10月30日、三越池袋店の跡地にヤマダ電機が国内最大店をオープンした。約1ヵ月たった今も、開店前に並ぶ人が見られ、池袋の活性化を印象づけている。

 だが、すべてが順調というわけではないようだ。

 この物件は9月30日に三越から不動産ファンドのシンプレクス・リート投資法人に750億円で売却され、現時点ではシンプレクスがヤマダ電機に賃貸しているはずだった。ところが、予定から2ヵ月たった今でも、物件は引き渡されておらず、賃料はヤマダ電機から三越に支払われている。つまり、三越はいまだ750億円の売却代金を手にしていないのだ。

 目下、三越は、早期退職を募っており、退職金の元手に想定していたのが池袋店の売却資金だ。今回の早期退職は、通常の退職金に最大で2000万円を上積みするもの。仮に平均支給額が2500万円で1000人が応じたと計算すると250億円を要する。

 ほかに、三越伊勢丹ホールディングスは、今後3年で、三越銀座店の増床や、JR大阪三越伊勢丹の開業、システム投資などに合計で1100億円を投資する計画だ。

 三越側によると、池袋店跡地の自社以外の地権者との権利調整に時間がかかっており、来年1月末まで引き渡しが遅れるとのことだ。

 もう一つ、気がかりなのは、不動産ファンド側の資金調達である。不動産投資の環境は、昨秋のリーマンショック以降、激変しており、複数の不動産や金融関係者によるとローンがつきにくい状況にある。

 750億円の取得資金について準備ができているのか、シンプレクス・リート投資法人の運用会社に問い合わせると、「この案件についてはなにもコメントできない」という。

 資金需要は時々刻々、顕在化する。百貨店の売り上げ減少の底が見えないだけに、予定どおり資金確保ができないことにでもなると、三越伊勢丹の収益改善計画が根底から崩れてしまう可能性もある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)


■関連記事
・池袋家電戦争は第2ラウンドへ ヤマダ電機の抱える2つの死角
・三越、赤字体質脱却なるか 地方7店を別会社化
・崖っ縁の百貨店業界でついに始まった大リストラ
・提携先の「丸井今井経営破綻」で問われる伊勢丹のグループ戦略
・低価格ブランドの導入で進む 百貨店のマージン引き下げ