【元川 悦子】【独占】森保監督が答えた「守田との確執説」の真実と、日本代表「SNS発信の絶対ルール」
W杯敗退から2ヵ月半、森保一監督率いる日本代表が再始動する。「最後の戦い」として2027年アジアカップ優勝を誓う指揮官に単独インタビューを敢行。選手選考の絶対的基準、独自のマネージメント術、チーム内の世代間ギャップについてストレートに迫った。
前編記事『【森保監督独占インタビュー】W杯敗退から2ヵ月半…指揮官が明かした「遠藤航離脱」の舞台裏と後悔』からつづく。
森保流マネージメント術
多様な個性を束ね、成果を出させるマネージメントの難しさは、現代のあらゆる組織に共通する課題だ。日本代表を率いる森保一監督が向き合うのも、まさにその現場である。しかも彼が対峙するのは、欧州トップリーグでプレーする猛者ばかり。「俺を試合に出せ」「ボールをよこせ」という自己主張の集団である。
しかも、2026年W杯までの第2期に招集した選手を例にとると、9月12日に40歳の誕生日を迎えた長友佑都(FC東京)のような年長者から、2025年E-1選手権(韓国)で初キャップを飾った当時18歳・佐藤龍之介(バレンシア)のような若手まで年齢層も幅広かった。2006年生まれの佐藤は2000年生まれの森保監督の三男・陸さんより年下だ。世代間格差が広がれば広がるほど、人間関係構築が難しくなる側面もないとは言えないのだ。
「私の仕事はまず選手を選ぶことが第一。人間なのでどうしても好みが入ってしまうところはあるかもしれませんが、できるだけニュートラルに競争を見るということを意識しています。自分1人の意見だけではなく、コーチ陣全体の意見を踏まえながら、選手選考を進めています。
見ている基準は現在の力。もちろん成長曲線も加味しています。年齢的に衰えが感じられたり、逆に上昇気流に乗っていたりというのがあるので、それはチェックしています。選手が活躍している舞台もさまざまで一様に比べるのは難しいですけど、できるだけたくさんの試合を見て、ディスカッションを繰り返してベストを決めているので、すべてが正解かどうかはわからないですけど、全体的には間違っていないと思っています」
代表活動が始まれば、チームのルールを遵守してもらう。普段の活動は10日前後だが、W杯やアジアカップになれば1ヵ月を超えることもある。長期間、お互いを尊重しながら、ひとつの目標に突き進んでいく空気感を作るのはデリケートな作業。勝ち進んでいる時はいいが、結果が出なければ意見のぶつかり合いや沈滞したムードも生まれやすい。そういうリスクも考えながら、指揮官は目を配っているのだ。
「今はSNSがあって、個人がメディア媒体になれる時代ですよね。『発信するのはいいけど、チーム内の他の選手がどうなるかを考えたうえで発信してほしい』というのは注文をつけています。個人の発信によって問題が起きた場合、自分が指摘することもあります」
守田英正はなぜ落選したのか
選手の発信に関して、物議を醸したひとつの事例を挙げると、2024年アジアカップ(カタール)でイランにベスト8で負けた後の守田英正(ハル・シティ)の発言だ。「もっと外から『こうした方がいい』というものがほしい」と注文をつけたことが監督批判のように捉えられ、それが2026年W杯落選の遠因になったと見る向きもあった。
だが、指揮官は「それは違います」とキッパリ。「あの後も私は彼を代表に呼んでますよね」と自ら話を切り出した。
「私は建設的な意見だと思っていますし、もちろん選手にも確認はします。あの時はむしろ選手間で『メディアの前でああいう話はしない方がいいだろう』という意見が多かったと受け止めています。
自分は国内でしかプレーも指導もしたことがないのでわからないですけど、海外だったら割と好きにみんな言いたいことを言うんじゃないかなと考えています。だから選手の発言はスルーすることが多いんです。ただ、コーチ陣や他の選手が不安に感じるケースもある。そこは必ず話してすべて解決しますし、あの時もそうでした。
