「ドーパミン」が少ないと「顔」にどのような特徴が現れるかご存知ですか?医師が解説!

ドーパミンが少ないと顔にどのような特徴が現れる?メディカルドック監修医がドーパミンの働きや不足するデメリットについても解説します。

監修医師:
関口 雅則(医師)

浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。

「ドーパミン」とは?

ドーパミンは、脳内で情報を伝える神経伝達物質の一つです。アドレナリンやノルアドレナリンと同じ、カテコールアミンの一種です。材料はチロシンというアミノ酸になります。体内では2段階の酵素反応を経て合成されます。運動の調節から意欲、学習まで、幅広い脳の働きを支える物質です。「やる気ホルモン」と紹介される場合もありますが、脳内では神経伝達物質として働きます。

ドーパミンはどこから分泌されるの?

ドーパミンをつくる神経細胞は、主に脳の中脳という部分に集まっています。代表的な産生部位は、黒質と腹側被蓋野の2か所です。黒質から線条体へ向かう経路は、主に体の動きの調節を担います。一方、腹側被蓋野から大脳皮質や辺縁系へ向かう経路は、意欲や報酬に関わる回路です。このほか、視床下部から下垂体へ働きかける経路もあります。ここではプロラクチンの分泌を抑えています。

ドーパミンの働き(役割)

ドーパミンは、一つの働きだけを担う物質ではありません。脳のどの経路で放出されるかによって、その役割は大きく変わります。運動の調節から意欲、学習、ホルモンの調節まで、守備範囲は非常に広いといえるでしょう。ここでは代表的な5つの働きを順に確認していきます。

運動の調節

黒質から線条体へ伸びる経路は、体の動きをなめらかに保つ働きを担います。この経路のドーパミン細胞が減ると、動作が遅くなったり、筋肉がこわばったりします。パーキンソン病は、この仕組みが障害されて起こる病気です。

意欲と報酬

腹側被蓋野から側坐核へ向かう経路は、報酬系と呼ばれる回路です。目標を達成したときの満足感や、次も頑張ろうという意欲に関わります。報酬への反応では、特に側坐核が重要な役割を果たすとされています。

学習と記憶

ドーパミンは、学習や記憶、注意といった認知機能も調節しています。なかでも作業記憶との関係については、多くの研究が積み重ねられてきました。前頭前野のD1様受容体を遮断しても過剰に刺激しても、動物では課題の成績が低下すると報告されています。

ホルモンの調節

視床下部から下垂体へ向かう経路では、ドーパミンがプロラクチンの分泌を抑えます。ドーパミンの働きを遮る薬を使うと、この抑制が外れる場合があります。その結果として起こるのが、高プロラクチン血症です。

視覚とリズムの調節

網膜のなかでもドーパミンはつくられ、光の情報を伝える経路を調節しています。明るさへの順応や、視覚情報の伝わり方の調整に関わる働きです。体内リズムをつくるメラトニンとは、互いに拮抗する関係にあるとされています。

ドーパミンが少ないとどんなデメリットがある?

ドーパミンが不足すると、体にも心にも影響が及びます。ただし日常的な気分の落ち込み程度で、脳内のドーパミンが目立って減るわけではありません。ここで扱うのは、パーキンソン病のように病的な水準まで低下した場合の変化です。代表的な3つを見ていきましょう。

動作の緩慢とふるえ

最初に気づかれやすいのは、体の動きに関する変化です。動作が遅くなり、手足に安静時のふるえが出る場合もあります。動作の緩慢さは、脳内のドーパミン欠乏の程度とよく相関すると報告されています。

意欲の低下と気分の落ち込み

意欲の低下や抑うつ、物事への関心の薄れが現れることもあります。パーキンソン病では、こうした非運動症状が本人も気づかないうちに進みます。周囲の家族が先に変化に気づく場面も少なくありません。

自律神経の乱れ

便秘や頻尿、立ちくらみといった自律神経の症状も現れます。汗のかき方が変わったり、皮脂の分泌が増えたりするのも特徴です。飲み込みにくさやよだれの増加が、食事の場面で目立つこともあります。

ドーパミンが少ないと顔にどのような特徴が現れる?

