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 注・GKはアダン→カシージャスです。

欧州で行われているカップ戦は、リーグ戦に出場していない選手が出場機会を得るものだ、という先入観があった。しかし、その先入観はこのスタメンを眺めれば分かる通り、あっさりと崩れ去るのであった。思い出せば、リーガはすでにバルセロナが首位を独走している。ゆえに、この両チームがいわゆるカップ戦に照準を合わせたとしても、不思議はない。というわけで、カップ戦だけど、絶対に負けられない戦いが始まる。

 ■バルベルデの反抗

 この試合はレアル・マドリーが2-0で勝利した。しかし、試合内容はバレンシアに分があった、というよりも、完璧にバレンシアの狙いが機能していた。量産された決定機はことごとくジェナスが外し、ソルダードが裏へ飛び出せば、明らかに不安定な副審の犠牲になるという展開であった。

 バレンシアの狙いはこのスペースであった。

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 懐かしのクリロナとマルセロの間である。レアル・マドリーの守備は試合の重要度によってかなり気合が異なる。クラシコやCLの負けられない試合では踏ん張りが聞くが、その他の試合ではかなりぼやけた守備になることが多い。

 もちろん、わざとSHに位置する選手が守備をしないことで、カウンターに備えるという狙いもある。ただし、レアル・マドリーの場合、SHが守備をしないけど、それを利用した守備プランが準備されているわけではないので、外から見ると、普通にフルボッコにされているように見える。そんな肉を切らせて骨を断つレアル・マドリーである。

 バレンシアはこの位置に、クリロナと同郷のジョアン・ペレイラを投入する。同郷っても同じ代表という意味しかないが。

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 ジョアン・ペレイラとピアッティのコンビネーションでサイドを切り裂くかと思いきや、ピアッティは相手のDFとMFの間にポジションを移し、味方からボールを受ける行動を繰り返していた。左利きのピアッティを右サイドで起用した理由は中央に侵入しやすくするためであり、こういった動きを狙ったものだったのだろう。

 なお、こんな状況に置かれたマルセロはジェスチャーでどうしたらいいねんとアピールしていた。しかし、そのアピールがクリロナに届くことはない。このようになると、モドリッチやシャビ・アロンソがカバーリングに来てくれる。

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 レアル・マドリーの守備はバレンシアの中盤に噛みあうようにセットされていた。エジルに比べると、守備で走れるモドリッチとケディラが中央に居座れば、なかなか強烈である。しかし、この走れるコンビは時には相手のCBまで追い回す積極性をみせる。もちろん、その積極性は可能性の薄い博打のようなものなので、ハイリスク・ノーリターンとなる。

 さらに、前述のマルセロのカバーリングである。さらにさらに、ジョナスも中央に侵入してくるので、レアル・マドリーは徐々に自陣に撤退するしか守る術がなくなっていく。こうしてバレンシアの攻撃の前にレアル・マドリーは上手く守備を形成することができなくなっていった。

 このバレンシアの攻撃を支えていたのがパレホである。何気にショートカウンターの起点になったり、相手に与えた先制点のきっかけになったりしたパレホだが、彼がかなり無理をしてくれるので、バレンシアは攻撃を組み立てることに成功する。DFラインに降りるタイミングや縦パスを入れる技術はちょっと異常であった。

 その他で気になったのがバレンシアのオフ・ザ・ボールの動きである。例えば、ソルダードがボールを受けに下がるとする。

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 こういったスペースメイクに対する反応は機械的に行われていた。特にピアッティの飛び出しが多かった。

 前述のピアッティが相手の隙間でボールを受けるのも似たような仕組みである。ピアッティのマークをしているマルセロにジョアン・ペレイラをぶつける。ピアッティのマークをしている選手がいなくなるので、中央に進出できる。シャビ・アロンソたちがずれてくれば、中盤の選手たちが空くといったようにドミノ倒しのようにどんどん崩れていく。

 というわけで、レアル・マドリーを見事に攻略してくれたバレンシアだが、これも前述のように決定機が嘘のように入らない。しかも、カシージャスがやっぱりスーパーだったというものではなく、シュートが枠に飛ばなかったり、真正面だったりと、この状況をより悲しくさせるものであった。しかも、全部ジョナス。

 そしてセカンドレグがあるからだろうが交代はちょっと物足りなかった。イエローカードを貰った選手と同じポジションの選手を交代。退場が怖かったのは分かるから、まあしょうがない。でも、バルデスの投入が終了間際ではちょっと悲しい。セカンドレグに奇策があることを期待といいたいところであるが、それは難しいかな。

 こういった試合でも、ものにしてしまうのがレアル・マドリーらしさなんだろう。うん、本当にそう思う。そういう意味では非常にらしい試合であったが、後方の負担、というよりもMFの負担の多さをどのように解決するかを考えないと、疲労困憊でCLの準決勝くらいで痛い目に合いそうな気もする。その前に照準が国王杯準決勝のクラシコかもしれないけど。

 ■独り言

 ビジャレアルを崩壊させたことで、ぼろぼろの評判のバルベルデ。しかし、初戦とこの試合の印象から考えると、かなりしっかりチームを作り上げてきた印象。シメオネのときもそうだったけど、良い監督は本当に時間がかからない。あっさりとチームを創りあげてしまう。

 味方をフリーにするための動き、相手の狙いどころ、選手配置といったプランがしっかりできていて、それが目の前の選手にハマっているのだから、ちょっとおもしろくなりそうなバレンシアである。CLでも台風の目になるかもしれない。まじで。