突然耳が聞こえにくい? 『突発性難聴』など考えられる6つの病気と受診目安を医師が解説

突然、耳が聞こえにくくなる背景には、突発性難聴のほか、耳垢の詰まりや中耳炎、メニエール病などが考えられます。なかでも突発性難聴は、発症から1週間以内、遅くとも2週間以内に治療を始めることが望ましいとされ、遅れるほど回復しにくくなります。痛みがないことも多く「疲れのせい」と様子を見てしまいがちですが、回復の程度には個人差があり、100%治せる治療法は確立されていません。ろれつが回らない、手足がしびれるといった症状を伴う場合は、脳の病気が隠れていることもあります。突然の聞こえにくさへの対応を、植松耳鼻咽喉科医院院長の岩崎先生に聞きました。

※2026年8月取材。

監修医師:
岩崎 紀子(植松耳鼻咽喉科医院)

1993年に金沢医科大学を卒業後、同大学病院耳鼻咽喉科に入局し、耳鼻咽喉科助手、外来医長を歴任。2004年に先代院長である父から植松耳鼻咽喉科医院を継承し、現在は院長を務める。2009年からは金沢医科大学耳鼻咽喉科非常勤講師も兼任。内視鏡を用いた検査と、画像を見せながらの説明に力を入れている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会所属。

突然聞こえづらくなる原因は?

編集部

突然耳が聞こえづらくなった場合、どのような病気が考えられるのでしょうか?

岩崎先生

まず注意したいのが突発性難聴です。ある日突然耳が聞こえにくくなる病気で、多くは片方の耳に起こり、耳が詰まった感じや耳鳴りを伴うこともあります。そのほか、耳垢が詰まる耳垢栓塞(じこうせんそく)、中耳炎、外耳道炎、メニエール病、急性低音障害型感音難聴(低い音が聞こえにくくなる難聴)なども考えられます。原因によって治療法が異なるため、「少し様子を見よう」と自己判断せず、早めに耳鼻咽喉科で確認することが大切です。

編集部

耳垢が原因で聞こえにくくなることもありますか?

岩崎先生

あります。耳垢が耳の穴をふさぐほど詰まると、急に聞こえが悪くなったように感じます。入浴やプールのあとは、耳垢が水分を含んで膨らみ、耳閉(じへい)感(耳が詰まった感じ)が強まりやすくなります。この場合は耳鼻咽喉科で耳垢を取り除くことで改善が期待できます。自分で綿棒などを奥まで入れると、耳垢をさらに押し込んだり、外耳道を傷つけたりすることがあるため、突然の聞こえにくさを感じたら、自分で処置せず受診しましょう。

編集部

中耳炎やメニエール病でも、急に聞こえづらくなることがあるのですね。

岩崎先生

中耳炎では鼓膜の奥に炎症が起きたり、液体がたまったりして、耳が詰まった感じや聞こえにくさが生じやすくなります。風邪のあとに起こることもあり、耳の痛みや発熱を伴う場合もあります。また、メニエール病では、めまい発作とともに耳鳴り、耳閉感、低い音が聞こえにくいといった症状が表れます。突発性難聴と似た症状でもあるため、判断するのは困難です。「メニエール病は持病だから」などと自己判断せず、適切な診察を受けましょう。

編集部

そのほかに考えられる病気はありますか?

岩崎先生

頻度は高くありませんが、聞こえにくさに加えて、ろれつが回らない、手足に力が入らない、顔のしびれ、激しい頭痛、ふらつきが強いなどの症状がある場合は、脳の病気も考える必要があります。また、強いめまいや吐き気を伴う場合も注意が必要です。耳の病気と思っていても、原因が脳や神経に潜んでいるかもしれません。聞こえにくさ以外の症状を伴う場合や、急激に悪化している場合は、耳鼻咽喉科だけでなく救急外来を検討してもよいかもしれません。

突発性難聴の原因は? 注意したい症状は?

編集部

突発性難聴を発症し、聴力が低下したまま戻らないという話を聞くことがあります。これはどのような病気なのでしょうか?

岩崎先生

突発性難聴は、明らかなきっかけがないまま、多くの場合突然片方の耳の聞こえが悪くなる病気です。朝起きたら片耳が聞こえにくい、電話の音が急に聞き取りにくくなる、耳が詰まった感じがする、といった形で気付きます。痛みがないことも多いため、疲れや耳垢のせいだと思ってしまう人もいます。しかし、突発性難聴は早期に治療を始めることが重要な病気です。突然、聞こえにくさを感じたら、早めに受診しましょう。

編集部

突発性難聴の原因を教えてください。

岩崎先生

突発性難聴の原因は、はっきり分かっていないことが多いのです。内耳(ないじ/耳の奥にあり、音や体の平衡を感じ取る部分)の血流障害やウイルス感染、ストレス、疲労などが関係すると考えられていますが、患者さんごとに明確な原因を特定できるとは限りません。突発性難聴で大切なのは原因を探すことよりも、むしろ早い段階で診断し、治療を始めることです。発症から時間がたつほど聴力の回復が難しくなることがあるため、突然の難聴は耳鼻咽喉科で早急に評価する必要があります。

編集部

突発性難聴では、聞こえにくさ以外にどのような症状があるのでしょうか?

