平塚学園vs東海大相模
先発で好投の高田孝一
秋と夏の公式戦の違いは、期間があることだ。夏は短期間で試合をこなすので、体力的なタフさ、さらに流れに乗せる勢いがモノをいう。秋は1週間の期間がある。上手くいけば、1週間で別のチームのように成長する可能性を持っているのだ。
平塚学園はまさにそんなチームだった。9月15日に桐蔭学園をコールドで破った平塚学園だが、この半月間で急成長を果たした。
平塚学園vs東海大相模の一戦はともにエース同士の投げ合いに。 まず平塚学園のエース・高田 孝一。球速は130キロ前半と速くない。スライダー、カーブを低めに集め、内野ゴロに打たせる投球。4回表、豊田 寛に三塁打を打たれ、一死から5番千野 啓次郎のスクイズで同点に追いつかれるが、その後は後続を抑え、無失点に抑えていく。
高田を盛り立てていたのは内野守備。特に上手かったのが三塁手の北岡。非常に速く、また前に大きく弾む打球。処理が難しい打球だが、北岡はしっかりと合わせて難なくアウトにしていた。いわゆる球際に強い選手である。
高田は三振を奪える投手ではない。両サイドのコンビネーションで勝負をしていきながら勝負するので、必然とゴロが多くなる。そのため内野守備が肝要になるが、北岡だけではなく、各内野手の球際の強さが素晴らしく、平塚学園の守備力でなければ、ヒットになるだろうと思わせる打球が多かった。
第一試合（試合レポート）を見ていたときも、守備が堅いチームだったが、東海大相模はこの夏の大会で11本塁打を放ち、猛打で鳴らしたチームだ。打球の速さが違う。そんな相手にも、発揮する平塚学園の守備力の高さ。神奈川の高校野球ファンは平塚学園の守備に魅了されていた。力投を見せる吉田凌（東海大相模）
東海大相模の先発・吉田 凌。1回裏、二死三塁から味方の失策で1点を失うが、その後は吉田らしい投球を見せる。
常時135キロ〜140キロを計測。絶好調時のような145キロ前後を計測するわけではないが、この時期に、常時130キロ後半を計測する投手はなかなかいない。その吉田も速球で圧倒するわけではなく、持ち味である縦に落ちるスライダー、カーブ、スライダーのコンビネーションが絶妙だった。小さく切れるスライダーでカウントを稼ぎながら、追い込んでから縦スライダーで空振りを狙うか、または打者の手が出ないところにスライダーを投げて、見逃し三振に打ち取るなど、変化球を最大限に活かす配球で、平塚学園打線を抑え、1回裏以降、無失点。
こうして、1対1のまま迎えた9回裏。平塚学園は4番松本が左前安打で出塁。5番倉岡の犠打で、一死二塁のチャンスを作り、6番東の当たりはセンター前へふらふらと打ちあがる打球に。遊撃・杉崎が全力で打球を追いかけ、後ろ向きのままキャッチ。杉崎の好プレーで二死二塁となって、吉田は北岡を空振り三振に切って取り、延長戦に入った。
サヨナラ勝ちを決めた平塚学園延長戦に入って焦りが見えていたのは東海大相模。じっくりと攻めていきたいところだが、10回、11回ともに6球で終了。さらに12回も、一死一塁から平塚学園の遊撃手・戸張の好プレーで併殺でチャンスを潰すなど、流れは平塚学園に傾きつつあった。
そして延長12回裏、平塚学園は一死から7番北岡が相手野手の敵失で二塁まで進み、8番高田孝の時、縦スライダーが大きく弾んで、北岡は三塁へ。高田は空振り三振し、二死三塁の場面で代打・桑原が左越え適時打！見事サヨナラ勝ちを収めた。
関東大会出場を決めた平塚学園。大本命と呼ばれる東海大相模を破った内容がまた見事だった。エース高田孝は丁寧な投球で内野ゴロで打たせ、それを盛り立てる守備力の高さが光った。また打撃陣も、好投手・吉田相手に、少ないチャンスと相手のミスを逃さずに点をもぎ取った泥臭さも見逃せない。
2年前、松井 裕樹擁する桐光学園を下すものの、準決勝で横浜隼人に敗れ、関東大会を逃した。この世代は夏は決勝で横浜に敗れ、あと一歩で甲子園を逃した。そしてこの秋、桐蔭学園、横浜隼人、東海大相模の強豪を打ち破り、先輩たちの無念を晴らすかのような快進撃であった。
この勝利がさらに平塚学園ナインを大きくさせていくのか。快進撃はこの先も続けていくつもりだ。
（文＝河嶋 宗一）
