韓国で「孫育児手当」が拡大、月30万ウォンで祖父母が“保育士”に…少子化の切り札になるか
韓国で「孫育児手当」と呼ばれる手当が各地に広がっている。祖父母らが孫の育児を担った場合に自治体がそれに見合った現金を支給するものだ。
共働き世帯などを対象に、祖父母や親族が一定時間以上子どもの世話をすると、月20万~30万ウォン(約3万円)程度が支給される。
ソウル市は、満24~36カ月の子どもを対象に、月40時間以上の育児を行った場合、月30万ウォンを最大13カ月支給する。昨年は約5500人が支給を受けた。
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今年から始まった南部、済州島の「孫育児手当」はさらに手厚い。
24~47カ月の孫を祖父母が月40時間以上世話した場合、子どもの人数に応じて1人なら月30万ウォン、2人なら45万ウォン、3人なら60万ウォンを支給する。所得制限があるほか、受給には事前の子育て教育を受けることが条件となる。
首都圏の京畿道、南東部の慶尚南道などでも類似の制度が導入されており、祖父母らによる育児を公的に支援する動きは各地に広がり、日本でも関心を持っている自治体がある。
親の帰宅までの「スキマ育児」
制度の狙いは、共働き世帯の子育てを支援することだ。
たとえ子どもを保育所や幼稚園に預けていたとしても、親が仕事を終えて帰宅するまでには数時間の育児空白が生まれる。祖父母らに面倒を見てもらい、その負担や労働に公的な補助を出す。
もちろん日本にも、子育て世帯を対象とした児童手当などの制度はある。しかし、誰が何時間子どもの世話をしたかを基準に現金を給付するという発想とは全く違う。
「祖父母が孫の面倒を見るのは自然なことであり、なにも手当を出さなくても」と感じるかもしれない。韓国の利用者は、意外にもこの制度を高く評価している。
ソウル市が実施した調査では、2025年の利用者満足度が99.2%に達した。祖父母による育児を単なる「家族の無償労働」とせず、社会的な価値を認めて経済的に補償する仕組みが支持されていることがうかがえる。
対象家庭への抜き打ち訪問やビデオ通話で確認も
一方、制度には副作用もある。
済州島・西帰浦市の調査では、孫育児の担い手の約90%が女性で、60代が約7割を占めた。つまり、実際に制度を支えているのは主として60代の祖母たちだ。
高齢化が進む中、60代の女性が仕事を持っているケースも少なくない。そこに孫の育児まで加われば、身体的、時間的な負担は決して軽くない。
もう一つの問題が、実際の育児時間を、どう確認するかだ。
ソウル市では、ケアの開始時と終了時に親のスマートフォンにQRコードを表示し、祖父母が自分の携帯で読み取って活動時間を記録する仕組みを採用しているが、家庭の中のことだけに把握は難しい。
このため各自治体では、対象家庭を抜き打ち訪問したり、携帯を通じてビデオ通話を求めたり、育児の確認を行うなど工夫をしている。
「安価な保育労働力」の落とし穴
韓国の少子化は依然として深刻だ。
合計特殊出生率は2023年に0.72まで落ち込んだ。2024年は0.75、2025年は0.80と2年連続でやや持ち直している。それでも、日本の2025年の合計特殊出生率1.14を大きく下回る。
出生率が上向いた背景には婚姻件数の増加など複数の要因があり、孫育児手当だけの効果と見ることはできない。
もちろん、子育てに家族の力を借りること自体は悪いことではない。
ただ、祖父母という「安価な保育労働力」に頼りすぎれば、親が働きながら子どもを育てられる社会をつくることが、かえって遠のく可能性もあるだろう。
韓国での孫育児手当の普及は、「幼い子どもは誰が育てるべきか」という根本的な問題も問いかけている。
文/五味洋治 内外タイムス

