新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が吟味(前編) デザインはアルヴェルに比べて小賢くまとまりすぎ? 3列目の快適性という意外な発見
型式名称E53のラインナップは2グレード構成
いよいよ発売を開始した新型『日産エルグランド』。型式名称E53となるそのラインナップは基本2グレード構成で、パワー&ドライブトレイン、サスペンションやタイヤなどを含むメカニズム面はまったく一緒、つまり走りにまつわる差はなく、価格差は純粋に装備や設えを示すものとなる。
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折しもライバルであるトヨタ・アルファード&ヴェルファイア(以下アルヴェル)は、エルグランドを迎え撃つようなタイミングで廉価グレードを投入、ボトム側の誘引力を強化しているわけで、こちらは例えば1モーターFFなどメカニズムの簡略化で価格競争力を強化するなどの策は考えなかったのだろうか。

いよいよ発売を開始した新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が取材。 山本佳吾
……と尋ねてみると、四駆じゃなくてもいいから安いに越したことはないという声も一部の販売現場からは確かにあがっているそうだ。が、エルグランドはeパワー+eフォースならではの緻密な駆動制御と、可変ダンパーの個別ソレノイド制御とのフュージョンで乗り味を作り込んでいることもあり、少なくとも現時点ではこの3要素が欠けるような仕様は考えていないという。
気にかかっていたエクステリアデザイン
同様に、個人的に気にかかっていたのがエクステリアデザインだ。アルヴェルのモデリスタ巻きに代表されるオラオラぶりがこの手の市場のすう勢とあらば、こちらはちょっと小賢くまとまりすぎてるんじゃないか。
そもそもそういうわかりやすい施しこそ日産の十八番だったではないか……と心配でさえあったのだが、蓋を開けてみればお客さんの反応は良好で、他とは違う表現をきちんと評価してくれているそうだ。

エクステリアデザインに関して、他とは違う表現をがきちんと評価されているようだ。 山本佳吾
また、メーカーオプションやオーテック・ブランドによる援護射撃も整っていて、顔周りをよりギラつかせる、あるいは引き締めるような選択肢も用意されている。
欲しかったフラッグシップとしてのこだわり
取材車は上位グレードとなるGで、内装はふたつのカラーが用意される。いずれも黒に近い濃さの濃紫を軸にするものだが、白系とのコンビで雪景色の静けさを表現したという『銀雪(ギンセツ)』と名付けられた色味だった(編集部注:撮影車は『紫檀(シタン)』となります)。
日産はアリアあたりから切子や組木など日本の伝統工芸的なモチーフを反映した演出に力を入れているが、エルグランドも刺子を思わせる菱形のステッチがシートやドアトリムに配される。

取材車は上位グレードとなるGで、撮影車の内装はふたつ用意されるうちの『紫檀(シタン)』。 山本佳吾
標準グレードのXにはこれらの演出はなく、表皮やトリムは黒の標準的な合成皮革を採用。Gの表皮にはテーラーフィットと名付けられた自然な風合いの人工レザーとなるが、確かにしっとりとした肌触りはセミアニリン鞣しを思わせてくれた。このGをベースに更なる架装を施したNMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)扱いのグレード、VIPにはナッパレザーを用いた本革のトリムが用意される。
後席回りの設えについては、一見ではやはりアルヴェルの側がご立派感がわかりやすい。それは多分に大型アームレストが固定された独立シートの絵面的な面が大きいわけだが、センターテーブルやスイッチ類、室内灯などのディテールにも、エルグランドにはフラッグシップとしてのこだわりが欲しかったようには思う。その点、アルヴェルはやっぱり隙がない。
意外な発見となった3列目の快適性
でも、エルグランドのシート形状については今回の試乗で新たな気づきもあった。
日産の十八番である背もたれの中折れ機能があるおかげで、リラックス姿勢でも肩部から上を立て気味にすることで前方の景色や画面が確認しやすくなる。そしてリクライニング時は可動式のアームレストを背もたれのツラに合わせておけば腕まわりに窮屈さを感じることはない。さらには乗り降りの際にも前方に体をずらす必要がなくスムーズだ。

今回の試乗で意外な発見となったのが3列目の快適性だった。 山本佳吾
そして今回の試乗で意外な発見となったのが3列目の快適性だ。シート自体の形状やフォームなどにも気配りされており、着座姿勢やレッグスペースも窮屈さはなく、シアターレイアウトのおかげで前方見通しもいい。
後輪のすぐそばという、何かと割りを食う場所をして上下動や突き上げによよる体の揺すりが抑えられているあたりは、ピッチングをしっかりコントロールするというクルマそのものの味付けの基本が、車体の後端にまで巧く作用しているのだろう。
乗せられる側の話を続ければ、賓席たる2列目の掛け心地はさすがに文句はない。プラットフォームはCMF-C/Dをベースとしているが、ミニバンの体躯向けに大改造を施したこともあってか、床面や箱の共振抜けもすっきりしている。
長く採られたシートスライドを最後端にすれば、足を伸ばしたリクライニング状態で寛ぐこともできるが、その場合は入力を受け止めるBピラーが顔の真横にくる。音振環境的には適度なスライド&リクライニング量で座るのが最も快適だった。
*新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が吟味(後編)に続きます。

