もしもダイエット飲料を飲み過ぎたら「満腹感を感じない餓鬼(がき)状態に陥る」

写真拡大

今年7月アメリカの研究チームが、ダイエット飲料に含まれる人工甘味料が肥満や生活習慣病を引き起こすと発表した。ダイエットなのに肥満とは、これいかにである。

もしもダイエット飲料を飲み過ぎたらどうなるのか? 人工甘味料にだまされた脳がホルモンの分泌を乱し、血糖値を上げ続ける。満腹感を感じない餓鬼(がき)状態となり、肥満への一途をたどることになりそうだ。

■だまされる脳

人間は糖と密接で、穏やかに暮らしても一日およそ260gものブドウ糖を消費する。なかでも脳は大喰いで1日120g、1時間に5gものブドウ糖が必要だ。甘いものを食べると幸せな気分になるのも、もっとも大事な器官である脳に栄養を補給し、生存の確保に喜びを感じると考えれば納得できる。

ただし糖の摂り過ぎは弊害が多く、肥満から虫歯までさまざまな病気につながる。そこで登場したのが人工甘味料で、糖としてのエネルギーを持たないので肥満や虫歯の心配なく、甘さだけが得られる画期的な甘味料だ。

厚生労働省の資料では人工甘味料は代用甘味料と呼ばれ、大きく5種類に分類されている。種類、代表的な甘味料名、ショ糖の何倍甘く感じるかを表す相対甘味度をあげると、

・合成品 … サッカリン … 400〜500倍

・合成品 … アセスルファム … 200倍

・単糖 … ぶどう糖 … 0.7倍

・オリゴ糖 … トレハルロース … 0.42倍

・糖アルコール … キシリトール … 1倍

・その他 … アスパルテーム … 100〜200倍

・その他 … スクラロース … 600倍

だ。このうちダイエット飲料に多く使われているのがアセスルファム(カリウム)、アスパルテーム(L−フェニルアラニン化合物)、スクラロースだ。肥満の心配をせずに甘さを感じられるのだから良いことづくめに思えたのだが、これらは食品添加物として扱われ、一日に摂取できる許容量が決められている。

体重1kgあたりの許容量は、順に15mg、40mg、15mgと定められ、言い換えればこれを超えると何かしらの不都合が生じることを意味しているのだ。

なかでもアスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物の原料であるアスパラギン酸とフェニルアラニンは、体内に取り込まれると脳に作用しホルモン分泌に影響を与える。血糖値をコントロールするインスリン、満腹を知らせるレプチンの分泌を促進し、血糖値の低下と満腹感を感じさせるのだ。

まさにダイエットに最適なのだが、脳がだまされているにすぎず、過剰摂取を続けるとまひ状態となり、どちらも分泌されにくくなってしまう。これは抵抗性と呼ばれ、インスリン抵抗性は血液中の糖をからだのエネルギーに変換しにくくなるため血糖値が上がり、レプチン抵抗性は満腹感を感じず過剰摂取へと導く。

つまり、人工甘味料自体が生活習慣病を招くのではなく、ホルモンが分泌されにくくなってニセ空腹状態が続き、肥満を引き起こすのが真の原因なのだ。

■甘味料でお腹が下る?

天然由来の製品が多い糖アルコールも油断できない。お腹が下りやすくなる緩下(かんげ)作用があるからだ。この甘味料はゼロカロリーには及ばないものの、虫歯の原因となる酸を作らない非うしょく性と、インスリンの分泌を刺激しないのがメリットで、ガムやキャンディ、糖尿病患者の甘味料に使われている。

代表的な甘味料名と相対甘味度、体重1kg当たりの緩下作用の目安をみると、

・ラクチトール … 0.3〜0.4倍 … 0.075g/kg

・キシリトール … 1倍 … 0.30g/kg

・トレハロース … 0.5倍 … 0.60g/kg

で、ガムやハミガキで有名なキシリトールはショ糖並だが、ラクチトールやトレハロースはアスパルテームと比べて1,000分の1程度の甘さに過ぎない。甘さ控えめなので、ついつい食べ過ぎてしまいそうだが、体重60kgの人ならキシリトールは18g、ラクチトールではたった4.5gが限界で、これ以上摂るとお腹がゆるくなりやすい。

ガムで不幸が起きたらシャレにならないので、普段から下りがちの人は出先で食べ過ぎは控えよう。

■まとめ

その名の通り「人工」の甘味料だけに、作用も反作用も大きい。カロリーゼロやダイエットの文字を盲信し、摂り過ぎないことが肝要だ。

ちなみにキシリトールは、イヌ科の動物には厳禁だ。ワンちゃんのいる家では、誤食しないよう注意していただきたい。

(関口 寿/ガリレオワークス)