ドーパミンの不足が顔に現れるのは、パーキンソン病のように病的な低下が起きた場合です。表情をつくる筋肉が弱るのではなく、動きの指令を出す脳の働きが低下して変化が生じます。ここでは医療現場で実際に確認されている5つの特徴を、順に挙げていきましょう。

表情の乏しさ(仮面様顔貌)

最もよく知られているのが、表情の変化が乏しくなる状態です。仮面をかぶったように見えることから、仮面様顔貌と呼ばれます。感情が失われたわけではなく、顔の筋肉の動きが少なくなっているだけの変化です。

まばたきの減少

顔の動きが少なくなる変化は、まぶたにも及びます。まばたきの回数が減り、視線が一点に留まって見える場合があります。目の表面が乾いて炎症を起こしやすくなる点にも注意が必要です。

顔のテカリ(脂漏)

自律神経の乱れによって、皮脂の分泌が増えることがあります。額や鼻のまわりが脂っぽく光る状態が、脂漏性顔貌です。洗顔を増やしても改善しにくく、皮膚科への相談が必要になる場合もあります。

口元のゆるみとよだれ

飲み込む動作が減ると、口の中に唾液がたまりやすくなります。その結果、口元がゆるんで見えたり、よだれが出やすくなったりします。唾液が増えるのではなく、飲み込む回数が減る点が原因です。

まぶたの開けにくさ

まぶたが勝手に閉じてしまう眼瞼けいれんが起こる場合もあります。まぶしさを強く感じるようになり、目を開けていられなくなる状態です。まばたきの減少とは逆に、目を閉じる筋肉が過剰に働く現象です。

ドーパミンが多いと顔にどのような特徴が現れる?

日常生活を送る中で、脳内のドーパミンが過剰になる事態はほとんど起こりません。顔に変化が出るのは、治療薬や依存性薬物によってドーパミンの伝わり方が乱れた場合です。健康な人の性格の明るさや表情の豊かさとは無関係である点を、先に押さえておきましょう。

効き目のピークに現れる口元の動き

パーキンソン病の治療中、薬が最もよく効いている時間帯に不随意運動が出る場合があります。ピークドーズジスキネジアと呼ばれ、口元や手足がくねるように動くのが特徴です。薬の量や飲み方の調整で対応するため、自己判断での中止は避けてください。

長く飲み続けて出る舌の動き

抗精神病薬や一部の胃腸薬を数か月以上続けたあとに現れるのが、遅発性ジスキネジアです。口をもぐもぐさせて舌を出す動きが典型的とされています。遅発性の不随意運動のうち、約7割が口や頰、舌のタイプと報告されています。

まばたきの増加

まばたきの回数は、脳内のドーパミン活動を映す指標として研究されてきました。ドーパミンを増やす薬を使うと回数が増えると報告されています。ただし健康な人では一致した結果が得られておらず、解釈には注意が必要です。

眼球が上を向く発作

薬の影響で、眼球が上を向いたまま戻らなくなる発作が起こる場合もあります。眼球上転発作と呼ばれ、抗パーキンソン病薬でも報告されています。顔をしかめる動きや、首のねじれを伴うこともあるのが特徴です。

瞳孔が大きくなる

脳内のドーパミン濃度を高める精神刺激薬では、瞳孔が大きく開く場合があります。ADHD治療薬の添付文書でも、散瞳や歯ぎしりが副作用として報告されています。違法薬物の乱用は健康被害が大きく、絶対に避けてください。

