斉藤清六さんの口座には…(C)日刊ゲンダイ

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【増田俊也 口述クロニクル「茶の間を変えたコメディアン 欽ちゃんのぜ~んぶ話しちゃう!」】#46

【前回を読む】萩本欽一〈45〉斉藤清六を全国区にした誰も知らない裏話 “弟子入りNG”から評価を一転させたんです

 作家・増田俊也氏による連載、各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。待望の第2弾は、「視聴率100%男」として昭和のテレビ界を席巻したコメディアンの萩本欽一氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「清六さんも素晴らしいですけど、それをまっすぐ受け取る萩本さんも素晴らしいですね」

萩本「ところがそうそう簡単にいかなかったの。『スター誕生!』の前説やれって言って清六ちゃんを入れたの。そうしたらね、スタートができない。前説やって、『さあ、それでは本番です』ってパッと去れば、音楽がダンダダンって始まるんだよ。普通の感性の奴だったら誰でもできるのにそれができないの。バンドさんが焦って死にそうだっていうんだよ。バンマスがそれでクビになっちゃった」

増田「それは災難ですね(笑)」

萩本「でもね、あんないい子を放っぽりだすわけにはいかないでしょ。下手なんだけども、しょうがないんで『欽どこ!』に来いと。とはいえ、いくらなんでもおまえのような者をテレビに出すって、そういうことはしちゃダメだ。それで、ディレクターにはこう言っておいた。『カメラの前には立たせるけど、放送には流さないでね。前説のつもりでいいから』って。でも、あいつが『もし、面白いこと、おかしいことを言ったらそこから流してください』って言ったの。『ただ、1回流してそれで終わりっていうのはやめてください。1回流したらずっと使ってください』って。結局、2年ぐらい放送にならなかったですね」

増田「前説をずっとやって」

萩本「うん。ところがある日、ディレクターが『今日は馬鹿におかしいから流す』って。私だから『それをしたら、もう約束ですから、1回出したらずっとやってよ』と言った」

増田「ファンの方は誰も知らない裏話ですね」

萩本「知らないです」

増田「ファンはみんな、清六さんはパッと出てきて有名になってというところしか知らない」

萩本「2年間、全部カットだったんです」

増田「すごい話ですね。その前にそのサンドイッチマンやったり」

萩本「そうね」

「あいつ女性としゃべれない」

増田「萩本さんの家に半年いたり、その前に浅草行ったり」

萩本「のちにね、私が映画やって失敗したとき、1000万円持ってきて『これで映画の切符ください』って言って頭下げるのよ。『そんなことできない、売らない』って言ったら、泣いてさ、『僕のお金じゃない。大将が稼がしてくれたお金だから』って泣き続けるの。それで『おまえな、1000万円持ってくるってことはな、億以上の貯金がある奴がやることだよ。おまえみたいな奴が持ってくんじゃない』つったら『億あります』って言うの(笑)。もらっちゃおうかと思ったくらい驚いた。もちろん、手は出さなかったよ、絶対。でも『あぁ可愛いやつだ』と思って」

増田「1億円も稼いだんですね。素晴らしいな」

萩本「稼いだんでしょうね。あいつ奥さんもいないし。独り者ですからね」

増田「今も一人」

萩本「ずっとです。あいつ女性としゃべれない」

増田「でもそこから1億円稼いだ。人柄ですよね」

萩本「うん。人柄」

増田「一人一人にドラマがあるんですね」

萩本「みんなドラマありますよ」

増田「気仙沼ちゃんはどんな感じだったんですか?」

※気仙沼ちゃん(けせんぬまちゃん):元タレント。本名・白幡美千子。宮城県気仙沼市生まれ。1977年、一般公募を経てフジテレビ系列の『欽ちゃんのドンとやってみよう!』の「欽ドン劇団」に出演。芸能経験のない一般女性ながら、素朴な人柄と東北弁を生かしたキャラクターで人気者となり、「気仙沼ちゃん」の愛称で親しまれた。番組を離れた後は故郷に戻り、1980年に結婚。気仙沼湾の大島で「気仙沼ちゃんの宿 アインスくりこ」の女将を務めている。

萩本「気仙沼ちゃんは番組で何にも教えてないし、そのまんま。あの彼女の生きざまが本当におかしかった。番組を終える時にね、『気仙沼ちゃんこれからどうするの?』って聞いたら『このまま芸能界でやっていきたいです』って言ったから、その時に『バカ者!』って言ったの。それでこんこんと諭したの」(つづく =火・木曜公開)

▽はぎもと・きんいち 1941年、東京都生まれ。高校卒業後、浅草での修行を経て、66年にコント55号を結成。故・坂上二郎さんとのコンビで一世を風靡した。その後、タレント、司会者としてテレビ界を席巻し、80年代には週3本の冠番組の視聴率がすべて30%を超え、「視聴率100%男」の異名をとった。社会人野球「茨城ゴールデンゴールズ」の初代監督、2015年には73歳で駒澤大学仏教学部に入学するなど挑戦を続け、25年10月にスタートしたBS日テレ「9階のハギモトさん!」は今年4月からSEASON3に突入した。

▽ますだ・としなり 1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。