【米国はこう見ている】ダルビッシュがレッドソックスのエースに? 地元紙が来季途中のトレードの可能性に言及
メジャー屈指のエースとして評価されているダルビッシュ
レンジャーズのダルビッシュ有投手がチームの不振の影響でトレードに出される可能性を地元メディアが分析している。地元紙「ボストン・グローブ」が「レッドソックスは本当にエースピッチャーを獲得する必要があるのか?」との見出しで特集しており、その中でダルビッシュの名前が候補の1人として挙がった。
今季、ア・リーグ東地区最下位に終わったレッドソックスは、オフに入ってから大補強を展開している。すでにFA市場の打者の目玉だったパブロ・サンドバル内野手、ハンリー・ラミレス内野手を獲得し、投手はトレードでウェイド・マイリー、リック・ポーセロを、FAでジャスティン・マスターソンを補強した。
だが、今季途中にトレードでアスレチックスに放出し、シーズン終了後にFAとなった左腕ジョン・レスターの争奪戦でカブスに敗れたため、真のエース不在が懸念材料となっている。
そこで地元紙が、米の野球データサイト「ファングラフ」の算出した来季の予想WARで、15位に入ったポーセロより上位に位置するMLB屈指のエースがトレードに出される可能性、そしてその投手をレッドソックスが獲得できる可能性を探っている。
WARとは打撃、守備、走塁、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標で、そのポジションの代替可能選手と比較し、どれだけ勝利数を上積みしたかを分析したもの。セイバーメトリクスによる指標で、メジャーで最も重視される数値の1つだ。
1位は今年のナ・リーグMVPとサイ・ヤング賞に選出されたドジャースのクレイトン・カーショー投手。ただ、WAR4・8と控えめの評価となっているメジャー最強ピッチャーの移籍の可能性は皆無だという。
2位の「コンドル」の異名を持つホワイトソックスの変則左腕、クリス・セール投手(WAR 4・7)、3位のマリナーズの「キング」こと、フェリックス・ヘルナンデス投手(WAR4・4)の放出の可能性はなし、と記事では言及している。
しかし、来季の活躍が予想されるエースとして、メジャー4番目に選出されているレンジャーズのダルビッシュ(WAR4・4)は状況が違うと分析されている。
「先の話にはなるが、可能性はある」ダルビッシュのトレード
「(ダルビッシュに関しては)1位から3位と同じ答え(皆無)を出したい誘惑に駆られたが、(トレードの)一縷の望みはあると見ている。レンジャーズには貴重な若手の資産が少ない上に、ロースターには疑問符ばかりがつきまとうベテランが多い。現時点で、ア・リーグで下から3番目の成績になると予想されている」
記事ではこう指摘。レンジャーズは今年、悪夢のような故障者が続出。補強の目玉だったプリンス・フィルダー内野手、秋信守外野手がいずれも不振に陥り、手術で戦線離脱するなど主力に不運が重なった。
ダルビッシュも右肘の炎症で8月上旬に故障者リスト入り。ロースターのメンバーは次々に入れ替わる事態となり、年間公式戦出場選手数でメジャー記録を更新するに至った。名将の誉れ高かったロン・ワシントン前監督も家庭の事情で退任。来季は離脱者が出揃うはずだが、レンジャーズは依然として厳しい戦いを強いられると予想されている。
2012年から6年契約を結んでいるダルビッシュだが、特集ではこの厳しいチーム事情がエースに関する方針に変化をもたらす可能性があると分析。
「ジョン・ダニエルズGMは2018年まで契約を残しているが、もしも、序盤戦で出だしが鈍いようならば、チームを一度解体して、逃亡を決断するだろう。先の話にはなるが、可能性はある。来年7月に」
記事ではそう報じており、来季のチーム状況次第で、ダルビッシュがトレードされる可能性を指摘している。
5位はインディアンスで今年のサイ・ヤング賞に輝いたコーリー・クルーバー投手(WAR4・1)。寸評では「年間予算のやりくりが、綱渡り状態のインディアンスでゼロとは言い切れないが、サイ・ヤング賞投手をトレードに出すのはクラブのブランディングにおいて得策ではない」と現実的ではないと指摘している。
6位はタイガースのデビッド・プライス投手(WAR4・0)。寸評では、すでにタイガースが先発の一角のポーセロをレッドソックスと引き換えで放出したために、これも限りなくありえないと分析している。しかも、レイズ時代のプライスがレッドソックスの主砲のデビッド・オルティスにデッドボールを当ててから、メディアを通じた対立に発展した過去もある。
また、強豪タイガースが2015年に崩壊する可能性がわずかながら存在するとしながらも、強敵のいないア・リーグ中地区で7月にはプレーオフ確定が目前な状況となると予想。現実的にプライス獲得の可能性が出てくるのはフリーエージェントとなる来年オフになると見ている。
宿敵ヤンキースから田中を獲得できる可能性は?
