展示会では、全国から集まった空の写真の他、奄美大島で見せた子どもたちの笑顔の写真や、子どもたち自身が撮影した写真も展示される。

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「全国各地の皆さんにお願いがあります。9月11日(日)、震災から半年の日に空の写真を撮って下さい」

8月末、ひとりの写真家がブログでこう呼びかけた。集まった写真はつなぎ合わせて1枚の写真にし、南相馬市の子どもたちにプレゼントすると言う。この呼びかけはFacebook、mixi、twitterなどを通じて口コミで広がり、当日、全国から寄せられた写真はなんと約2,000枚。全国の人々が同じ日に見上げた空が一枚の写真としてつながり、10月25日(火)より開催される展示会でついにお披露目となる。

このプロジェクトを主催しているのは、写真家の大杉隼平さん。震災後、大杉さんは福島県や宮城県に救援物資を届けると共に撮影活動を行い、6月には現地の様子を伝える写真展を開催した。その収益金をご自身が監事を務めるNPO法人奄美大島自然体験学校に義援金として寄付し、8月には福島県南相馬市の子どもたちを奄美大島に無料招待。子どもたちは、放射能を気にすることなく思いっきり外で遊び、渡されたカメラで自由に写真を撮ったり、絵を描いたりしながら、約1週間の時を過ごした。

子どもたちとの時間を過ごした後、その場で撮影された写真、願いを込めた絵や短冊、一生懸命作ったアクセサリーなどを展示することを考えていた大杉さんは、ふと、空の写真を集めることを思いついた。

「南相馬市の子ども達が『空は綺麗だね。放射能を気にしなくていいんだよね』と言った時に、どうにか空を、広い空を見せてあげたい、プレゼントしたいと思いました。震災から半年の日、9月11日の空。子ども達と繋がっている、繋がっていれるように」

当日、次々に寄せられる写真の中には、全47都道府県の他、海外からのものもあったと言う。

大杉さんはさっそくこの膨大な数の写真をつなぎ合わせる作業に着手。それと同時に、仲間と共に始めたのが、南相馬市の小学生を講師に迎えたミサンガ作りだ。子どもたちの願いを知ってもらいたいという思いから、展示会の来場者にミサンガを配布することを決めた。すると、この活動に共感した全国の人々からも次々と手編みのミサンガが届けられ、展示会を約1週間後に控えた10月18日現在、その数は1,500本を超えていると言う。会場ですべての来場者に無料配布されるミサンガは、こうしてつながった全国の誰かの手によって編まれたものなのだ。

展示会「my dear smile -笑顔のつづき-」は、10月25日(火)〜10月30日(日)の期間、東京・下北沢のShimokita Art Spaceにて開催される。震災を機につながった大杉さんと子どもたち、そして全国の人々の共同作業によって作られた作品の数々は、人々の心にどのように届くのだろうか。お近くの方はぜひ会場に足を運んで、その一つひとつに込められた思いを感じてみてほしい。

そして、残念ながら展示会に行けない人にもプロジェクトへの参加方法はある。現在、大杉さんは「1枚につなげた写真を子どもたちに届ける」という最終的な目標のため、プリント代、運搬費用などの資金をウェブサイト「CAMPFIRE」にて募集中だ。500円から支援が可能で気軽に参加できるが、支援金の額に応じて、限定公開ブログの閲覧権利、ポストカードやミサンガのプレゼントなども用意されている。単なる寄付ではなく、参加している実感を得ることができるこの仕組みも、ぜひ活用してみてください。
(池田美砂子)