ドーパミンの分泌を促す方法

ドーパミンという物質だけを狙って増やす方法は、残念ながら日常生活の中にはありません。それでも、脳の働きを支える生活習慣を整えることには十分な意味があります。ここでは根拠のはっきりした範囲で、今日から実践できる工夫を5つ紹介していきましょう。

たんぱく質を含む食事

ドーパミンの材料は、チロシンというアミノ酸です。肉や魚、大豆製品、乳製品などのたんぱく質から供給されます。特定の食品を大量に食べても効果が高まるわけではないため、全体のバランスを重視してください。

規則正しい睡眠

夜更かしが続くと、日中の意欲や集中力は落ちやすくなります。眠りの時間が不規則だと、食事や運動の習慣も崩れがちです。まずは就寝と起床の時刻をそろえるところから始めてみましょう。

小さな目標の設定

報酬系は、目標を達成したときに働く回路です。大きな目標だけを掲げるより、達成しやすい小さな目標を重ねる方が長続きします。仕事や勉強を細かく区切る工夫が役立つでしょう。

適度な運動習慣

体を動かす習慣は、気分の安定や睡眠の質の改善につながります。一日の中で体を動かす時間を決めておくと、習慣として続けやすくなるものです。無理のない範囲で、歩く時間を少しずつ増やしてみてください。

心地よい音楽を聴く時間

好きな音楽で強い快感を覚えたとき、線条体でドーパミンが放出されると報告されています。日常の中に、心地よいと感じる時間を意識してつくってみてください。通勤や家事の合間に取り入れると、無理なく続けられます。

「ドーパミンと顔」についてよくある質問

ここまでドーパミンと顔について紹介しました。ここでは「ドーパミンと顔」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

人はなぜ自分の顔が気になるのでしょうか?

関口 雅則 医師

顔は、感情や体調の変化が表に出やすい部分です。他人と接するときに最初に見られる場所でもあり、変化に敏感になるのは自然なことといえます。ただし顔の印象だけで、脳内のドーパミン量を推し量ることはできません。表情の乏しさやテカリといった変化は、本人より周囲が先に気づく場合も少なくありません。気になる変化が続くときは、自己判断せず脳神経内科に相談してください。

まとめ顔つきの変化が続くときは早めに相談を

ドーパミンは、運動や意欲、学習を支える神経伝達物質です。病的に不足すると、表情の乏しさやまばたきの減少、顔の脂っぽさが現れます。逆に薬の影響で伝わり方が乱れると、口や舌の不随意運動が出る場合もあります。いずれも健康な人の日常的な気分の変化とは、まったく別の話です。顔つきの変化が続くときや、服薬中に気になる動きが出たときは、早めに主治医へ相談してください。

「ドーパミン」と関連する病気

「ドーパミン」と関連する病気は9個ほどあります。
病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳神経の病気

パーキンソン病

進行性核上性麻痺

大脳皮質基底核変性症

多系統萎縮症

レビー小体型認知症

むずむず脚症候群

精神の病気

統合失調症

注意欠如、多動症(ADHD)

依存症

顔つきや表情の変化が続くときは、脳神経内科や精神科への相談をおすすめします。

「ドーパミン」と関連する症状

「ドーパミン」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

表情が乏しくなる

まばたきが減る

顔が脂っぽくなる

よだれが出やすい

まぶたが開けにくい

口や舌が勝手に動く

動作が遅くなる

手足がふるえる

瞳孔が大きくなる

複数の症状が重なる場合は、早めに脳神経内科を受診してください。

参考文献

難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」

脳科学辞典「ドーパミン」(日本神経科学学会)

厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアルジスキネジア」

独立行政法人国立病院機構宇多野病院「パーキンソン病に伴う症状(運動症状について)」

ビバンセカプセル電子添文(武田薬品工業、2026年6月改訂)

Salimpoor VN, et al. Nat Neurosci. 2011;14(2):257-262.

Jongkees BJ, Colzato LS. Neurosci Biobehav Rev. 2016;71:58-82.