7位は現在のFA市場最大の目玉であるマックス・シャーザー投手(WAR3・9)。タイガースからFAとなったエースの獲得に必要なのは大型条件。そして、タイガースがクオリファイング・オファーを提示したために、ドラフト指名権を譲渡することにもなる。
2013年のサイ・ヤング賞投手は30歳で迎える来季に三振の山を築くだろうと寸評では予想しているが、あとは争奪戦を制するために必要となる大金をレッドソックスが支払うか否かが鍵としている。
8位はナショナルズのスティーブン・ストラスバーグ投手(WAR3・8)。寸評では「興味深いプラン」としている。強豪のナショナルズが今オフはトレードに積極的であること、そして、契約期間が残り2年となったストラスバーグに契約延長に応じる意思があまりみられないことから、トレードの可能性はありと見ている。その場合は、レッドソックスが交換要員として超優秀なプロスペクト(若手有望株)を放出する必要があるとしている。
9位はカブスに移籍したレスター(WAR3・6)で「(移籍は)まだ早すぎる」と寸評では一言。10位は、ジャイアンツで今年のワールドシリーズMVPに輝いたマディソン・バムガーナー投手(WAR3・4)。「(米誌)スポーツ・イラストレイティッドの最優秀選手に選出された人間はトレードできない暗黙のルールがある」と、トレードは現実的ではないと指摘している。
11位にはヤンキースの田中将大投手(WAR3.3)が入った。
不倶戴天の天敵でもあるヤンキースとレッドソックスだが、今年は珍しいトレードが実現しており、夏にスティーブン・ドリューがヤンキースへと移籍した。ただ、昨季のワールドシリーズ制覇のメンバーだったドリューは昨オフにクオリファイング・オファーを拒否し、所属先が決まらずに、今年5月21日にようやくレッドソックスと1年契約が成立。記事ではその“訳あり”のドリューと異なり、エースのトレードはそう簡単に実現しないと指摘する。また、今季、田中が戦線離脱した右肘靭帯断裂の不安にも触れ、「たとえ興味があったとしても、田中の肘の問題は少々の懸念材料の域を超えているように思える」としている。
12位はブルージェイズのマーカス・ストローマン投手(WAR3・3)。記事では、レッドソックスと同地区であり、かつリーグ屈指の有望な若手投手であることから、ブルージェイズが放出する可能性は極めて低いとしている。
一方、13位に入っているドジャースのザック・グレインキー投手(WAR3・2)については、「間違いなく可能性はある」としている。グレインキーは2018年までの契約だが、今季終了時に契約を解除できる権利を持っている。そして、グレインキーが解除する可能性は高いという。また、ドジャースがトレードでの放出を決断した時には、レッドソックスはストラスバーグの獲得に必要なほどの優秀な人材を交換要員とする必要はないと記事では見ている。
来季中に移籍の可能性ありとされている選手は少ない。レンジャーズの成績次第ながら、ダルビッシュもその1人。ストラスバーグとグレインキーの2人も残りの契約期間の問題で球団側がトレードに踏み切る可能性があると分析している。果たして、“その時”はやって来るのか。まずはレンジャーズの来季序盤の戦いぶりが注目される。