左が手描き、右がプリントのもの。手描きは裏地にまで模様が現れるが、プリントされたものには現れない。

写真拡大

高級品として扱われる和服。じつは流通の過程で色々な偽装がおこなわれているという。早速調査をして着物業界の関係者に聞き込むと、様々な裏の顔が見えてきた。実際、着物の価格はどうやって決まるのか?
「値段は店舗によってピンキリです。卸した商品にどれだけ上乗せするかで決まります。店によっては同じ商品でも10万円単位で値段が変わることもありますよ」(業界関係者)

販売価格がピンキリということは、本来は安い商品を高級品として扱う場合もあるのだろうか。
「価格的に1万円が妥当な品物を50万円で売る業者もあります。例えば、着物の柄も手描きのものとプリンターで印刷されたものでは、価格が全然違います。もちろん業者はそれを見分けられますが、知識の無い消費者は騙される場合が多い。そこにつけ込んでプリントされたものを手描きとして扱います。需要はあるので、もちろん問屋も承知の上で小売店に卸します。また、『この着物は草木染めですよ』とうたわれているものでも、実際染めているのは2、3本の糸だけで、あとは合成染料を使っている場合もあります。確かに一部は草木染めだけれど、これでは騙しているのと同じです」(同)

これらのケースを聞くと、誰しも着物の購入を躊躇してしまいそうだ。消費者は一体何に気をつければ良いのだろうか? 
「このようなことが一部でおこなわれている以上、消費者も正しい見分け方を勉強するしかありません。しかしそれでも不安な場合、値段ではデパートが良心的な範囲内での価格設定をしています。また、わざわざ偽物を卸して顧客につかませることもしません」(同)

安い商品を高額で買わされて、将来何かの機会に発覚したら、それこそやるせない。やはり何事も盲目ではだめなのだ。
「ちなみに、着物を将来換金して財産にすることを勧めるお店がありますが、いくら高級品でも普通の着物は購入した際の金額と同じ換金価値はありませんし、値打ちもありません。また、機械織りと手織りでは値段が異なる為、機械織りの着物を手織りと偽る業者もあります」(同)

数々の偽造がおこなわれているケースもある和服事情。業界内で情報を持っている人間だけが得をして、消費者にしわ寄せがいくようではいずれ業界全体の信用に関わってくる。取材を受けてくれた関係者も「このようなケースを少しでも変えていきたい」と言っていた。今後、購入の際は特に慎重を期したい。
(加藤亨延)