【むくろ 幽介】応援上映の8割が女性!『スター・ウォーズ』新作が日本の女性ファンを熱狂させた「意外な理由」
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は、日本で興行収入36億円・動員210万人を突破し、北米を除く海外市場でトップの成績を収めた。応援上映は即完売、配信が始まってもなお熱は冷めやらない。
その原動力となったのが、フォースやジェダイといったレガシーから距離を置いた新主人公ディンと、彼が父として育てるグローグーの存在だ。
「ジェダイな感じがするか?」--何も知らない主人公が、長寿シリーズに挑む新規ファンの不安をほどき、"知らなくても大丈夫だし、知ればもっと楽しめる"入口を用意した。
では、なぜこの親子の物語が、とりわけ女性たちの心を強く掴んだのか。そして半世紀続くフランチャイズが新しい世代を迎え入れるために、本当に必要なものとは何か?後編で掘り下げていく。
前編記事『“おじさんの教養”だった『スター・ウォーズ』に異変…なぜ急に若い女性たちの推し活コンテンツになったのか?』より続く。
無骨な快男児“マンダロリアン”の萌えキャラ的魅力
今回のブームで特筆したいのは、新規の女性ファンが非常に多かった点だ。
そもそもスター・ウォーズは、長年男性ファンの存在感が強いシリーズでもあった。2024年には、当時ルーカスフィルムの社長だったキャスリーン・ケネディが、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューでファンベースについて「男性優位」と表現している。
では、なぜ今回女性ファンを獲得できたのか。それは同作には“推し活のしがいがある可愛いキャラ”がいたからだ。そのキャラこそ、小さくてキュートなエイリアン・グローグー……なのだが、筆者はむしろ無骨な主人公ディン・ジャリンその人が注目されたように思う。
シリーズの源流のひとつでもある、小池一夫原作の漫画『子連れ狼』を思わせる無骨さを保ちながらも、ディン・ジャリンという主人公は見ていて驚くほど嫌味がない。
「生きたまま行くか、冷たくなって行くか」と獲物へ冷酷に言い放つプロの賞金稼ぎでありながら、苦しんでいる人は見捨てておけないヒロイズムも併せ持ち、愛する我が子を全力で守り、八面六臂の大活躍を見せる。
そんな一見するとマッチョな主人公だが、意外にも敵の罠にかかって捕まってしまうことも多く、ファンからは“囚われのヒロイン”と称されることもあるのだ。この絶妙に隙があるキャラクター性は、演じるペドロ・パスカル本人の愛嬌によるところも大きい。
『もののけ姫』アシタカとの共通点
そして、そんな主人公を助けてくれるのは、ボ=カターン・クライズ、キャラ・デューン、フェネック・シャンドといったタフでクールな女性キャラたち。
ディンは素直に彼女らの助けを仰ぎ、感謝を欠かさない。物語の舞台となる銀河の辺境では、強く賢いものだけが生き残る。このシンプルな倫理観で、男女の差をサッと飛び越えていく風通しの良さが魅力的なのだ。この愚直で竹を割ったような素直さは、どこか『もののけ姫』の主人公・アシタカを思わせる。
また、恋愛描写を排除しているのも気持ちが良い。タフでクールでありながらも支配性や性的な征服欲は一切見せず、代わりに我が子への無限の愛情を行動で示す。まさに愛さずにはいられない快男児がディン・ジャリンという主人公なのである。
王道ど真ん中でありながら、そこに現代的で繊細な工夫を張り巡らせる。これは初代スター・ウォーズが当時の映画界を熱狂させた理由と同じであり、マンダロリアンは今の時代にそれを再現したのだ。
『ゴジラ』『ガンダム』にも通じる、新規ファンの獲得戦略
『マンダロリアン』が行ったこうした手法は、日本の長寿IPにも見られるものだ。一例を挙げるなら、70年以上続く『ゴジラ』がそれだ。
社会現象になった『シン・ゴジラ』や、アカデミー賞を受賞した『ゴジラ-1.0』などは過去作の知識をほとんど必要とせず、シリーズのテイストや旨味を損なわずに、作品を「今の時代の新たな物語」として受け入れさせることに成功させた。
映画作品ではないが、『ゴジラ』以上に『マンダロリアン』と近い構造でヒットしたのが、2025年の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』だろう。
スター・ウォーズに匹敵する47年という歴史を持つガンダムシリーズ。その新作である同作は、フレッシュな新主人公マチュを入口としながらも、物語の舞台をシリーズの原点である「宇宙世紀」へと鮮烈に接続。IPのアイコンでもある人気キャラクターたちの魅力を新たに描き出して、新規のファンを数多く獲得した。
これは、映画でディンとグローグーを好きになった新規のスター・ウォーズファンが、前日譚のドラマ版や過去のスター・ウォーズ作品へ遡っていく今回の現象にとてもよく似ている。
IPへ新規ファンを呼び込む鍵は、“敷居の低さ”と“現代的な風通しの良さを持った愛らしいキャラクターたち”、そして“自由に深掘りできる奥行き”を新規ファンに与えることではないだろうか。
半世紀にわたって積み重ねてきたものを捨てるのではなく、新しい世代が自分の意思でそこへ入っていける入口を作る。そして、そこで生まれた新たな熱狂が、今度は長寿シリーズそのものを次の時代へ運んでいく。
『老いは若きを守り、やがて逆になる。我らの道』--ディンの言う「やがて逆になる」とは、まさにこのことなのだろう。
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