岩崎先生

突発性難聴では、耳鳴りや音が響く感じ、左右で聞こえ方が違うといった症状を伴います。人によっては、めまいや吐き気を伴うこともあります。症状が軽く感じても、実際には聴力が低下している場合があるため注意が必要です。「耳がこもる」「片耳だけ聞き取りにくい」「耳が詰まった感じがする」と感じたら、早めに聴力検査を受けましょう。

編集部

突発性難聴かどうかは、どのように調べるのでしょうか?

岩崎先生

診断では、まず症状がいつ、どのように始まったかを詳しく確認します。そのうえで、耳の中にある鼓膜の状態を診察し、聴力検査を行います。外耳や中耳に異常がないのに、内耳や聴神経に関わる感音難聴が急に起こっている場合、突発性難聴を疑います。必要に応じて、めまいの検査や画像検査を行うこともあります。

受診の目安は?

編集部

突然耳が聞こえづらくなったら、どれくらいで受診すべきでしょうか?

岩崎先生

突然耳が聞こえづらくなった場合は、できるだけ早く、可能であれば当日から翌日には耳鼻咽喉科を受診してください。特に、突発性難聴は、治療が遅れるほど回復しにくくなるため、発症からできれば1週間以内、遅くとも2週間以内に治療を始めることが望ましいとされています。ただし、早く治療を開始しても、聴力が元通りに回復するとは限りません。完全に回復する人、ある程度回復する人、残念ながらほとんど回復しない人がそれぞれ一定数いるとされ、現時点で100%治せる治療法は確立されていません。人によっては耳鳴りが残ることもあります。だからこそ、突然聞こえにくくなったときは、できるだけ早く受診することが大切です。

編集部

少し聞こえが戻ってきた場合でも、受診したほうがよいのでしょうか?

岩崎先生

一時的に聞こえが戻ったように感じても、受診することをおすすめします。耳の詰まり感や聞こえにくさは日によって変動することがあり、症状が軽くなったからといって完全に治っているとは限りません。また、メニエール病や急性低音障害型感音難聴など、症状が変動しやすい病気もあります。そのほか、気候の影響で耳管(じかん/鼻と耳をつなぐ管)が狭窄(きょうさく)し、聞こえづらくなっているだけのケースも少なくありません。聴力検査をしなければ、どの音域がどの程度低下しているかは分かりません。自己判断で様子を見るより、耳鼻咽喉科で状態を確認しておくと安心です。

編集部

受診までに自分でできることはあるのでしょうか?

岩崎先生

突然耳が聞こえにくくなった場合は様子を見ず、できるだけ早くそのまま受診してください。特に、ろれつが回らない、手足が動かない・しびれる、顔がゆがむといった症状を伴う場合は、脳の病気が隠れている可能性があります。その場合は耳鼻咽喉科ではなく、救急外来や脳神経外科を優先しましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岩崎先生

突然耳が聞こえにくくなった場合は、土日であっても救急外来などを受診し、できるだけ早く診てもらうことが大切です。突発性難聴などは、治療開始が早いほど回復が期待しやすく、受診が遅くなるほど治療効果は得にくくなります。実際、「忙しい」「時間がない」などの理由で受診を後回しにしてしまい、症状が残ってしまう人も少なくありません。症状が起きたら速やかに受診し、適切な治療につなげてほしいと思います。

編集部まとめ

突発性難聴などによる「耳が聞こえづらい」という症状は、痛みがないことも多いため軽く考えてしまいがちですが、早期対応が回復の可能性を左右します。「明日まで様子を見よう」と先延ばしにせず、休日でも医療機関に連絡しましょう。

※参考文献
早期治療が重要な難病 突発性難聴とは?(一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)

医院情報

植松耳鼻咽喉科医院

■ 診療科目
・神奈川県横浜市旭区上白根1-1-16:耳鼻咽喉科
■ 診療時間
・神奈川県横浜市旭区上白根1-1-16:午前: 月火水金土9:30~12:30
午後: 月火水金15:00~18:30土14:00~16:00
■ 休診日
・神奈川県横浜市旭区上白根1-1-16:木・日・祝

045-954-3311

ホームページ