グーグルの意外な競合相手、ピンタレストの強みとは
プレイスピンは、ピンタレストのビジュアル検索の一部に過ぎない。
先週ピンタレストが配信したEメールによると、ピンタレストには現在およそ10億もの「プレイスピン」があるのだという。この発表によって、ピンタレストはグーグルに取って代わる本命検索エンジンに、さらに一歩近づいた。
ピンタレストのプレイスピンが、近い将来にグーグルマップに取って代わるということはないだろう。あるいは永久にないかもしれない。しかし、一つのものをじっくり見るよりも、色々なものを手軽に見たいというユーザーにとっては、プレイスピンは世界中の様々な場所を見て回るのにちょうどいいのである。
プレイスピンは、「ピン」として知られるピンタレスト画像に位置情報のメタデータを追加したものだ。フォースクエアと提携することで、地図上から探し出せる実際の住所にプレイスピンでピンを留めることができるようになっている。ピンボードでは、例えば世界のビーチを集めたボードのように、人気がある観光スポットの実際の位置を地図上に記録しながら、気に入った場所を集めていくことが可能なのである。
ピンタレストならではの面白い検索ジレンマ
ピンタレストのビジュアル検索エンジンは、何百万という個人の力で成り立っている。この何百万もの人々が、最も関連性が高いと判断した事物によってコンテンツを体系化しているのだ。大量のデータを含む莫大な数のピンを前に、ユーザーひとりでは、全てを整理することは到底できない。
ピンタレストは、より関連性の高い検索結果が表示されるように、各種のピンにトピック固有のメタデータを結びつける取り組みを行っており、プレイスピンはそのうちのひとつに過ぎない。リッチピン(自動生成されたキャプションが付加されているピン)のおかげで、ピンタレストは、映画やレシピ、記事、商品、場所のピンを分類することが可能になるのである。
ピンタレストや他のビジュアル・ウェブが登場する以前、一般的にウェブとは、テキストがテキストを生み出すものだと思われていた。テキストを入力して検索を行うと、関連性の高い大量の結果がテキスト形式で返ってくる、という流れだ。ところがピンタレストにおいては、テキストベースで検索を行うと結果が関連性の高い画像で返ってくる。しかもその過程で文脈が失われることもない。
これまでピンタレストは、位置情報も含めたより多くのメタデータを各種のピンに提供することで、検索エンジンを改善しようとしてきた。こうした努力によって、ヨーロッパを旅するバックパッカーに関するピンを検索した結果、画面がヨーロッパ製のバックパックで埋め尽くされるような事態を避けようとしているのだ。
あなたはこう思うかもしれない。「だから何? グーグルにだってビジュアル検索エンジンはあるじゃない」と。しかし、ピンタレストのユニークさは、ビジュアル検索エンジンという点だけではなく、ユーザーが中心となって創っていくところにあるのだ。つまりピンタレストが正確な検索結果を保証するためには、ユーザーに対してリッチピンを使用するよう勧めなければならないのである。
リッチピンを手早く集めるための構想
ピンタレストが大量のプレイスピン獲得に成功したということは、大勢のユーザーがリッチピン機能を利用していることの証明である。プレイスピンが誕生してからまだたった5か月しか経っていないことを考えれば、これは大変な快挙だ。フォースクエアとピンタレストがパートナーシップを発表したのは2013年11月後半のことなのだ。
プレイスピンが発表される前月、ピンタレストは「ピントリップ」というサービスに対して商標権侵害訴訟を起こしている。当サービスのフライト検索機能がピンタレストの模倣にあたるというものだった。この裁判におけるピンタレスト側の申し立ての中で、ピンタレストを旅行目的で利用しているユーザーの数が明らかにされ、世間の注目を集めた。
「ピンタレスト・ユーザーは今日までに、ピンタレストの『旅行』カテゴリーにおいて6.6億以上のピンを掲載している。非常に多くの人々が、ピンタレストを旅行計画ツールとして使用しているのだ」
その数は決して軽視できるものではないが、「旅行」というカテゴリーは、ピンタレストの5年間に及ぶ活動の中で築き上げられてきたことを思えば当然ともいえる。しかしプレイスピンは、誕生から5か月も経たないうちに10億に到達しようとしているのだ。
アーティクルピン(記事ピン)というリッチピンと似たような機能に関するデータもある。ピンタレストは昨年秋、毎日留められるピンのうち500万には記事のメタデータが含まれていると言っていた。しかし、プレイスピンがユーザーの任意で設定されるものであるのに対し、記事のメタデータはユーザーがニュースサイトから貼り付けた際に自動的に添付されるものだ。
ひとつだけ確かな点があるとすれば、それはピンタレストが決してグーグルに対抗しているわけではないということだ。ピンタレストの検索の弱点がグーグルにとっては強みであったり、逆にグーグルが苦手とする部分がピンタレストの得意分野であったりするだけの話である。共同創立者のエヴァン・シャープは次のように語っている。
「人々は、リビングルームのインテリア・コーディネートをグーグルで検索しようとは思いません。思うような結果が得られないことが分かり切っているからで、そういう類のことは検索しないものです。ところがピンタレストでは、有意義で役立つ検索結果を得ることができるのです」
ビジュアル検索を追及する中で、ピンタレストは様々な問題を解決する(少なくとも他とは違った方向から解決しようとする)検索エンジンを作り上げ、ユーザーのあらゆる要求を満たす努力を続けている。したがって、ピンタレストはグーグルほどの人気を獲得することはないかもしれないが、検索を通して世界を探検することについては、ピンタレストのアイデアの方が優れているのである。
画像提供:Kellee Gunderson
Lauren Orsini
[原文]