ネタ中のえずれひろゆきさん(ソニー・ミュージックアーティスツ所属)。「地下芸人あるある」を中心にネタを披露。※気のせいか、写真まで暗くなっているような気がする

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売れれば天国、売れなければ地獄。現在、お笑い芸人の数は、吉本興業に所属している人の数だけで1300人を超えるという。そんな中、売れない芸人(地下芸人)のあるあるネタを作り続けている芸人がいる。名前は、えずれひろゆきさん(ソニー・ミュージックアーティスツ)。芸歴15年、一部では「地下お笑い界のカリスマ」と呼ばれているえずれさんに、地下芸人の「あるある」を聞いてみた。

※記事中の「あるある」は、えずれさんのネタそのものではなく、えずれさんの話を基に再構成したものです。

●お金がないから公民館を借りてライブをすると、「うるさい」と怒られる

えずれさん「やっぱり、普通の会場だと借りるのが高いから、公共施設を借りることがあるんですけど、ライブ中に大きな声を出すと公民館の人が走ってきて“うるさい!”って、怒られることがあります(泣)」
●「カラオケ館の店員は可愛いコが多い」というウワサが飛び交う

えずれさん「特に、ライブの楽屋では、こういった都市伝説的な話や、『どこのバイトがラクか』っていう話が飛び交います(笑)」

●夜のバイトに間に合わないため、ライブのエンディング前に帰ってしまう芸人がいる

えずれさん「ライブとバイトとでは、どっちが大事なのかって言いたくなりますけど(笑)」

●舞台に出て行ったら、お客さんが4人しかいなくて、逆に緊張する

えずれさん「お客さんが0人だったこともあります。誰も来ないから、飲んだり食べたりしてくつろいでいたら、お客さんがいらっしゃったことも」

●お客さんが、「ワー!」「キャー!」といっているところを見たことがない

えずれさん「落着いたお客さんが多いと、ライブが終わった後の出待ちも大人しい雰囲気になります。芸人も若くなかったりしますし(笑)」

●ライブでウケても、バイト先で怒られてヘコむ

えずれさん「『昨日のライブではあれだけ盛り上がったのに…』と思うと、バイト中に怒られた時の心の落差が激しいです」

●そもそも、交通費がないため、ライブに出られない芸人がいる

えずれさん「交通費が出ない場合もあります。出る場合は、電車の経路をわざと遠回りに報告して、100円でも多くもらおうとする芸人がいます。しかも、本人は自転車で来たりしますし(笑)。あと、ライブに参加するためにはチケットノルマを含めて数千円から1万円もとられたりすることがあって、いつもお金がないような状態です」

●コンビニのバイトの面接に行ったら、面接官も芸人だった

えずれさん「偶然、面接官が知り合いの芸人だったんです。しかも、テレビにも出てる芸人だったので、余計にビックリしてしまって(笑)。その芸人さんと1対1で面接が行われました」

結果はもちろん、採用だったとのこと。

――ちなみに、コンビニのバイト以外のバイトはしてますか?
「実は、さらに2店舗のコンビニでバイトをしてます」
――え!?なんで3店舗でバイトを?そんなにコンビニが好きなんですか!?
「理由は主に2つあります。一つは、万が一、お店が潰れてしまった時に食いっぱぐれないための対策です。コンビニって、潰れることが決まった時でも、バイトには閉店の1ヶ月前までは教えてもらえないんです。しかも、1ヶ月で次の仕事を見つけるのは至難の業なので、一つの店舗が潰れる=死の宣告のようなものなんです。だから分散してます。二つ目の理由は、1店舗だけでバイトをしていると、単独ライブが近づいてきた時に、長期(1週間)の休みがとりにくいから。3店舗に分散すれば、それぞれ週に2日くらい休むだけなので、休みもとりすいというわけです」

なるほど!こうすれば、コンビニでバイトをしている人でも食いっぱぐれがなくて済むのか。
いや、感心している場合ではない。
「ただ…、だんだんと、店長が年下になってくることもあって、年下に怒られると本当に『自分は何をやってるんだろう…』と思います」

●そもそも、えずれさんは一体、何者なのか?

えずれさんは栃木出身。高校時代は進学コースだったこともあって、勉強漬けの毎日だったという。実はU時工事と同級生。
「昔は、U字工事にネタ見せ(オーディション)で会った時に、ダメ出しをしたこともありましたが、今になって思うと、恥ずかしいです」
えずれさんは、高校卒業後に都内の大学に進学。大学を卒業する際、親に恐る恐る「芸人をやりたい」と相談したところ、「どうしてもやりたいのなら仕方がない」と言われて、今に至る。
――ちなみに、弟さんは何をされてますか?
「弟は東大を卒業しまして」
――と、と、東大!?
「現在は、某大手企業で働いてます。超エリートで頭も良いから、弟とコンビを組むことも考えました(笑)」
――えずれさんは、昔から“あるあるネタ”を?
「以前は、あるあるネタを敢えて避けていて、テロとか自殺とかをテーマにしたブラックなネタをやってました。でも、全くウケなくて…」
――うんうん。えずれさんのブラックなネタは見たことはないけど、分かるような気が…。
「ウケないと体の具合が悪くなって、寝込んでしまうこともあって…。3分間、笑いが1回も起こらず、そのまま夜勤のバイトに行った日なんかは地獄ですよ」
――はぁ…。
「やっぱり、ウケないダメだな〜と思って、色々な人に受け入れてもらえるようなネタを作るようにしました。若い頃だったら、ウケなくても自分がやりたいことをやっていければいいと思ってましたが、食えないと話にならないんです。それに、親が元気なうちにテレビに出ているところを見せてあげたいし…」

う、う〜〜〜。
えずれさんは現在35歳。
聞いてるこっちも、涙で明日が見えません!(取材・文/やきそばかおる)

●えずれひろゆきさんのブログ
http://ameblo.jp/ezure-hiroyuki/

第12回 えずれひろゆき単独ライブ『ezure.vol.12』
2013年10月24日(木)
新宿バイタス  19時開場19時30分開演
前売り1500円当日1700円

●ソニー・ミュージック・アーティスト(えずれさんの所属事務所)
「Neet PROJECT」
http://neet-project.com/