音楽聞き放題サービス「レコチョクBest」スタート。開発スタッフに聞いた″危機感″と″こだわり″

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月額定額制の音楽聞き放題サービス「レコチョクBest」が3月4日にスタートした。月額980円(apple課金は1000円)で、J-POPを中心とした100万曲以上がいつでもどこでも聞き放題となる。3キャリアに対応しており、Android/iPhoneともにアプリのダウンロードは無料だ。

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聞き放題のストリーミングサービスは、海外では「Spotify」、国内では「LISMO unlimited」などがあるが、邦楽を中心とした聞き放題のサービスは「レコチョクBest」が初めて。レコチョクはこれまで「着うた」「着うたフル」を広く展開し、どのデバイスでも音楽を「買える」サービスとして親しまれてきた。そんなレコチョクが今、定額制の聞き放題のサービスを開発した理由とは何か。開発の経緯やサービスの特徴、ユーザーにとってのメリットなどを、開発者の鬼頭武也さん、安部貴之さん、川人健司さんに聞いた。

鬼頭武也さん
きとうたけや○マーケティング企画部 担当部長 兼マーケティング企画部 サービス企画グループ長 兼社長室 担当部長

価格設定やスペックといった基本的な部分から、具体的なサービスの立案、投入のタイミングの調整、開発全体のディレクションも、レコード会社との交渉調整を担当。

安部貴之
あべたかゆき○商品編成部 編成グループ アシスタントマネージャー

サービス企画という立ち位置から、UIを含めた編成を担当。また、レコード会社との交渉も、楽曲をどう展開していくかなどの運営部分も担う。

川人健司
かわひとけんじ○マーケティング企画部 サービス企画グループ アシスタントマネージャー

プロジェクトの管理、マネジメントを担当し。3人で企画・検討したサービスを、どのようにして開発の工程を落としていくかを考えるのが大きな役割。

鬼頭: 「スマホに替えてから、音楽が聞きにくくなった」という声を聞きます。いわゆるガラケーよりキャリア決済が簡単ではない、というのが理由のひとつ。また、日本レコード協会の調査でも、音楽を有料で聞かなくなった人が増えたという統計が出ています。私たちはその事実を受け止めつつ、音楽を再び活性化するためのステップをつくりたかったんです。

安部: 買うほどではないけど、まずは聞いてみたい楽曲ってありますよね。レコチョクBestは、そんなニーズに応えることのできるサービスなんです。

楽曲はアーティスト名/アルバム名/曲名で検索がかけられるほかに、「アーティストBest」「テーマ別Best」から選ぶことも可能だ。アーティストBestはその名の通り、ロックからポップスまで幅広いジャンルのアーティストをレコメンド。テーマ別Bestでは、「ジョギングソング」「泣けるうた」など、さまざまなテーマのプレイリストが用意されている。

鬼頭: 海外サービスとの違いは、音楽を聞く際の“文脈”を提案していること。例えば、Spotifyは「さあどうぞ、自由に検索してください」という形式なので、何を聞くべきか迷ってしまうこともあるでしょう。そこでレコチョクBestでは、当社が長年蓄積してきた「日本人のお客様がどういう文脈で音楽を聞いてきたか」というデータを元に、馴染みのある形で並べたプレイリストを用意しています。

安部: レコチョクBestのコンセプトは「思い出が再生する」というもので、これはプレイリストを考える際も意識していますね。プレイリストは、懐かしさを喚起させる楽曲に触れると同時に、それまで知らなかったアーティストにも出会ってほしいという意図があります。また、ぜひ試してほしいのが「ダイジェスト再生」。プレイリストやアーティストごとにダイジェスト再生のボタンを押すと、一覧に入っている楽曲がいいところどりで再生されていきます。聞いたことのないアルバムや、名前だけ知っているアーティストで試していただいて、「この曲だけ知っているな」という風に、思い出を掘り起こしてもらいたいですね。

川人: 「関連アーティスト」を表示しているのもポイントですね。そのアーティストとコラボレーションをしている、親族であるなどの繋がりだけではなく、「メガネをかけている」という括りで紹介されたりもするんです (笑)。こういった繋がりで、聞いたことのない楽曲に触れてほしいですね。

鬼頭: 海外には「ジャンル」というものが根付いていますが、日本では「J-POP」という大きな括りの中に、いろんなものがありますよね。ぜんぜんジャンルが違う楽曲でも、同じクールにやっていたドラマの主題歌だと聞きたくなる。どんな繋がりだと聞きたくなるかを考えながら、プレイリストを編成しています。
今後の展望としては、お客様がいつどのくらい聞いたかのデータを元に、発売当時は話題にならなかったものの長く愛されている曲たちを「ロングヒットチャート」として表示できるようにする、なども考えています。

レコチョクBestは、単に音楽を「聞く」だけではなく、「楽しむ」ことを目的とするサービスだ。そこで気になるのはSNSとの連動。現在は自分の聞いている楽曲をtwitter、facebook、mixiに投稿する機能が用意されているが、今後、SNSとの連携はどのように進化していくのか?

