担当M(以下M):日本代表監督がなかなか決まらず、小倉純二日本サッカー協会会長もやきもきしているんじゃないかと思うのですが。

ラモス(以下R):就任早々大変だと思いますね。僕は今回の会長交代について事前に何も知らなくてびっくりしましたし、小倉会長ご本人にとってもものすごく急な話だったのじゃないでしょうか。それ以来ずっとお忙しそうですから、体調を心配しています。それにしても何かはっきりしないプロセスの中での交代でした。僕は犬飼前会長の前向きな姿勢も好きだったんですよ。だから、日本サッカー協会にはガラス張りの中で会長を選んでほしいですね。

M:ラモスさんは小倉会長とは昔からのお知り合いだと思うのですが。

R:一番の思い出は、僕がオフト監督ともめそうになったとき、間に入っていただいたということですね。

M:オフト監督ともめたとき、仲裁役だったのは柱谷哲二さんだったのじゃないですか?

R:ピッチの中でのことはそうでした。でも、オフト監督との間にはチームができ上がる前にも誤解が生じてたんです。オフト監督が就任したあとに、僕は日本人にはヨーロッパよりも南米の監督のほうがいいんじゃないか、と発言したことがありました。でもそれは決してオフト監督を否定したわけじゃなくて、南米の監督のほうが日本人を理解しやすいんじゃないかというだけの意見だったんです。けれど、その言葉をマスコミに取り上げられてコトが大きくなってしまいました。そこに登場したのが小倉会長でした。

M:小倉会長って穏やかそうな方ですが。

R:そのときも穏やかでしたよ。ユベントスとの試合の前に呼ばれて、僕の話もじっくり聞いていただいたし、オフト監督の話もちゃんとお聞きになっていたようでした。僕の発言に他意がなかったのも分かってもらえたと思います。それでお互いの話を聞いて、小倉会長はどっちにも付かなかった。どっちが正しくてどちらが間違っているという話はなさいませんでした。

そしてもっと別の観点、そのときの日本代表には何が必要か、という話をなさいました。だからお互いに譲り合いなさい、ということでした。その小倉会長の態度は今でも忘れられないくらい堂々たるものでしたね。これまでずっと自分から目立とうとはしない、遠慮深い方でしたけれど、芯の強さを持っている人だと思います。ただ、常に日本のサッカーのこと、選手たちのことをしっかり考えてくれているのは間違いない。これからも難しいかじ取りが続くでしょうけれど、ぜひ頑張っていただきたいと思います。