その後、守田は2025年3月まで代表に来ていましたし、あの後はケガ。1年間、ケガをしている間に違う選手が伸びてくるのがプロの世界。そこは全員が理解していると思います」
守田のように何かを発信する選手もいれば、そうではない選手もいるのがチーム。2000年代以降の生まれの若手は全体に大人しい。2026年W杯期間中も、当時22歳の鈴木淳之介(コペンハーゲン)があまり声を出さないのを見かねた長友が「淳之介、腹から声を出せ」と頻繁に注文している様子が印象的だったが、雰囲気の盛り上げ方ひとつとっても、アプローチや意識が違う。そんな彼らを束ねるのは、骨が折れる仕事かもしれない。
「佑都が淳之介に言ったことは、一般社会ではお咎めを受けるかもしれません(笑)。でも、僕もやっているんですよね。練習前にみんなバラバラとグランドに出てきますけど、『お前、集合って言ってくれ』と若手選手に促したりもしていますから。その選手が『集合』と小声でボソボソ言って、『お前、聞こえなかったよ』といじったりもする。それ自体、ハラスメントかもしれませんからね(笑)。
我々のグループ内ではみんな理解してくれていますし、当たり前のことですけど、言われた側が不快だと思ったらその時点でハラスメントに該当してしまう。本当に難しいなと思います」
代表チームのみならず、現代社会で起きている問題にも目を向けつつ、森保監督は選手たちの向上心とプロ意識の高さに感謝する。
「時代の変化によって、指摘される経験がないままに成長した人間が本当に大切な場面で力を発揮できなかったり、壁にぶつかったり、心まで折れてしまう可能性がある。それは本当に残念なこと。我々の世界は、言ったことをみんな素直に受け止めて、ポジティブ変換してくれるので、すごくありがたいと感じています」
長友の「声を出せ」はハラスメントか?
長友に注文をつけられていた鈴木淳之介にしても、当時、メディアに対してこう前向きに語っていた。
「自分はもともとテンションを上げすぎると上がりきっちゃうタイプなので(笑)。試合中は声を出しますけど、いろんなタイプの人がいると思うので。自分はまだ若いですし、持っているものを思い切りぶつけて、返ってきたものが大事なので、ここからしっかりとやっていきたいと思っています」
森保監督も温かく見守るスタンスを取っている。
「声を出さないことが悪いということはない。チーム戦術・グループ戦術・個人戦術を選手たちが把握し、思い切ってプレーできるなら、声は関係ないのかもしれません。自分をさらけ出せるに越したことはないし、そういう人間の方がコミュニケーションを取れるとは思いますけど、個性は認めてあげないといけない」
若い選手の自主性や自立心に期待し、要所要所で意思疎通を図りながら、成長を促していくのが「森保流」なのだろう。
こうした成長途上の選手と指揮官の間に、新たに中村俊輔コーチ、長谷部誠コーチのような若手のレジェンドを配置し、前回大会で主将を務めた吉田麻也(LAギャラクシー)、ケガの影響で招集外となった南野拓実(モナコ)という現役のサポートプレーヤーを帯同させたことも、森保監督にとっての大きな助けになった。
「自分が選手をコントロールするために彼らを呼んだわけではなくて、双方にとってプラス効果が高いと感じたので来てもらいました。まず俊輔や長谷部は現役に近い存在。いいアドバイスができますし、レジェンドである彼らから選手が学ぶことはたくさんあると考えました。
麻也や拓実も同様で、身近な先輩から自然に吸収できる環境を作り、歴史の継承を進めていくという狙いがありましたけど、本当によくやってくれたと思います」
森保監督は周りを取り巻く人間のよさをうまく生かしながら、組織を円滑に動かし、最大値を引き出そうとしたのだという。
結果的には優勝には届かなかったが、日本代表の一体感や規律あるプレーは世界から称賛された。そのマネージメント術はビジネスマンも参考にできる部分は少なくないだろう。
後編記事『【独自】なぜ続投なのか…森保監督自らが語る「日本人指揮官こそがベストな理由」』につづく。
