漫画『はたらく細胞』作者が「うつ病」発症歴を公表。どんな原因で起こる? 医師が原因・症状を解説

腸内環境とは?メディカルドック監修医が腸内環境を整える食べ物や飲み物・サプリ・検査法などを解説します。

監修医師:
菊地 修司(医師)

<略歴>
山梨大学(旧・山梨医科大学)医学部医学科卒業後、茨城保健生活協同組合城南病院に研修医として入職。東葛病院外科、北海道勤医協中央病院麻酔科で研修後、城南病院に戻り、医局長、副院長を経て、2021年より同院院長。2024年より茨城保健生活協同組合理事長を兼任。専門は総合診療・訪問診療。2009年に消化器外科から総合診療科に転科し現在に至る。日本医師会認定産業医。

腸内環境とは?

腸内環境とは、腸の中にすむ細菌のバランスや腸の働きを含めた状態を指します。人の腸には約1,000種類、100兆個もの細菌がすんでいます。これらは菌の種類ごとに集まって腸の壁に広がっています。その様子がお花畑に似ているため、腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれます。

腸内細菌は働きによって3つに分けられます。体に有益に働く善玉菌、増えすぎると害になる悪玉菌、強いほうに味方する日和見菌です。善玉菌が優勢で、菌の種類が豊かな状態が良い腸内環境です。

腸内環境の良し悪しはどのように判断すればいいの?

高価な検査を受けなくても、毎日の排便から腸内環境はかなり読み取れます。私が外来で必ず確認する3つのポイントをお伝えします。

便の形状と色で見分ける

便の硬さは世界共通の「ブリストル便形状スケール」で7段階に分けられます。理想は表面がなめらかなバナナ状の便です。コロコロした便や泥状・水様の便が続くときは、腸内環境が乱れているサインです。色の目安は黄褐色から茶褐色です。黒い便や血が混じる便は出血の可能性があり、早めの受診をお勧めします。

排便の回数とリズム

排便は毎日なくても構いません。ただし自発的な排便が週3回未満の場合、慢性便秘症の診断基準のひとつに当てはまります。強くいきむ必要がある、残便感が残るといった排便のしにくさも判断材料です。回数だけでなく「快適に出しきれているか」で見ていきましょう。

便やおならのにおい・お腹の張り

悪玉菌が優勢になると、たんぱく質が腸内で腐敗してアンモニアなどが発生します。便やおならのにおいが以前よりきつくなったときは、腸内バランスが崩れているサインです。お腹の張りやゴロゴロ感が続く場合も見直しの目安になります。

腸内環境を整える食べ物

食べ物で腸内環境を整えるコツは「菌そのものを入れる」と「菌のエサを届ける」の2本立てです。

発酵食品

ヨーグルト、納豆、味噌、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品には生きた善玉菌が含まれます。外から取り入れた菌の多くは腸にすみ着きません。だからこそ毎日続けて摂ることに意味があります。私は朝食と夕食に1品ずつ分ける形をお勧めしています。塩分の多い漬物に偏らないようご注意ください。

水溶性食物繊維

海藻、大麦、オートミール、里芋、オクラには水溶性食物繊維が多く含まれます。これらは腸内細菌に分解され、酢酸・酪酸・プロピオン酸などの短鎖脂肪酸に変わります。短鎖脂肪酸は腸の粘膜のエネルギー源になり、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の増殖を抑えます。白米を大麦入りのご飯に替えるだけでも摂取量は増えます。

不溶性食物繊維

ごぼう、きのこ、豆類、玄米などに多いのが不溶性食物繊維です。水分を含んで膨らみ、便のかさを増やして腸を刺激します。食事摂取基準2025年版の目標量は、男性30~64歳で1日22g以上、女性18~74歳で18g以上です。日本人の平均はこれを大きく下回ります。

オリゴ糖

玉ねぎ、大豆、バナナ、はちみつにはオリゴ糖が含まれます。オリゴ糖は胃や小腸で消化されず大腸まで届き、ビフィズス菌のエサになります。こうした善玉菌のエサをプレバイオティクスと呼びます。発酵食品と組み合わせる方法はシンバイオティクスと呼ばれ、効率よく腸内環境を整えられます。

悪玉菌を増やしにくい食べ方を選ぶ

腸内環境を整えるには、減らす工夫も欠かせません。脂質や動物性たんぱく質に偏った食事は悪玉菌のエサになります。肉を食べるなら野菜や海藻を添えることをお勧めします。極端な糖質制限は食物繊維不足を招くので、出来るだけ避けましょう。

腸内環境を整える飲み物

飲み物は毎日続けやすく、腸内環境を整える習慣づくりに向いています。私がお勧めする5つを挙げます。

水・白湯

水分が不足すると便が硬くなり、排出しづらくなります。飲み水の目安は1日1.5リットル程度です。特に起床直後のコップ1杯は、胃から大腸への反射を促し朝の排便を助けます。冷たい水でお腹が緩む方には白湯をお勧めします。

