【インタビュー】声優・緒方恵美 - 蔵馬から碇シンジまで、そして今を語る

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 2012年で声優生活20周年を迎えた緒方恵美。彼女の魅力について集めたマイナビニュースのアンケート(関連リンク参照)でも「中性的な声が魅力」だとして絶大な人気を誇る声優だ。彼女がこれまでどのようにキャラクターを演じてきたのか、またこれからの活動についてお話をうかがった。



未知の世界へ飛び込んだ「蔵馬」役



――まずは、「緒方さんと言えばどのキャラクターを思い浮かびますか?」というアンケートで1位になった『幽☆遊☆白書』蔵馬(くらま)について、何か印象深い思い出がありましたら教えて下さい。



緒方:「私はもともと舞台をやっていた人間で、アニメをよくわからないまま業界に来てしまった最初の役が蔵馬だったので、デビュー作でもあり、思い出に残ることはたくさんあります。でも、まずは右も左もわからなくてどうすればいいのか、とまどった印象のほうが強いですね。オーディションも、実は勘違いから入りました」



――オーディションでの勘違いとは、具体的にどのようなことですか?



緒方:「オーディションの応募要項に"宝塚の男役のような華のある感じの中性的な役" だと書いてあったんですね。その意味を取り違え、当時の宝塚の男役に多かった独特の喋(しゃべ)り方をイメージして演じたんです。わざとキーを低くして抑揚たっぷりな雰囲気で。でもオーディションに受かった決め手は、宝塚っぽい口調ではなく、自己紹介の時の地の声でした。この声を聞いて"探していた蔵馬だ!" と思って私に決めて下さったそうです」



――女性の声優さんが高校生以上の男性キャラを演じるというのは、初めてのことだったようですね。



緒方:「そうですね。これまでに高校生の男性キャラを女性が演じたという前例がなかったようで、しかもド新人だったので、迷いや葛藤もありました。例えば舞台の上で演じるなら、しぐさやほかの要素でも男性的な部分をたくさん表現できるんですが、やっぱり声帯そのものが男性と女性では違うので、声だけでってなると、違和感が出てしまうんです」



――その違和感をどのように克服されたのでしょうか?



緒方:「たまたまなんですけど、声帯を調べていただいたら、私の声帯は黒人の声帯並に長いということがわかったんです。バイオリンもそうですが弦は長いほど低音が響きますよね。でも細く短くピンと張ると高音が出る。声帯として考えると鍛えれば高音は出るんですけど、低音は生まれ持った部分が大きい。私の場合は、運良く恵まれた声帯を生まれ持ってこれたので、今からとにかく腹筋周りを鍛えて、それを支える筋力が男性並みにつけられれば、ナチュラルな男性の声が出せるかもしれないという結論になりました。蔵馬はそうやって、肉体トレーニングをして作りあげたキャラクターなんです。それに加え、当時は精神的にもだいぶ鍛えられたので、今声優として何とか生活ができているのかと(笑)。そういう意味でも、蔵馬という役に出会えたことを非常に感謝しています」



のびのびと演じることができた「セーラーウラヌス」役



――アンケートで第3位になった『美少女戦士セーラームーン』シリーズのセーラーウラヌスを演じたときの思い出をお聞かせ下さい。



緒方:「蔵馬に比べるとウラヌスはやりやすかったです。男性的な魂を持っている女性ということなので、自分とも近いというか......。当時は"蔵馬よりウラヌスの声の方が低いのでは?" とよく言われたんですけど、私自身は特に低くしようという意識はしていませんでした。周りのキャストが、男性が多いか女性が多いかによって聞こえ方が違ってくるんだと思います」



――そのほかにやりやすかったと思うことはありますか?