パリでは最近いたるところで電子たばこを扱う店を見かける

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フランスで電子たばこの愛好家が急速に増えている。電子たばことは、円柱のタバコ型をしたステンレス製の本体に、ニコチン入りの液体カートリッジを取り付け、その液体を電気で帰化し発生した煙(蒸気)を吸引するものだ。日本では禁煙のための道具というイメージが強いが、フランスでは禁煙目的とは限らない。

世論調査ユーロバロメーターによれば、2012年において欧州連合(EU)では2300万人、フランスでは300万人が電子たばこを試したことがあり、そのうちフランスでの利用者は50万人いるそうだ。フランスにおいて電子たばこは、通常のたばこよりコストが年間で3分の1程度になるという。どのような用途が多いのか。

仏電子たばこ小売店「デーベーシーグ」によれば、たばこはやめられないものの、通常喫煙時に含まれるニコチン以外の有害物質の摂取を控えたいために電子たばこを愛用する人が多いという。さらに電子たばこでは液体を帰化させた蒸気を吸うため、通常のたばこの煙のように広がらない。ゆえに周囲に迷惑はかかりづらく、禁煙の場所でも吸える場合があり、電子たばこに乗り換える愛煙家もいるそうだ。もちろん喫煙量を下げたい利用者もいる。

日本では薬事法上、ニコチン入りのカートリッジは販売できず、購入は個人輸入に限られている。そのため海外の電子たばこ店では、ニコチン入りカートリッジを求める日本人ユーザー向けに、インターネットを通してビジネスを強化しているところもある。日本ユーザーの主な購入先は中国だが、デーベーシーグも商品購入について、メールの日本語対応を始めたそうだ。

急激に広がりつつある電子たばこに、一定の規制をかけようという動きも起きている。仏ヌーベル・オブセルバトワール誌によれば、仏医薬品安全庁(ANSM)は2011年に電子たばこを医薬品に分類すべきとの提案を出した。また欧州委員会も、電子たばこを医薬品に指定することで、電子たばこを禁煙目的の道具にとどめるべきだとしている。さらに、カートリッジにニコチンを含まないフレーバーのみの電子たばこも、喫煙のきっかけを若年層に対し広げる恐れがあるため規制は必要という意見もある。

一方で、この流れに愛煙家やメーカーは反対している。今月8日、欧州議会では電子たばこを医薬品として分類するか否かの採決が行われたが、業界の働きかけもあり否決された。医薬品に指定された場合、電子たばこの販売は薬局に限られる可能性もあったが、電子たばこの取扱いは今まで通り続けられることになった。

欧州と比べれば、日本はまだ電子たばこの認知度は高いといえないが、年々利用者は増えており、近い将来、積極的な議論も起きるはずだ。欧州の動向は、今後の日本にとって一つの考えるカギになるに違いない。
(加藤亨延)