共有しているという。
そして、番組では、様々なイスラム国の映像を流し、イスラム国は領土を獲って、国家を打ち立てようとしているところが、アルカイダなど他の過激派と違うところだと強調した。
イタリア出身の政治アナリストにもインタビューしており、このアナリストは、イスラム国が近代的な行政・官僚機構を持ち、人々が望むことを行って必要なものを与えていると説明した。その例として、何でも反対したタリバンと違って、「病気の子供たちの世話もしています。例えば、ポリオワクチンの接種サービスも行っています」と挙げた。そして、イスラム国の残虐行為を正当化できないとしながらも、「テロリストとは何なのでしょうか? 『自由を求める義勇兵』と何が違うのでしょうか?」と語っていた。
「イスラム国の内情がよく分かる」と評価も
また、番組では、イスラム国を現地取材して平穏な市民生活をリポートしたというドイツ人作家などの証言や映像も紹介した。宣伝リポーターにさせられている人質のイギリス人ジャーナリストが「空爆が原因で子供たちは大きな音をひどく嫌がります。電気も通っていて、必要な医療品が手に入ります」と紹介する映像も流された。
特集の最後では、古舘氏は「イスラム国がやっている蛮行、こんなものは許されるわけはありません」と強調しながらも、遠くの方から見ることもできるとして、「柔軟に見なきゃダメですね」と述べた。これに、朝日新聞の恵村順一郎論説委員も相づちを打ち、「イスラム国の土壌を育てたのは、幾重にも積み重なった人々の怒りなんじゃないかと思う」と漏らした。つまり、アメリカがイラクやシリアでしたことが重くのしかかっているということだという。
報道ステーションを巡っては、イスラム国問題について特集した1月23日の放送も波紋を呼んだ。
そこでは、元経産官僚の古賀茂明さんが、安倍晋三首相は、日本人の人質が犠牲になるかもしれないことを知っていながら、イスラム国を刺激するような中東支援発言をしたと指摘した。そして、イスラム国を空爆しているアメリカやイギリスの仲間に入れてほしいと思っていたのではないかとした。さらに、自分だったら、「I am not Abe」というプラカードを掲げて、「日本人は違いますよ」と主張していたともした。
もっとも、古舘氏は、「古賀さんのお考えと一緒の方、まったく違うという方、少し違う、いろいろあると思います」とはフォローしていた。
こうした報ステの報道については、ツイッターなどで、イスラム国の内情がよく分かる、政府対応のまずさを指摘した、などと評価する声はある。その一方で、イスラム国のプロパガンダ放送みたいになってるけど大丈夫か、イスラム国を利用して安倍首相批判をしている、といった疑問や批判がいくつも出ている。
こうした点について、テレビ朝日の広報部では、取材に対し、次のようにコメントした。
「1月27日放送の『報道ステーション』は、今回の人質事件発生の背景として『イスラム国』が生まれた経緯や、その組織を客観的に説明したものです。番組については日ごろから様々な貴重なご意見、ご指摘を頂いております。視聴者の皆様からも日常的に様々なご意見を頂戴しますが、具体的な内容や件数は従来公表しておりません」