乳酸菌飲料・飲むヨーグルト

液体は固形の発酵食品より手軽で、続けやすい飲み物です。乳酸菌やビフィズス菌を毎日一定量摂れる点が利点になります。ただし糖分が多い製品も少なくありません。栄養成分表示で糖質量を確かめ、無糖や低糖のタイプを選ぶようにすると良いと思います。

甘酒

米麹の甘酒にはオリゴ糖と食物繊維が含まれ、善玉菌のエサになります。麹菌を含む甘酒を摂ると糞便中のビフィズス菌が増え、排便状況が改善したという研究があります。糖質が多いため1日100g程度にとどめましょう。

ココア

ピュアココアにはカカオ由来の不溶性食物繊維であるリグニンが含まれます。便のかさを増やし、腸の動きを促します。カカオポリフェノールが腸内細菌のバランスに働くことも分かってきました。砂糖入りのミルクココアより、無糖のピュアココアを牛乳や豆乳で溶く飲み方をお勧めします。

緑茶・コーヒー

緑茶のカテキンやコーヒーのクロロゲン酸はポリフェノールの一種で、腸内細菌の構成に影響します。コーヒーには大腸の動きを促す作用もあり、朝の1杯が排便のきっかけになる方もいます。ただし両者ともカフェインを含み、夜の摂取は腸のリズムを乱すため控えめが無難です。

食事以外で腸内環境を整える方法

腸内環境は食事だけで決まりません。生活習慣を整える方法も同じくらい重要です。

有酸素運動を習慣にする

適度な運動は腸内細菌の種類を豊かにし、短鎖脂肪酸を作る菌を増やす方向に働きます。激しい運動は必要ありません。1日20~30分のウォーキングで十分です。

睡眠リズムを整える

腸のぜん動運動は自律神経が調節しています。睡眠不足や夜勤でリズムが崩れると副交感神経の働きが落ち、腸の動きが鈍ります。就寝・起床の時刻をそろえ、朝に光を浴びる習慣が腸のリズムを立て直します。寝る直前の食事は腸を休ませる時間を奪うため、就寝2~3時間前までをお勧めします。

ストレスと上手に付き合う(脳腸相関)

脳と腸は自律神経を介して互いに信号を送り合っています。この関係を脳腸相関といいます。強いストレスが続くと腸内細菌のバランスも乱れ、過敏性腸症候群の背景になります。深呼吸、入浴、趣味の時間など、ご自身に合う切り替え方を持っておきましょう。

排便習慣をつくる

便意を我慢し続けると直腸が刺激に慣れ、便意そのものを感じにくくなります。朝食後は大腸が動きやすい時間帯です。この時間にトイレに座る習慣をつけると、排便リズムが安定します。前かがみでかかとを上げる姿勢は直腸の角度が広がり、いきまなくても出しやすくなります。

抗菌薬の適正使用と禁煙・節酒

抗菌薬は病原菌だけでなく腸内の善玉菌も減らします。かぜの多くはウイルスが原因で、抗菌薬は効きません。自己判断で以前の残薬を飲む使い方はお勧めできません。喫煙と過度の飲酒も腸の粘膜を傷めます。

腸内環境を整えるサプリはどんな成分が含まれるサプリが良いの?

サプリは食事の代わりにはなりません。それでも不足を補う手段としては有用です。成分表示のどこを見るかをお伝えします。

乳酸菌・ビフィズス菌

生きた善玉菌そのものを補う成分で、プロバイオティクスと呼ばれます。ビフィズス菌は主に大腸、乳酸菌は主に小腸で働きます。どの菌株が何億個入っているかを表示した製品が選びやすいです。菌株ごとに働きは異なるため、2~4週間試して排便の変化を見る進め方が現実的です。

酪酸菌

酪酸菌は短鎖脂肪酸のひとつである酪酸を作る菌です。酪酸は大腸の粘膜細胞のエネルギー源になり、腸のバリア機能を保ちます。芽胞という殻をつくるため胃酸に強く、生きたまま大腸へ届きやすい点が特徴です。

オリゴ糖

ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖などが代表です。もともと腸にいる自身の善玉菌を増やす成分で、プレバイオティクスに分類されます。粉末やシロップで販売され、飲み物やヨーグルトに混ぜて使えます。摂りすぎるとお腹が張るため、少量から始めましょう。

イヌリン・難消化性デキストリン

いずれも水溶性食物繊維で、野菜不足を補う目的で使われます。イヌリンは菊芋やごぼう、難消化性デキストリンはとうもろこし由来です。腸内細菌の発酵を受けて短鎖脂肪酸に変わります。

シンバイオティクス

シンバイオティクスとは、菌(プロバイオティクス)と菌のエサ(プレバイオティクス)を組み合わせたもののことです。両方が入った製品なら、補った菌が腸内で働きやすくなります。持病がある方や薬を飲んでいる方は、開始前に主治医へご相談ください。

腸内環境の検査方法

腸内環境を客観的に調べる検査は3種類あります。それぞれ目的が違う点にご注意ください。

便検査(便潜血検査・便培養検査)