鬼頭: SNSとの連携はとても重要ですが、ありがた迷惑のサービスにならないように慎重に検討しています。例えば、無理やりfacebookと連携してプレイリストを公開させる、なんてことはしません。日本のSNSユーザーのニーズに合ったサービスを構想したいと思います。

川人: 自分が聞いた曲を、自分の知っている人に知ってもらいたい。または、私の知っているあの人もこの曲を聞いている――という文脈の繋がりを意識して機能を追加していきたいと考えています。twitterなどの繋がりを前提としたものですね。「年齢と性別は同じだけど、どこの誰かが分からない人」ではなく、具体的に誰が聞いているのかを思い浮かぶ機能をつけていきたい。それが日本的でハイコンテキストなサービスだと思うんです。

レコチョクBestの特徴のひとつは音質の良さだ。ストリーミングする際に128 kbpsと320 kbpsのいずれかを選ぶことができる。320 kbpsといえば、iTunes storeで購入した楽曲(256kbps)よりも高く、現行のストリーミングサービスでは最高レベルにある。鬼頭さんによると、「320kbpsだと特にハイハット等の高い音が格段にクリアに聞こえる」という。なぜ、ここまでの高音質にこだわったのだろうか。

安部: 単曲販売でも128kbpsと320kbpsを選択して購入できるので、聞き放題でも音質をキープしたいという思いがあったんです。

鬼頭: 当社は着うたのイメージが強いために、ネットでは「どうせ、音質が悪いんでしょ?」という意見が多くて(笑)。そうではないことをアピールしていきたいし、音が悪いことで「音楽って、なんだかな」と思われたくなかったんです。

川人: ストリーミングの性質を考えると、128kbpsのほうが合っているのではとも考えたのですが、こだわって320kbpsにしました。いずれ日本進出してくる海外サービスに負けたくない、という意地もあって(笑)。

海外では広まっているストリーミングサービスだが、日本では音楽ファン以外の認知度はまだまだ低い。音楽を聞く新しいツールとして普及させるために、レコチョクBestは何を仕掛けるのだろうか。

鬼頭: 聞き放題サービスに対して「どう楽しめばいいか分からない」方は多いと思うんです。今後はユーザーとコミュニケーションをとりながら、サービスの活用法を提案していきたいですね。友だちと盛り上がれる機能をつけることも重要だと考えています。

川人: 「聞きたい曲が出てくる」という快適さを知ってもらえれば、自然と広がっていくと思うんです。ですので、さらに使いやすいサービスにしていくのが課題ですね。

安部: アーティストさんとの交渉をどんどん進め、レコチョクBestに登場するタイミングで盛り上げていきたいですね。また、ユーザーの属性や趣向に合いそうな楽曲をレコメンドするなど、1人ひとりに合わせた機能も増やしていきたいと思っています。

ストリーミングサービスはユーザーにとって、好きな楽曲・アーティストが増えるなど、音楽生活を豊かにしてくれるものとなるはずだ。また、しばらく音楽から離れていた元・音楽ファンが「思い出を再生する」ことで、多くの楽曲に耳を傾けていた時期を思い出し、音楽への思いが再燃することもあるだろう。リスナーにとって、音楽の聞き方・楽しみ方が変化することは間違いないが、ビジネスの観点ではどうだろうか。

鬼頭: ストリーミングサービスとアラカルト(単曲)販売を両方やっているのは、世界でもわれわれしかいません。アーティスト・レコード会社の方々には、レコチョクBestとアラカルト販売を組み合わせて販売戦略を練っていただければ嬉しいですね。Bestで聞いていただき、アラカルトで購入する――という流れをつくるのもひとつだと思います。われわれの使命はアーティストさんに利益を還元することなので、どうすればお客さんにワクワクしてお金を払っていただけるかチャレンジしていきたいですね。

聞き方のみならず、ゆくゆくは買い方にも変化を及ぼすであろうレコチョクBest。音楽を楽しむ新しいツールとして、その存在感を増していきそうだ。

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