■守りに入ってしまった後半

 そして後半を迎えると、フェンロは明らかに自陣を守ろうという意識が強く現れていた。「守りきるつもりなのだろう」と明らかに見て取れた。

 「ハーフタイムでのロッカールームの空気は、もう1点取ろうという気持ちの選手と、守りきろうという選手に分かれていた。そして、いざ試合が始まってみると、前線の選手はもう1点を狙って相手ゴール前にいたけれど、守備を固めて逃げ切ろうとする選手もいた。チームとして、どう戦うのかという意識が統一されていなかった。このチームは勝っている状態に慣れていない」と本田は振り返った。

 前線と守備陣が間延びしたフェンロに対して、NECが襲いかかる。DFラインを崩され、フリーでシュートを打たれる場面が多発。だがNECのシュートに勢いがなかったり、枠を捕らえられなかったりなど、運にも助けられ得点を与えなかった。しかし79分、我慢しきれず同点ゴールを許してしまう。

 「常に相手の戦い方になって、自分たちが戦いづらい状況が続いていて、疲れ果てた状態での失点だった」

 さらにロスタイム。相手の放ったシュートがDFにあたり、逆転ゴールを許してしまう。オフサイドだったのか、ファールがあったのかは不明だが、本田はラインズマンに詰め寄ったが、試合はそのまま終了。土壇場で勝ち点を逃してしまった。

 落胆したチームメイト達は腰を落としていた。そんな中、本田は「クソ!!」とでも言ったのか、体をふたつに折りして怒りを吐き出した。レフェリーに抗議をしたのも彼だけだった。落胆から開放されたフェンロの選手たちは、相手チームやチームメイトと激闘をねぎらっていた。対照的に、本田は怒りが収まらないというオーラを放ちながら、たった一人、ロッカールームへと向かっていた。

 「点を取れたけれど、そのあとの攻め方も悪かったし、点の取られ方も悪かった。これがサッカーなのかと。2試合連続のゴールですが、2連敗しているので、非常に複雑な気持ちです。相手のテンポが上がった。それに合わせてしまった。集中力が切れていると感じる選手もいたし、やられるべくしてやらてたかなという感じです。

 何度か言ったかと思うのですが、僕はチームのエキストラでいなくちゃいけない。でも勝っている状況で、さらなるエキストラを与えたがったが、それができなかったのは反省しなくちゃいけない、どうして逃げ切れたのか。後半、攻めるのか守るのかチームとしての統一ができていなった。中盤の自分として、とても難しい状況だった。どう戦えばいいのか、言って聞く連中じゃない。相手のほうが強かったということです」

 試合後の記者対応では、いつも記者の質問に誠実に答える本田。ルーキーの時から、ミックスゾーンにいる時間が長い選手だった。オランダに来てからもその傾向は続いていると聞いていた。しかし、この日の記者との質疑は5分に満たなかった。