『かわいい缶の本』Yuzuko(著)/玄光社

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旅行先でお土産を選ぶとき、“日持ちするお菓子で、小分けに袋に入っているものがいいな”などと考えながらお店の中をうろうろして回る。そんなとき、お菓子そのものよりも、それが入っている缶がかわいくて、ついそちらを手にとってしまうことはないだろうか。そして、その缶が欲しくて自分用にお土産を買ってしまったことはないだろうか。

私はよく買ってしまうのだが、それほど、お菓子の入っている缶はかわいい物やおしゃれな物が多い。中身がなくなったあとも、小物を入れて部屋に飾ってしまうのだ。

そんな、ついつい欲しくなるかわいい缶を集めた本、その名も「かわいい缶の本」が出版された。洋菓子缶、和菓子缶、飴缶といったお菓子の種類ごとに紹介されていて、不二家のミルキーや鳩サブレーなど昔からある馴染み深いものから、東京駅舎復元記念の限定ものまで100個の缶が紹介されている。

“HIGASHIYAのおこし缶は白色をベースにしたレトロなデザインで、メイク道具やアクセサリーを入れてみたい!”“一隆堂のおせんべいが入ったタヌキ缶は3つぐらい並べて飾って、その中には飴とかお茶の葉とかを入れておきたい!”と、ページをめくるたびに妄想が始まってしまう。

そのほかにも素敵な缶ばかりで、本書に掲載されているショップデータでお取り寄せできないか、逐一確認してしまった。

本書を作った人は本当に缶が好きなんだろうなぁと思っていたところ、やはり著者であるイラストレーターのYuzukoさんは、スーパーやデパ地下などの食料品・お菓子売り場へ行くと必ず缶入り商品があるかチェックしてしまうほどの大の缶好きだという。Yuzukoさんに缶の魅力や『かわいい缶の本』についてお話を伺ってみた。

――まず、缶を集めるようになったきっかけを教えてください。
「もともと、缶だけではなく、包装紙や紙袋、箱といったパッケージにまつわるものが好きでした。その中にもちろん缶も含まれていまして、はじめは単純に“かわいい”“素敵だな”という気持ちでただ集めて保管していました。次第にそのサイズに合った身のまわりのものを入れるようになり、活用するようになってからさらに缶に対する愛情が深くなったような気がします」

――今、どのくらい缶をお持ちなのでしょうか?
「現在自宅にあるのは30缶ほどと、そんなに多くはありません。でも、どれもなるべく暮らしの中で使いながら取っておくようにしています」

――レトロ、和物、動物のイラストなど、好きなデザインはありますか?
「パキッとした原色よりも、ちょっとくすんだ色、落ち着いた色みの缶が好きです。また、絵柄や文字、模様などがノスタルジックなもの、逆に突き抜けて個性的なものにもぐっときます。……好みが多すぎて選びきれません!」

――『かわいい缶の本』では、缶の写真だけでなく、サイズや用途、ショップ情報など実用的なデータも載せていますね。
「眺めてかわいいだけの本ではなく、実用的な缶の本にするために必要な要素はなにか、ということを考えて、内容・構成を決めました。缶の中でも“お菓子缶”と“コーヒー(豆)やお茶(の茶葉などが入った)缶”に絞り、1度買うと中身をおいしく味わえて、さらに食べ終えたあとにも違う用途で使えるというふたつの楽しみ・魅力をこの本の軸にしました。サイズを入れたのは、“中にあんなものを入れられる”“こんなふうに使えそう”と、読者の方に想像してもらえるきっかけになると思ったからです」

やはりYuzukoさんは缶が好きなのだなぁとお話を伺い、あらためて感じた。

また、『かわいい缶の本』には、本書の製作スタッフが大切にしているお宝缶も紹介されていた。家族からのお土産や、雨の日に並んで手に入れた限定缶、気がついたら家にあったものなどがあり、缶には思い出も詰まっているんだなぁと思った。

Yuzukoさんに缶の魅力を聞いてみたところ、「おいしく味わったあとに活用できる2度の楽しみがあること。缶そのものについていえば、ちょっとへこんだり傷ついたり色があせたり、時間がたったときの変化も魅力的なところ」だと答えてくれた。手に入れたときと、それを使っているとき。ふたつの思い出ができるのも、缶を使う醍醐味かもしれない。

本書を参考に、自分のお気に入りの缶をぜひ見つけていただきたい。
(上村逸美/boox)