『ディスクロージャー・デイ』脚本家インタビュー、「語らないこと」の重要性 ─ 観客の知性を信じる映画づくり
『未知との遭遇』(1977)、『E.T.』(1982)、『宇宙戦争』(2005)──地球外生命体との遭遇をさまざまな形で描いてきたスティーヴン・スピルバーグが、最新作『ディスクロージャー・デイ』で再び“未知”に挑む。
スピルバーグ自ら原案を手がけた本作の脚本を執筆したのは、長年の盟友デヴィッド・コープ。『ジュラシック・パーク』(1993)や『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)、『宇宙戦争』など、数々のスピルバーグ作品に携わり、近年も『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(2025)を執筆。その一方、スティーヴン・ソダーバーグとのタッグや自身の監督作でスリラー/ホラーにも取り組んでいる。
THE RIVERでは、『ディスクロージャー・デイ』のためコープに単独インタビューを実施。スピルバーグとの34年にわたる創作、『未知との遭遇』『宇宙戦争』との関係、34年にわたる共同作業のなかで見てきたスピルバーグの変化、そして映画における想像力や「語らないこと」の重要性について話を聞いた。
『ディスクロージャー・デイ』脚本家デヴィッド・コープ インタビュー──SFやアクションのさまざまなアイデアに、近年の映画にはあまりない「センス・オブ・ワンダー」を感じる作品です。「映画でこそ語れる空想」を描くために、最も大切なことはなんだと思いますか?
目を見張るような映像があることは重要だと思います。素晴らしいシーンや、気の利いたことを言う魅力的なキャラクターがいることも、確かに大切です。けれども、最も大切なのは「何を語らないか」だと思います。そして、観客に何を補ってもらうかということ。私自身、映画を観る時は、その作品に引き込まれ、深く没入したいと願っています。たとえば、「A」と「B」という要素を提示されたら、そこから自分自身で「C」という結論を導き出したい。観客の知性を尊重し、「ぜひその知性を使ってください」と求めるような作品は、観る者にとって、きわめて意義深い体験となるはずです。
© Universal Studios. All Rights Reserved.──その一方、本作は現在の世界情勢や、陰謀論の台頭を反映した映画でもあると感じました。社会情勢や陰謀論は、脚本を書くうえでどんな影響や制約となりましたか?
興味深い質問ですね。そして、『未知との遭遇』についても語らなければならないと思います。『未知との遭遇』は1977年の作品で、ウォーターゲート事件やベトナム戦争の余波のなか、人々が「政府は嘘をついているんじゃないか?」と口にするようになった、シニカルな世界観が芽生え始めた時期に生まれました。
あれから50年経った今、私たちは政府が嘘をついているかどうかを疑うことさえしません。政府が毎日、あらゆる事柄について嘘をついていることを知っているからです。それは政府だけでなく、いたるところに蔓延しています。社会は嘘であふれています──ソーシャルメディア、AI、ディープフェイク。嘘以外の何ものでもありません。
だから、次に取るべき姿勢は、「真実とは何か、どうすれば真実を知ることができるのか?」ということ。それこそが、この映画が伝えていることだと私は思います。「あなたの考えはすべて間違いだった」ではなく、「あなたの考えはすべて正しかった。これがその証拠です」と語ろうとしているのです。
──スティーブン・スピルバーグ監督と長年タッグを組んできたなかで、彼が変化したと感じるところ、いつまでも変わらないと感じるところは?
ええと、変わらないところの方がずっと話しやすいですね。スティーヴンは今もなお、とてつもないセンス・オブ・ワンダーの持ち主です。彼が制作プロセスのなかで一番好きなのは、やはり「思いつく」ことなのだと思います。彼が「もしもこうだったら最高じゃないか?」と言うとき、それは純粋な想像力と、純粋な思索の瞬間です。彼はそのときにこそ、最も興奮し、夢中になっているように見えます。もちろん、その後には制作の技術的な側面や、さまざまなインスピレーションがあるわけですが、その情熱の火花は、34年前、一緒に仕事を始めたころとまったく変わっていません。
逆に、彼が変わったと感じるところは……そう、スティーヴン・スピルバーグは常にとんでもなく集中しているんです。そして、自分の仕事や、ひいては周囲の仕事に対しても、常に厳しい要求を突きつけます。以前よりも、ますますその傾向は強まっていますね。本作が特にそうだったのかはわかりませんが、私が知るなかでは最も集中していて、最も要求が厳しく、最も譲らない姿勢がありました。意地悪な意味ではなく、とことん徹底しているという意味で。
──『未知との遭遇』や、ご自身が執筆した『宇宙戦争』とは、どのように差別化しようと考えましたか?
『宇宙戦争』との差別化は簡単でした。ありがたいことに、彼らは人類を殺そうとはしていませんから。ですから、それぞれの映画のトーンはまったく異なります。『宇宙戦争』は19世紀末の小説と1950年代の映画を原作としています。全く異なる感性で、冒頭から命がけの逃走劇が繰り広げられるのです。だから、本作は『未知との遭遇』との方が共通点はずっと多いと思います。もちろん続編ではありませんし、登場人物はまったく重なっていません。けれども、ある種の対をなす作品といって過言ではないでしょう。同じアイデアを扱いつつ、舞台は現代で、アクション映画的な要素も強くなっているからです。
© Universal Studios. All Rights Reserved.──スピルバーグが当初執筆した原案は、どのような物語だったのでしょうか? 脚本を作り上げるなかで、シナリオはどのように変化しましたか?
基本的には同じ話でした。登場人物も同じ、冒頭・中盤・結末の構成も同じです。けれども、それは、ある意識の流れのなかで書かれたものでした。彼は朝、目を覚ますたび、アイデアが思い浮かぶと、ただ書き続けていたんです。立ち止まって書き直したり、推敲したりすることはありませんでした。アイデアが湧いている時は、できるかぎりその流れに乗るべきなんですよ。
それに、(スティーヴンが書いたものは)「こうなる、その次はああなる」という感じで、脚本という形ではありませんでした。それが、時間が経つにつれて成長していった。登場人物一人ひとりがより深く掘り下げられ、すべてが精査され、洗練されていったのです。リサーチを重ね、その結果を取り入れようと試みました。私に言わせれば、もとより素晴らしい一反の布を、素晴らしいスーツに仕上げようとするような作業でした。
──近年はスティーヴン・ソダーバーグ監督の『ブラックバッグ』(2025)や『プレゼンス 存在』(2024)の脚本を手がける一方、ご自身も『レフト -恐怖物件-』(2020)を監督するなど、スリラーやホラーに継続的に取り組んでいます。そうした経験から受けた影響はありましたか?
すべての経験が、自分に何らかのものを教えてくれると思います。ソダーバーグのために脚本を書くなかで学んだことのひとつが、「言わないこと」の重要性でした。私はつい説明しすぎる傾向があって、観客に感じてもらいたいこと、知ってほしいこと、考えてほしいことを、そのままはっきり言葉にしてしまいがちです。ただし、ソダーバーグは情報を簡単に明かさず、観客に気づかせようとするのです。ここ数年、彼と仕事をする中で、私は少しばかり抑制することを学んだように思います。
© Universal Studios. All Rights Reserved.映画『ディスクロージャー・デイ』は2026年10月1日(木)全国公開。

