【河合 桃子】「月収1億円」をうたう広告も出現…監督、女優、弁護士らが明かす「同人セクシー動画」の本当の実態

写真拡大 (全2枚)

【前編を読む】「月収は常に5000万円」監督が明かす、急速に広がる同人セクシー動画の世界の裏側

女優が明かした同人動画での賢い稼ぎ方

では、異例とはいえ月収1億を達成したクリエイターや、月収5000万円を得る人々は、どう稼いだのか。前出の刈田氏によれば「そもそも通常のAVと同人AVでは販売形態がまるで違う」という。

「基本的に適正AV(業界の自主規制ルールに従って作られた作品)は、作品が1本ごとに販売されています。単価は新作で4000円ほどです。同人AVの場合、作品を視聴するにはクリエイターが設ける月額プランへの加入が必須。単品販売は上限2万円まで設定できることも強みです」

最近では、この「自由に値段設定できること」をメリットと捉え、適正AVから同人AVに移籍する女優も現れた。「ななみん」という名前で活動している松本菜奈実さん(32歳)も、そのひとりだ。

「9年間、適正でいろんな撮影現場を経験して新しいことを始めたい思いが芽生えました。当初は適正もやりつつ同人を始めようと思いましたが、事務所から制約があったので、思い切って転身しました」

また、ギャラに関しても「売れるほど実入りが大きいのでやりがいを感じる」という。

9980円で販売して400万円の収入

「もちろんギャラ目当てで同人に転身した訳じゃないけど、適正では一作品20万~25万の買い切りのギャラで、いくら売れてもそれ以上入ることはありません。でも私と同じように適正AVから転身した、さもあり監督とのコラボ作品を9980円で販売したところ、私には約400万円もの収益が入りました」

売り上げはSNS戦略が大きく左右するそうで、「マーケティング面まで考えられる人はひとにぎり」と松本さんは説明する。

適正から同人への流入の動きは、男優にもある。筑駒中高を卒業した異色のAV男優、森林原人さん(47歳)だ。

儲けのカギになるのはSNS戦略

「適正AV業界に約25年いましたが、SNSが隆盛になり女優さんは『有名になるための足がかり』として入る方が増えてきました。僕は本当に性に関心が強い人たちと仕事したいと思い、同人に移行したんです」

森林さんは現在、同人AVサイトで2つのチャンネルを運営しているという。

「毎月8本は新作企画の撮影を行い、自分が男優として出るときもあれば、男優を雇って監督に徹することもあります。本当に良い作品をつくりたいので、女性が本調子じゃないときはバラシ(中止)にすることもある。

とはいえ、内容の質が良いからといって売れる訳ではありません。とにかくSNS戦略が重要。タイトルひとつ取ってみても煽情的にする必要があります。たとえば『引退まで○日。それ以降は削除します』などと、ユーザーに『今買わないと見られなくなるよ』と焦らせる技術です」

同人AVの摘発はまだまだ厳しい

勢いを増す一方の同人AVだが、黎明期ということもあり、違法行為で摘発されるケースも多々ある。

同人AV配信における法律上の注意点について、グラディアトル法律事務所の清水祐太郎氏に聞いた。

「配信者はアダルトな動画で収益を得ることになるので、映像送信型性風俗特殊営業の届け出をする必要があります。この届け出を怠れば当然、摘発されます。

また、映像のモザイクが薄かったり入っていなかったりする場合は、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪などに問われる可能性もあります。さらにAV新法に関わる撮影や発売期間の規定を無視すれば、違法行為に該当します」

テレビとYouTubeの関係と同じ

AV誕生から約45年。AV業界はかつてのアングラな村社会では完全になくなった。いまや全国各地の繁華街のビルには、同人AVサイトで「月収1億円」を達成したアダルトインフルエンサーの看板がデカデカと飾られている。その看板を見た素人女性たちが「我こそは」と参入するケースも珍しくはない。

今後、適正と同人AVのパワーバランスはどのようになってゆくのか。前出の制作者は、こう譬えてみせた。

「テレビとYouTubeの関係と同じですよ。YouTubeだって最初は素人の遊び場でしたが、いまは大御所芸能人だってチャンネルを持っている。テレビはなくならないけど、確実に押されている。適正AVと同人AVも、同じ道をたどると思いますね」

【もっと読む→中央大学特任助教が解き明かす性の新常識 なぜ日本人にとってセックスは「したいけど、めんどくさい」行為になったのか】

取材・文/河合桃子

河合 桃子(かわい・ももこ)/ライター。編集プロを経て独立。アンダーグラウンドな業界の事件、主に生活安全課が扱う事件などを中心に執筆。『地面師連絡役カトウ』で第32回小学館ノンフィクション大賞

「週刊現代」2026年9月28日号より

【もっと読む】中央大学特任助教が解き明かす性の新常識 なぜ日本人にとってセックスは「したいけど、めんどくさい」行為になったのか