W杯の前哨戦、コンフェデ杯は地元ブラジル代表の優勝で幕を閉じた。

実は今大会、ブラジルの前評判は決して高くなかった。メンバーは若手が多く、昨年11月の監督交代以降の親善試合でも思うような結果を出せず、ブラジル国内では批判の声が多かったんだ。

でも、フタを開けてみれば、スコラリ監督が守備の堅いチームをしっかりとつくり上げ、絶対に勝たなければいけないというプレッシャーをポジティブなエネルギーに変えた。試合を重ねるごとに強さを増し、決勝では前回W杯王者のスペインを寄せつけず、3−0で完勝した。

不調だといわれていたエースのネイマールも5試合4得点でMVPを獲得。大きな仕事をした。消えている時間帯もあるけど、チャンスになったときの爆発力がすごい。得点以外にもアシスト、さらに相手DFを自分にひきつける。まさに攻撃の中心。大きなプレッシャーがかかるなか、見事に国民の期待に応えた。来季新加入するバルセロナで、メッシとどんなプレーを見せてくれるのか、今から楽しみだよ。

そして、ネイマールとともにブラジルの快進撃を支えたのが守備陣だ。ボランチのパウリーニョとルイス・グスタボ、センターバックのチアゴ・シウバとダビド・ルイス、この4人は本当に強烈だった。なかでも、ボランチのふたりは体が強くて、一対一の場面で絶対に当たり負けしない、センターバックのフィジカルを持っている。また、彼らはボールを奪うだけでなく、ゲームメイクもできる。サイドバックの選手が攻め上がったときのカバーリングもきっちりできる。ブラジル代表はいつの時代も攻撃の選手ばかり注目されるけど、あのボランチコンビは別格。来年のW杯本番でもカギを握る存在になるだろう。


いずれにしても、コンフェデ杯優勝という結果は若いチームにとって大きな自信になった。スコラリ監督も周囲の雑音が減って、仕事がしやすくなるはず。W杯を勝つ難しさはコンフェデ杯とは全然違うけど、有力な優勝候補に挙げたいね。

準優勝のスペインは華麗なパスサッカーが健在で、日程的に厳しく、モチベーションも必ずしも100パーセントではないなか、決勝まで勝ち上がったのはさすがだった。

ただ、決勝のブラジル戦では、チームとしてのピークを過ぎ、ひとつのサイクルが終わりに近づいているのかなと感じさせられた。

今までなら、攻撃時に相手に囲まれてもダイレクトパスで簡単に打開していたのに、それができない。ミスをしてボールを奪われる。ボールをキープしていても横パスやバックパスばかり。イニエスタはよく頑張っていたけど、彼ひとりだけでは苦しい。ほかの中心選手は3年前の南アフリカW杯時に比べ、インパクトが弱くなっている。特に中盤でイニエスタとコンビを組むシャビのデキが悪かったね。今のままではW杯連覇は難しいだろう。

最後に、大会の盛り上がりについて。ブラジル国民の盛り上がり方は、僕の予想以上だった。何しろタヒチの試合にもあんなにお客さんがたくさん入るなんて、今までなら考えられなかった。W杯を自国で開催できる喜びが伝わってきたね。来年のW杯本番ががぜん楽しみになってきたし、僕も来年は現地で試合を観ようと思うよ。

(構成/渡辺達也)