20分過ぎから決定的なシーンを3度作り出したパラグアイは、それでもスコアを動かすことができなかった。31分には長友に左サイドを突かれ、日本にCKを与えてしまう。ゲームの主導権は、パラグアイから日本へ移りつつあった。

ここで、彼らは何を考えたのか。意図的にペースダウンをしていくのである。最終ラインと中盤でボールを動かし、GKへの二度のバックパスを含めて11本のパスをつないだ。32分のことだった。

マイボールのつなぎでGKへのバックパスが連続として二度もあったのは、90分のなかでこの一度だけである。ヘラルド・マルティーノ監督が、指示を出したわけではない。一人ひとりが即興で判断を下し、リズムを変えようとしたのだ。

香川と松井のドリブルがアクセントとなった日本のパスサッカーは、南アフリカW杯に比べると相手ゴールへ突き進む迫力があり、スピード感にも満ちていた。ホームチームらしい意欲を見せた、と言うことはできる。

その一方で、僕はゲーム運びが一本調子だった印象を抱く。攻める。ボールを失う。守る。ボールを奪い返す。また攻める──落ち着く時間帯がないのだ。交代ワクが3人の真剣勝負であれば、チーム全体の活動量が目に見えて低下していたかもしれない。終盤の展開は、おそらく変わっていたと思う。

流れを失った際の工夫も足りない。パラグアイが20分以降に決定機を連続してつかんだのも、きっかけを与えたのは日本だったのである。
<つづく>

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