便潜血検査は便に混じったごくわずかな血液を調べる検査です。大腸がん検診として40歳以上に年1回の受診が推奨されています。腸内環境そのものを測る検査ではありません。それでも大腸の病気を除外する第一歩になります。下痢が続く場合は便培養検査で原因菌を調べます。

腸内フローラ検査

便を少量採取し、腸内細菌のDNAを解析する検査です。菌の種類や割合、多様性を数値やグラフで確認できます。医療機関や検査キットで受けられますが、多くは自費診療です。病気を診断する検査ではなく、生活習慣を見直すための参考情報という位置づけになります。

大腸内視鏡検査

内視鏡で大腸の粘膜を直接観察する検査です。炎症、潰瘍、ポリープ、がんなどの有無を確かめられます。便潜血検査が陽性だった場合の精密検査として実施されます。腹痛や下血、体重減少を伴う場合も対象になります。

「腸内環境」についてよくある質問

ここまで腸内環境について紹介しました。ここでは「腸内環境」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

腸内環境が悪くなるとどんな症状が現れますか?

菊地 修司

最初は、便秘、下痢、腹部の張り、おならの増加やにおいの変化など、お腹の症状が起こります。私の外来では「便が硬くて出しづらい」「便が細くなった」という訴えをよく聞きます。次に腸の外の症状です。肌荒れ、口臭、疲れやすい、風邪をひきやすいといった変化が現れます。腸は体内最大の免疫器官であり、菌のバランスの乱れは全身に影響します。
ただし、これらは他の病気でも起こる症状です。2週間以上続く場合や体重減少・血便を伴う場合は、決して自己判断せず近くの消化器内科をご受診ください。

腸内環境が良い人の特徴を教えてください。

菊地 修司

私が診てきた方々に共通するのは、食事の多様性です。同じものばかり食べず、野菜・海藻・発酵食品・豆類を日替わりで摂っています。腸内細菌の豊かさは食材の幅と比例します。次に排便が安定している点です。毎日でなくても、バナナ状の便を気持ちよく出せています。さらに睡眠と運動のリズムが整っている方が多いです。
反対に、外食中心で野菜が少なく、夜更かしが続く方は腸内環境が乱れがちです。特別なサプリより、まず食事の幅と生活リズムを見直す方法をお勧めします。

まとめ毎日の便を見ることが、腸内環境を整える第一歩

腸内環境を整える出発点は、毎日の便を見ることです。形、色、におい、回数。この4つを意識するだけで、ご自身の腸の状態はかなり見えてきます。

食事では、発酵食品で菌を入れ、食物繊維とオリゴ糖でその菌を育てる。この2本立てが基本です。飲み物なら水・乳酸菌飲料・甘酒・ココア・緑茶が続けやすい選択肢になります。運動・睡眠・ストレス対策・排便習慣といった食事以外の方法も、同じくらい重要です。サプリは、あくまで不足を補う脇役です。

腸内環境は数日では変わりません。2~4週間続けて、便の変化で判断していきましょう。それでも便秘や下痢が改善しない場合、血便や体重減少がある場合は、別の病気が隠れている可能性があります。40歳を過ぎたら年1回の大腸がん検診も忘れずに受けてください。

「腸内環境」と関連する病気

「腸内環境」と関連する病気は14個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

過敏性腸症候群(IBS)

慢性便秘症

潰瘍性大腸炎クローン病大腸ポリープ大腸がん感染性腸炎

偽膜性腸炎(抗菌薬関連下痢症)


代謝・内分泌系の病気

2型糖尿病

肥満症

脂質異常症

アレルギー・免疫系の病気

アトピー性皮膚炎食物アレルギー

精神・神経系の病気

うつ病

腸内環境の乱れは消化器の病気だけでなく、代謝・免疫・精神の領域にも関わります。特に血便や体重減少を伴う場合は、大腸がんや炎症性腸疾患の可能性を考えて早めの受診をお勧めします。

「腸内環境」と関連する症状

「腸内環境」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

便秘が続く

下痢を繰り返す

便が硬い・便が細い

お腹が張る(腹部膨満感)

おならが多い・においが強い

残便感がある

肌荒れ・ニキビ

口臭が気になる

疲れやすい・だるい

気分が落ち込む

これらの症状が2週間以上続く場合は、腸内環境の乱れだけでなく別の病気が隠れていることがあります。市販の整腸剤やサプリで様子を見る前に、消化器内科でご相談ください。

参考文献

腸内細菌と健康|e-ヘルスネット(厚生労働省)

腸内細菌叢(腸内フローラ)とは|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)

食物繊維の働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)

水は1日どれくらい飲めば良いか|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)

便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症|日本消化管学会(Mindsガイドラインライブラリ)

大腸がん検診について|国立がん研究センターがん情報サービス

科学的根拠に基づくわが国の大腸がん検診を提言「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」2024年度版公開|国立がん研究センター

抗微生物薬適正使用の手引き第四版|厚生労働省

運動と腸内細菌叢|腸内細菌学雑誌34巻1号(森田英利)

麹菌を含む甘酒および生塩こうじの摂取がヒトの糞便中の細菌数と排便状況に及ぼす影響|健康医学28巻1号(若菜真実ほか)