今日も朝からパズドラ。パズルが連鎖して消えるのが快感だ

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■なぜ、電車内でみんなパズルゲームをするのか

くるくる、くるくる。

電車内のあっちこっちでスマホ画面を指でなぞっている人々。今日も朝からパズルゲームだ。

「パズドラ」(正式名、パズル&ドラゴンズ」)は全世界で4000万ダウンロードを達成した。

「ツムツム」(正式名、LINE:ディズニー ツムツム)も同じように3000万件を突破(いずれも10月時点)。パズルゲームは、相変わらず大変な人気だ。

何を隠そう私も大のゲーム好き。人生のなかで割いた時間が最も多いのがゲームだ。朝に夕にとこの2つのゲームにせっせと勤しんでいる。パズドラに関しては、攻略本まで書いてしまった。

さて、人はなぜパズドラやツムツムにハマるのか? 本欄担当のおじさん編集者のような「パズルしない」派もいるだろうから、ここで、ごく簡単にどんなゲームかを説明しよう。

バズドラはスリーマッチパズルというジャンルのゲームで、赤や緑などの「ドロップ」と呼ばれる何種類かの絵柄パズルを指で移動して縦もしくは横に同じ色を3つ以上揃えると、それらパズルを消せる。それがポイントとなり、「敵」を倒すことができる。

3つのパネルを揃えて消すゲームは、極めて古典的で、かつてちょっとでもパズルゲームを遊んだ人には非常にとっつきやすいシンプルなゲームだ。

一方、ツムツムはディズニーのキャラクターを使ったぬいぐるみ「TSUM TSUM」シリーズをテーマにしたパズルゲーム。こちらもツム(ぬいぐるみ)を3つ以上なぞればツムが消える仕組みだ。

まあ細かいルールはよくわからなくても、指を動かしているだけで、すぐにコツがつかめる。

このことが普段ゲームをしない「非ゲーム層」を取り込んだ大きな要因だろう。しかし、大ヒットの理由はこの手軽さだけではない。

そもそも、「非ゲーマー」がゲームを始めたきっかけになったのが携帯電話を使ったモバイルゲームだ。

GREEやMobage(現DeNA)などのSNSがソーシャルゲームを提供し、これがライトユーザーに爆発的な人気を呼び、カードバトル全盛期を迎える。

集めたポイントなどでガチャとよばれるくじ引きをしてバトルはボタンをポチポチと押すだけという手軽さに、これまでゲームをしたことがなかった主婦層なども魅了された形だ。

ソーシャルゲームは、基本的には無料だが、より有利に進めるためのアイテムが購入できる。バトルタイプのゲームでいえば、課金すればするほど早く強くなれる。優越感と爽快感、これにハマる人が続出し、未成年者が親のお金を使い込むケースが続出し、社会問題に発展している。

■自己完結できるから、ストレスなし

そんななか登場したのがスマホで遊べる、パズドラだ。

スクリーン上のパズルを移動するという操作性の新鮮さ、さらに自らのポイントなどでモンスターを育成するRPGの要素も盛り込んでゲーム性を高めた。

それまでのソーシャルゲームとの大きな違いは、課金をしなくとも十分に楽しめることだった。もちろん課金をすれば、より楽しめるが、課金の代わりに時間をかければ同じよう楽しめる。また、パズルを組み立てる技術やコツが基本ゆえ、課金だけでは必ずしも強い敵は倒せない。

さらに、個人的には、プレーヤー一人でゲームが完結できる点も人気の要因だと思っている。

それまでのソーシャルゲームは、他のプレーヤーと競ったり、チームを組んで敵や他のチームと戦う団体戦のイベントが多かった。ネット上で戦友をつくり、コメントをやりとりしながら一緒に戦う団体戦は楽しい半面、時間に縛られたり、大事なバトルで1人だけ抜けにくかったりするなど、ソーシャルゲームならではのしがらみが億劫になる部分もある。

この「他人と競う」という要素が、人を課金へと駆り立てる。課金をして「俺、強えええ!」という優越感が忘れられず、「廃課金」と呼ばれる課金地獄にハマる人を何人も見てきた。しかし、パズドラは課金もできるがあくまで人を気にせず自分のペースで遊べる。このことが思いのほか、心地よい。誰にも邪魔されずゲームを純粋に楽しめるポイントになっている。

というわけで、みんな電車内で「くるくる」するわけだ。不快極まりない満員電車内でも、しがらみなく、自分だけの世界に浸ってゲームに没頭できる。それはささやかだけれど、シアワセの時間にほかならない。

■「戦略立案力や集中力の養成にもなる」

時間制限がなく、「次の手」をじっくり考えることができるのもパズドラのいいろころだ。詰将棋みたいに、朝の電車の中で悩んだ一手を半日考えて帰りの電車で再開するなんてことも可能だし、強い敵に対しては、敵の苦手属性のキャラクターで編成を組むなど「戦略」を練るのも楽しい。

これまでのソーシャルゲームはあまり考えることなく、ポチポチとボタンを押していただけだが、パズドラをやるようになってから、脊髄反射で物事を遂行しがちな軽薄な私も、いったん立ち止まって考えるという習慣が身についたような気がする。ちょっとした思考力を養うというメリットもあるのかもしれない。

以上のような要素に、超人気コンテンツであるディズニーのキャラクターを盛り込み、さらに手軽に簡単にしたのがツムツムだ。

同じキャラクターを指でなぞるだけ。パズルほど考えなくてもよいし、プレイ時間も1分。ちょっと時間の開いたときに遊べる手軽さ。ハイスコアを出すためには、テクニックや戦略も必要になるが、単に遊ぶだけなら、だれでもすぐに楽しめる。

私は1分という時間制限は、手軽さとともに集中力の鍛錬にもなるのではないかと思っている。これが3分となるとずっと集中しているのは、かなり疲れる。ところが1分の間、おもいっきり集中して、少し休み、また集中を3回ほど繰り返せば、ほぼ地下鉄の1駅分。朝の寝ぼけた脳にカツを入れるのにも役立っている。

また、ツムツムもパズドラもゲーム内のアイテムを送り合ったり、バトルに助っ人に呼べるような友達システムがある。過去のソーシャルゲームのように共闘はしないが、コンタクトをとろうと思えばとれるし、とらなくても問題ない。

ツムツムはLINEゲームなので、基本的にゲーム内の友達は、そもそもLINEでつながっているリアルの知人だ。これが特に女性にとっては安心感があり、ツムツムのゲーマー同士で会話も広がる。競わせないで仲間意識を喚起したという点もツムツムが女性に受け入れられた大きな要素だと思っている。

(永浜敬子=文)