優勝を果たしたドイツ代表 (写真:岸本勉/フォート・キシモト)

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ブラジルW杯が終わった。ファンフェスタ会場も撤去され、街はまた日常に戻ろうとしている。

さて、改めて今大会を振り返ってみたい。まず大会そのものに関して。工事の遅れで本当に大丈夫か、などと日本で心配されていたインフラやスタジアムの問題は、まったく問題がなかった。運営に関しては完璧だったと言っていい。スタジアムもどれも素晴らしかったね。世界は決して日本人のリズムで動いていないということが分かったんじゃないかな。きっちりしている人もいれば、のんびりしている人もいるのが世界だ。

南米開催ということで、他大陸になかなか遠征できない南米サポーターが多数詰めかけていたのも印象的だった。その声に後押しされるように、アメリカやコスタリカも含め、この大陸のチームが躍動したように思う。一方で、やはりアフリカとアジアは厳しかった。ヨーロッパと南米の牙城を崩すには、単純にクオリティが一段低い。これは日本だけではない、アジア全体の問題として考える必要があるね。

優勝したドイツは、非常に組織的で、フィジカルが強く、いいGKを持っていた。対するアルゼンチンはメッシという「特別な個人」を持っていたわけだけど、今大会を見て感じるのは、クリスティアーノ・ロナウドがいるポルトガルや、ブラジルであればネイマール、ウルグアイのスアレスもしかり、個人で試合を決めるのが難しくなってきているということだ。一昔前のような、特別な個人がフィーチャーされる時代は終わりを告げるのかもしれない。

ドイツは誰にも頼らず、ベンチメンバーも含め、平均水準が非常に高いチームだった。これは、サッカーが世界的に「教えられる」スポーツになったからでもあると思う。特別な個人というのは、野性的で、自然に生まれるものだ。今はそういう人材が生まれにくくなっているのではないか。ドイツのように、組織としてしっかりとした育成システムとロジックを構築する国が世界をリードしていくのかもしれない。

そうした意味でも、ブラジルがドイツに7失点で大敗したのは象徴的だ。けれど、7失点大敗はブラジルにとってまた立ち上がるチャンスでもある。そうしてまた生まれてきた特別な個人が、組織を破る。そうやって、サッカーは進化していくのだ。ブラジルで開かれたW杯によって、サッカーはますますおもしろくなったよ。