20日から民主党は、社会保障と税の一体改革大綱を年内にまとめるための議論に入る。だが野党だけでなく党内でも消費税増税に対する反対の声は強く、「不退転の決意」で臨む野田佳彦首相と対立することは避けられない。

 日々高まる、将来の社会保障に対する不安。今まで何気なく見ていた給与明細だが、はたしてどれほどの額をこれから支払い続けていくことになるのか。人事労務コンサルティング会社「アイウェーブ」の代表取締役で社会保険労務士の庄司英尚氏に、もし今の社会保障制度が続いた場合、予想される社会保険料の試算をお願いした。

 試算のベースにしたのは、中小企業に勤める入社3年目の25歳サラリーマン(月収25万円、ボーナス25万円×2回、年収350万円)で、保険料は現行あるいはすでに決まっている引き上げ率を採用した。

■2011年、25歳、年収350万円
健康保険料165,900円+厚生年金保険料281,015円=年間社会保険料合計446,915円

■2020年、34歳、年収は420万円
健康保険料210,000円+厚生年金保険料381,822円=同591,822円

■2030年、44歳、年収570万円
健康保険料285,000円+厚生年金保険料518,187円+40歳から支払いが始まる介護保険料43,035円=同846,222円

■2040年、54歳、年収650万円
健康保険料325,000円+介護保険料49,075円+厚生年金保険料590,915円=同964,990円

 以上で計算すると、54歳までの今後29年間で支払う社会保険料の累計は2,154万7604円ということになる。2,000万円以上支払っていても、年金の受給まではまだあと10年以上。なんとしても長生きしないと損だが、実はこの試算は“大甘”。あくまで「現状維持」が前提となっているからだ。

「日本国の社会保障にかかる費用は右肩上がりで上昇中です。社会保障給付費は2011年度の108兆円から、2025年には151兆円に膨らむと予測されています。となると当然、今よりも保険料をアップさせなければならないし、それだけでは足りず増税も必要になると思われます」(庄司氏)

 国立社会保障・人口問題研究所によると、2010年時点で2:8だった「65歳以上人口:その他世代人口」は、2050年には4:6になると予測されている。つまり、現在は4人でひとりの老後を支えているが、40年後には3人でふたりの老後を支えなくてはならなくなる。年金・医療・介護などの社会保障費は今後増え続けるが、その財源を支える人口は減る一方なのだ。

 加えて年金の受給年齢引き上げも議論される現在、支払い続けた保険料が年金として受け取れる保証はない。もちろん、年金制度は国民の相互扶助で成り立っているのは誰もが理解している。だが、少子高齢化という根本的な問題が解決しない限り、若ければ若いほど不幸な時代になるのは避けられない。社会保障と税の一体改革といっても、結局のところ財布は一緒だ。

(取材/頓所直人、木場隆仁、中島大輔)

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