「ピアノ伴奏オーディション、もう限界」落選した児童の“レッスン先の先生”まで学校に抗議…小学校教員が明かす保護者対応の現実
学習発表会や音楽会、運動会など、2学期は学校行事が多く行なわれる。なかには、希望する役割を決めるためにオーディションを行なう学校もあり、結果に一喜一憂する児童や保護者も少なくないだろう。そんななか、ある小学校教員がXに投稿した内容が波紋を広げている。
【画像】「もう全部CDでよくないか?」現役教員が漏らした、ピアノ伴奏オーディションの“限界”
「ピアノ伴奏オーディション、もう限界」小学校教員のX投稿が波紋
〈合唱会でのピアノ伴奏オーディション、もう限界〉
9月22日、Xにこう投稿したのは「はんめん教師」(@hanmena)氏だ。
投稿によれば、合唱会のピアノ伴奏オーディションが行なわれ、その結果を受けてなのか、「(児童の)レッスン先の先生まで抗議に来た」という。
この投稿に対して、
〈もう意味が判りませんね。そうまでして本人がやりたいのか保護者がやらせたいのか。そのレッスン先の先生の良識の無さが恐ろしいです〉
〈合唱祭という行事自体を見直す時期かもしれませんね〉
などのリプライが寄せられた。
いったい何があったのか。はんめん教師氏に話を聞いた。
「現在、私は公立小学校の教員をしています。音楽会のピアノを弾きたい子を募集するのですが、複数の立候補があった場合にはオーディションをするようになっています。
その結果について本人や保護者が不服を申し立てることはままあありますが、今回の投稿のように、さらにレッスン先の先生まで抗議にきたこともありました。
その先生の教えている子がオーディションに落ちたことによって、何かしらのやりとりが保護者との間にあったようです。今回の投稿は第三者が抗議に来たという驚きと学校運営の立ち行かなさを表したものになります」
「気に入らないことをそのまま学校に要求する保護者が増えている」
児童生徒や保護者以外の「第三者」による教育現場への抗議──。こうした想定外とも言える出来事の背景には、学校現場が抱える慢性的な負担もあるという。
「学校にはさまざまな課題が山積しています。なかでも保護者への対応は非常に負担が大きく、時間と労力を割かざるを得ません。以前は考えられなかった小さなことも問題となることもあり、その対応に神経を使っています。そのような現状もあり、一教員としてはもう無理して行事をやることもないように感じています」
同氏は、学校行事をめぐる現場の課題として、「時間の不足」と「保護者からの要求」の2つを挙げる。
「まず、行事にかける時間がありません。給特法により公立学校の教員には原則として時間外勤務手当が支給されず、その代わりに教職調整額が支給されています。しかしながら勤務時間内に終わるような仕事量ではなく、平常時の授業ですら『残業』をしてなんとか回している状況にあります。
そうしたなかで、行事にかける時間的な余裕はほとんどありません。このような状況は、おそらく子どもたちにとってもよいものではないと思います」
また、保護者からの要求については、近年「エスカレートしてきているように思います」という。
「音楽会でのオーディション結果や運動会の着順判定など、気に入らないことをそのまま学校に要求する保護者が増えているように思います。
無論、なかには正当な要求も多くあります。ただ、一部の方のあまりにも理不尽な要求を見聞きするたびに、『子どもたちの成長を親と教員でともに見守る』という、学校行事が成立する前提が崩れているようにも感じます」
“過剰でない要求” は健全な学校運営に必要
こうした保護者対応の難しさは、学校行事に限ったことではない。
同氏は、近年感じるという保護者の“ある変化”について、こう説明する。
「子どもへの叱責を、自分自身への否定だととらえる保護者の方も増えてきました。そういった方々からよく言われるのは『子どもが悪いことはわかっているが、教員の言い方が気に入らない』という意見です。
個人的な感覚では、子どもが悪いことをしたのならば叱るのが大人の役目だと思いますが、そうではない方もたくさんいるのだと感じています」
こうした状況を受け、国も対応に乗り出している。
文部科学省は、保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応が学校運営上の大きな課題になっているとして、対応に関するガイドラインを作成。全国の教育委員会等に通知した。
こうした動きに対して同氏は期待を示しつつ、副作用もあるのではないかと懸念を示す。
「カスタマーハラスメントが周知されることで、一定の抑止力になるのではないかと思います。ただし、一方では正当な要求をしようとした保護者の方が意見を言えなくなってしまうことを危惧しています。
線引きの難しいところですが、過剰でない要求は健全な学校運営に必要だと考えていますので、正当な要求も抑えられることで、学校の閉鎖性を助長してしまうのではないかとも心配しています」
学校現場の苦悩を浮き彫りにした今回の一件。
近年、運動会を縮小したり、学習発表会や合唱会を取りやめたりするなどの動きも広がっている。保護者からすれば、子どもにとって貴重な経験の場が失われると感じられるかもしれないが、一方で学校現場の負担は少なくない。学校行事のあり方が今、問われている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
